8話
パラッパラッ
本をめくる音以外に雑音がない室内で俺は魔法に関する本を読む。
「ラク様、そろそろお休みになられたほうがよろしいかと」
「・・・ああ」
ルナリアに休むように言われた俺は読んでいた本を閉じた。そして、ベットに寝転がった。
「・・・絶対に使う」
俺は目を閉じつつ執念ともよべる言葉を小さく呟いた。
――――――
「アカハ様の適正はなしです」
先生の言葉を聞いた俺は絶望に似た感情が沸き上がった。
むこうでこういうファンタジー系のアニメや漫画、ラノベを見たときから一度は使ってみたいと思っていた魔法を使えないと言われたのだ。
「・・・・・・まじ?」
「・・・・・・はい」
俺の確認の言葉をかなり言いにくそうに先生が肯定した。
「・・・そっか」
俺は顔を伏せた。
「・・・そ、そうだ!これから自習にします。なので、思い思いのことをしてください!」
重苦しい空気が漂う中、先生がそういった。多分、俺に立ち直るための時間をくれたんだと思う。そのことに先生に感謝するが俺は次のことを考えていた。
「・・・先生、図書室みたいなとこある?」
「と、図書館ですか?ありますよ」
「さんきゅ。ルナリア、図書室に案内してくれ」
伏せた顔を上げルナリアに案内するように言う。
その顔には先ほどまでの暗い表情ではなく何かを決意した表情をしていた。
「分かりました。こちらです」
図書室に向かうために俺はルナリアの後を追う。
――――――
「・・・大丈夫でしょうか」
楽が出て行った扉を見ながらリリシアが楽を心配するように言った。
「分かりません。ですが、彼の顔は何かを決意した顔をしていました。彼が図書室で何について調べるのかは明白でしょうが・・・」
ウェンディは適正なしの判定が出たときの楽の顔から楽が図書館で何をしようとしているのか分かった。
「適正なしという判定が出た者が魔法を使ったケースは今まで見たことも聞いたこともありません」
ウェンディはその立場から様々な魔法士を見てきた。そして、適正なしという判定が出た者も。その者は魔法士になることを諦め他の職を目指した。なぜなら、適正なしというのは使える魔法がないということなのだから。
「・・・今考えても仕方ありません。さて、皆さんはどうしますか?」
「私は魔法についてもっと教えてほしい」
「私は騎士の訓練を見てみたい」
「お、俺は魔法について・・・」
「それではサイオンジ様とサトウ様はこのままここで私が教えましょう。クジョウ様は訓練場に行ってみてください。リリシア様はどうします?」
この後の予定を聞いたウェンディはリリシアにも聞く。
「そうですね、一度お父様に報告をしようかと」
「なるほど、ではそのように」
そして、それぞれ自分のやりたいことをするために行動を始めた。
――――――
「ここが図書室か」
ルナリアに案内された部屋はかなり広く無数の本が収められていた。
「じゃあ、魔法に関する本がある棚はどこだ?」
「それはこちらになります」
そこには様々な本が置かれていた。『初めての魔法』『魔法図鑑』『魔力の変換率』『特殊属性に関する研究』などたくさん置いてあった。
「よし」
俺はまず読みやすそうな本を数冊取りその場に座った。
「あの、どうするおつもりですか?」
ルナリアが俺が何をしようとしているのかを聞いてきた。
「まず、魔法に関する本を全部読む。そして、適正がなくても魔法を使うにはどうすればいいのかを考える」
「それは無理です。いままで数多の研究者たちが適正なしでも魔法を使うためにどうすればよいかを研究してきましたが結果は無理という結論に達しています」
「それでも、今の俺にはこれしか方法が思いつかない」
絶対に無理だというルナリアの言葉は何となく理解できる。
だが、俺はどうしても使ってみたい。男なら誰しも思ったことあるだろう魔法を使ってみたいと、俺も思った。そして、魔法を使ってやってみたいことまで考えていた。でも、むこうには魔法なんてものはフィクションであった。
でも、この世界にはある。なのに、魔法が使えないなん認めない。使えないなら使えるようにする。
俺が楽しみにしていたものができないなんてことはさせない。何が何でもやってやる。今までそうしてきたように。
「わかりました。ラク様が満足するまでなさってください」
「ありがと」
「では、お茶をご用意してまいります」
ルナリアは一礼すると図書室を出てていった。
俺は手に取った『初めての魔法』という本を開き読んでいった。