3話
「それで、私たちを呼んだ理由は?」
西園寺が尋ねる。
部屋に案内され少しして西園寺と九条が訪ねてきた。
ちなみに部屋は結構広く大きめのベットとフカフカのいす、机などが置かれている部屋を一人ひと部屋ずつ用意された。
「ああ、これからどうするか話し合おうと思ってな」
二人を座らせると二人を呼んだ理由を話した。
「確かに私たちは勇者召喚とやらに巻き込まれた者同士なわけだから身の振り方を考えなければな」
九条も納得したようだ。九条は先ほどの謁見の間での出来事から警戒を解いていた。国王やその周りの態度から信用できると感じたのだろう。俺もそう思った。
「この国は俺たちに対して悪いようにはしないだろうからある程度の我儘は許されると思う」
「私は魔法の研究をしてみたいって言った」
西園寺は先ほど国王に言った通り魔法の研究がしたいようだ。
「まあ、それは国王からの返事待ちだな」
「ん」
魔法の研究ができるかどうかは国王がそれに関わる人達と話し合って決めなければならないだろうから少し時間がかかるだろう。
西園寺もそれが分かっているようで小さく頷く。
「九条は?」
「私は・・・強い者と戦ってみたい」
九条はどこか遠くを見つめるように言った。その言葉にはどこか期待が込められていた。
「私は自分と同等か強い人と剣を交えたい。あっちの世界では私より強いと感じる者に出会えなかったから・・・その、物足りなかったのだ」
「ああ、だからあんなつまらなそうな顔をしてたのか」
「・・・見てたのか?」
「ああ、お前が出場した全国大会を見に行った時にな」
九条が驚いた表情をした。実は九条の噂を聞いたときどんな感じなのか興味がわいたので丁度全国大会に出場していた九条を見に行ったのだ。確かに、噂されるだけの腕前だった。他の追従を許さない剣技、積み重ねられた鍛錬による淀みのないその剣筋は凄まじかった。だから、俺は九条に興味を持ったのだが試合が終わった後面を外した九条の顔はとても残念そうでそしてつまらなそうであった。
多分九条は自分の全力を出して渡り合う相手を期待していたのだろう自分の積み重ねた剣技をいかんなく発揮し自分の全身全霊を持って対戦しようと思ったが、実力が違いすぎ全力を出すまでもなく試合が終わったしまったことへの残念さとつまらなさが顔に出ていたのだろう。
「まあ、それは大丈夫じゃないか」
「・・・それは、どういう意味だ?」
九条は俺の言葉に不思議そうな顔をする。
「だって、この世界は命を懸けて剣を振るう人たちがたくさんいるんだぞ。そんな人たちと俺たちのいた命もかけない剣を同列に扱うなよ」
俺のその言葉に九条は何かに気づいたようだ。
俺たちのいた世界の剣は言っちゃ悪いが軽い。剣士としての誇りをかけた試合があり、誇りをかけた剣は重いだろうがこの世界の人の剣はさらに重い。誇りをかけ守るものがありそして、命を懸けている。負けたらすべてが終わりなのだ、誇りも守りたかったものも失い人生も終わる。そんな人たちの剣が軽いはずないのだ。
「そうだな」
九条は俺の言いたいことを理解したのか小さく笑った。その顔は長い間待ちに待ったものがようやく手に入るそんな表情をしていた。
「それに、強いやつと戦いたいなら俺がお前の相手をしてやるよ」
「・・・お前に私の相手ができるのか」
「もちろん」
九条は疑いの目を向けてきたが俺は自信満々に答える。
「・・・そうか、ならいつか相手してもらおう」
「おう」
九条はまだ若干信じていないようだ。
「それで、あなたは何をしたいの?」
俺と九条の話が一区切りついたタイミングで西園寺が俺のしたいことを聞いてきた。
「そりゃあ、もちろん俺が楽しいと思ったことをする」
「どういうこと?」
「西園寺みたいに魔法の研究をしてもいいし九条みたいに強いやつと戦うのも面白そうだ。他にもこの世界を旅してみるのも面白そうだし、冒険者なんてものがあったらそれをやってみるのも面白そうだ。つまり、いろいろ面白そうなことをやりたい」
「・・・そんなにいろいろできるの?」
西園寺が俺にそんな素朴な疑問を向けてきた。
「できる、できないなんて許さない」
西園寺の目をまっすぐ見ながら俺は言った。そこに迷いなんてものはない。俺がやりたいと思ったことにできないなんてことは俺が許さない。
「・・・そう」
俺の返答を聞き西園寺がどう思ったのかはわからないが一応納得したようだ。
コンコン
「皆様お食事の用意ができました。案内いたしますのでついてきてください」
「じゃ、簡単にまとめるとこの国の法律に引っかからない程度にみんな好きなようにするって感じでいいか?」
「ええ、問題ないわ」
「ああ、了解した」
メイドさんが呼びに来たのでこれからどうするかを簡単にまとめ二人に告げると二人とも了承した。
「よし、じゃあ飯食べに行きますか」
「ええ」
「そうだな」
そして、メイドさんに後をついて行った。