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13話

「では、訓練を始める」


騎士団長がそう言うと騎士たちは整列をした。その中に九条もいる。


「まずは走るぞ」


そして騎士団長を先頭に訓練場を走り始めた。


その後、素振りなどの基礎練習をした騎士たちは少し疲れを見せるだけであまり辛そうではない。毎日の積み重ねにより体力がついているのだろう。一方の九条は騎士たちより疲れを見せている。


まあ、剣道をしていたとはいえこの世界の騎士たちは命がかかっているので訓練量が違うだろう。


基礎練習が終わると騎士たちは二人一組になり稽古を始めた。


九条は騎士団長と稽古している。基本は九条が打ち込み騎士団長がそれを受ける。そして、たまに九条に指摘をしつつ騎士団長も打ち込む。


そんな訓練が始まった時から俺はずっと騎士団長を見ていた。


あ、なんかこの言い方は語弊があるな。俺は別に騎士団長に気があるとかではない。俺はノーマルだ。


で、俺が騎士団長を見ていたのは騎士団長の動きを見ていたのだ。


俺も体術を習っていたが実際に使ったことはあまりない。それは、日本という平和な場所にいたためだ。そんな俺が簡単に死んでしまう、命の軽い世界に連れてこられたのだ。


なので、こういってはなんだが命を奪うことを多くしてきたであろう騎士団長の動き方を見ればいい勉強になるのではと思ったのだ。


結果、いい勉強になった。剣の振り方、力の入れ方、体の動かし方などかなり勉強になった。


「よし、では訓練を終わりにする。みな仕事頑張るように」


「「「「お疲れさまでした!」」」」


九条も声を出しているがやはり騎士たちより疲れているのだろうかなり汗をかいていた。


訓練が終わったのと同時に俺は立ち上がった。そして、騎士団長の前に行く。


「ちょっといいか?」


「なんだ?」


「俺と模擬戦をしてくれないか」


俺の言葉を聞いた騎士団長は呆れたような顔をした。


「・・・貴殿と模擬戦をしても一瞬で決着がつくだろ・・・ッ!?」


騎士団長が俺との模擬戦を断ろうとしたので俺は騎士団長に向かって殺気を飛ばした。すると、騎士団長は驚いた顔をすると同時に腰に下げていた剣に手が伸びていた。


騎士団長は九条と訓練をしていたので俺と九条を同じくらいかそれ以下と思っていたようだが俺は向こうで体術を習っていた。その体術はかなり実践的で人を殺せるほどの技まである。そして、修練も実践的でかなりきつかった。


なので、殺気を飛ばすことなど造作もない。


「・・・わかった、貴殿と模擬戦をしよう」


俺の殺気を受け俺にある程度の力量があるのが分かったからかはたまた何か思うところがあるのかはわからないが模擬戦をすることを了承してくれた。


「さんきゅ」


俺は騎士団長が模擬戦を受けてくれたことに礼を言う。


「おい、訓練用の剣を持って来てくれ」


騎士団長は近くにいた騎士にそう言った。言われた騎士は剣が入った箱を持ってきた。


「これは刃引きしてある剣だ。貴殿も使ってくれ」


「了解」


俺は箱から一本剣を手に取った。それを軽く振るい状態を確認する。


「ラク様」


剣の状態を確認しているとルナリアが声をかけてきた。


「できるだけ怪我をしないでくださいね」


「・・・わかった」


ルナリアは無茶をする子供を心配するような母親の顔をしつつ言ってきた。なんかルナリアの俺に向ける目が初めて会ったときのものと変わったような気がする。そう、適正属性を増やした時から。


俺はルナリアのことに首を傾げつつ騎士団長が待つ場所に向かった。


「準備はいいか?」


「おう」


「今回は魔法はなしでいこう、誰か合図を頼む」


「私がやりましょう」


リリシアが手をあげ俺と騎士団長の中央に立った。


「せっかくだし名乗っておこうかな」


俺はそういうと名乗りを上げる。


神無かんな流体術皆伝、赤羽楽」


「・・・ルイネシア王国騎士団長アルフレッド・アルフリード」


「では・・・始め!」


俺とアルフレッド・・・なんか違うな。何か呼び方が気に入らなかった。アル?フレッド?・・・団長さんかな。というわけで団長さんでいこう。


俺と団長さんの名乗りが終わるとリリシアが開始の合図をだした。それと同時に俺は走り出した。


団長さんはそんな俺を静かに剣を構え待っている。そこに俺は剣をたたきつける。


だが、さすがに団長さんは易々受ける。俺はその一撃では終わらず連続で剣を叩きつける。そのすべてを団長さんは冷静に受け流される。このままではらちが明かないと思い仕切り直すために一回距離を置く。


「さすが団長さんだ、軽く受け流される」


「いや、貴殿もかなりやる。では次はこちらから行かせていただく」


今度は団長さんが俺に向かって突っ込んでくる。


ガッキン!


「ッ!?」


団長さんからの剣を受けた俺はその剣の重さに驚いた。


流石に剣を扱うことに関しては団長さんのほうが上か。


この剣の重さは多分重心の違いだろう。俺は体術を習っていたとはいえ剣を扱ったことがないため剣を扱う際の重心の位置などを知らない。そのため団長さんの振るう剣の重さと俺ではかなりの違いがあるのだろう。


だけど、俺はここで終わるわけがない。そんな簡単にやられてはつまらないからな。


俺は団長さんからの剣を受けながら団長さんの動きを、体の動かし方を、力の入れ方を見る!


流石にそんなことをしているとかなり押され少しづつ下がらなければならない。しかし、下がりすぎるわけにもいかない。下がり続けてしまうとリリシアが試合を止めてしまうかもしれない。


なので、それまでに何とかものにできなければこのままつまらない負け方をしてしまう。


ガキン、ガキン、ガキン、ガッ


「!?」


団長さんの連続攻撃を止められたことに驚きを表した。


「つかめた」


カキン


止めた剣をはじき返した俺はニヤリと口角を上げた。


「驚いた、まさか俺の剣撃を止めるとは・・・」


団長さんはかなり驚いているようでこちらをかなり警戒している。


「こっから反撃開始と行くぞ」


「ッ!?」


振るわれた剣を受けた団長さんはさらになる驚きを表した。


それはそうだろ。なんたって振るわれた剣の重さが先ほどと違うのだから。


団長さんの動きを見た俺はそのまま真似するのではなくその動きを参考に俺の体に合わせた動きをしている。なので、振るわれる剣の重さが段違いなのだ。


最初に俺の剣撃を受けた団長さんの余裕が消え、かなり真剣な顔をする。


それから攻防一体の戦いが続く。


それから結構な時間が経った。


見ている者たちは俺たちの戦いに魅入られ皆動きを止め戦いの行く末を見ていた。


そして、決着は唐突に訪れた。


「ッ!?」


それは、ちょっとした隙であった。だがこれは必然だろう。俺の剣技は所詮付け焼刃だ。それなのに団長さんとここまでやれたのは俺の異常性のおかげだろう。


団長さんはその隙を見逃すはずがなく一気に畳みかけられ今までより強い剣が放たれそれを受け止めきれずに尻もちをついてしまった。そして、眼前に切っ先を突き付けられた。


「そこまで!」


リリシアの終わりを告げる声とともに周りから拍手が送られた。

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