15話
「じゃあ、九条ハンデをやるよ」
九条と模擬戦をすることになったが俺と九条とでは実力に差があるため九条にハンデをあげることにした。
俺は足元に手を向けると風の魔法を放った。その魔法により地面に傷をつけた。傷は直径一メートルほどの円を描いている。
「この円から俺が一歩でもでた場合俺の負けだ」
「・・・わかった」
九条は先ほどの団長さんとの模擬戦を見ていたので自分との実力差を理解したのだろう。なのでハンデをもらうことに了承した。
「じゃあ、いつでもいいぞ」
俺がそういうと九条は模擬剣を中段に構える。
「・・・構えないのか?」
俺が何の構えもとっていないことに疑問に感じたのか聞いててきた。
「ああ、特に構えはないんだ」
神無流体術は自然体こそ構えなのだ。
「そうか。だったら遠慮なくいくぞ!」
九条は勢いよく詰め寄ってくると模擬剣を俺に振り下ろす。だが、
「ッ!?」
「よっと」
模擬剣は俺に当たることなく空振りしたところを俺が背中を軽く押したため勢いのついた九条はこけてしまった。
「今剣が・・・」
派手にこけたわけではないので怪我はないが九条は不思議そうな顔をしている。
「ほら、どんどんこい」
「あ、ああ」
立ち上がった九条は再び俺に切りかかってきた。が、先ほどと同じように俺に模擬剣が当たることはない。
さすがに何度もこかすのはどうかと思うので背中を押すことはしないが九条はやはり不思議そうな顔をしている。
「・・・なんで剣がすり抜けるんだ?」
先ほどから九条が不思議そうにする理由は俺に剣が当たることなくすり抜けるからだ。
すり抜けると言っても魔法などは使用していない。
これは体術だ。
実は剣が当たる直前、自然な動作で素早く最小限の動きで避けているのだ。これによって剣がすり抜けているように見えるのだ。
この技には自然な動作ということが何より重要で、自然なということは人が違和感を抱かないということそして素早く最小限の動きで避けることにより一瞬のうちに剣を避けることができる。
なので、人の目が剣をすり抜けたと錯覚してしまうのである。
「すごい、すごいすごいすごい!!」
九条は目を輝かせつつさらに剣を振ってくる。
「ほい、ほいほい、ほいっと」
俺はそれを避けたり剣の腹に手を添え軌道をずらしたりなど様々な体術で対処する。