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12話

「それではあの的に向かって魔法をお願いします。魔法の使い方はわかりますか?」


「ああ、大丈夫」


訓練場に着くとさっそく先生が魔法を使うように言ってきた。


魔法の使い方は本で読んで知っている。魔法を使用するには大きく分けて三つ必要だ。適正、魔力、そしてイメージだ。詠唱はイメージの補完である。


「よし!」


俺は的から離れた位置に立ち目を閉じる。


的に放つ魔法をイメージする。あの的を狙うなら弓のような飛び道具か?いや、使ったことないのでイメージできない。だったら縁日で使ったことのある銃がいいだろう。あの時は店に出ている景品全部をGETしたので店主が泣きながら止めてくれって言ってたな。まあ、景品は人形を一つもらうだけにしたが。その時のことを思い出し少し笑みがこぼれる。


まあ、イメージは銃と決まったのだからあとは弾だ。弾はコルクでは威力が足りない。なら本物の弾にする。映画なんかで弾は見たことある。それを火属性で魔法の弾をイメージする。


そして、弾がまっすぐ飛ぶようにライフリング、いやこの場合は飛んでいく魔法の弾が回転するようようにイメージする。


「・・・ふぅ」


イメージができた俺はゆっくり目を開いた。そして、右手を持ち上げ手を指鉄砲にする。


「ばーん」


銃を打つ音を声に出す。


すると魔力が抜ける感覚がし、赤い弾道とともに魔法の弾が飛んでいく。そして、的の真ん中より少し右にずれ的を貫いた。


真ん中を狙ったのにな。この辺は練習かな。


「どやぁ?」


俺はドヤ顔で後ろを振り返る。


「なっ!」


「!?」


「さすがです」


先生とリリシアは驚きで呆然とし、ルナリアは恍惚とした表情をした。


どうした?


「今のは拳銃をイメージしたの」


ルナリアの表情に疑問を持っていると西園寺に声をかけられた。


「ん、ああ、そうそう銃をイメージして魔法を使った」


「そう・・・他の適正属性は?」


「ん~、こんなところ」


西園寺が他の適正属性を聞いてきたので両手をパーにして一つ一つの指に各属性で作った小さな玉を出した。火の玉、水の玉、風の玉、土の玉、光の玉、闇の玉、雷の玉、氷の玉、木の玉、重力の玉の十個を出した。


「・・・私も増やそうかな」


「それはやめとけ」


西園寺の属性を増やすという言葉を強めに止めた。


「なんで?」


「俺の髪が白髪になったのは痛みによるストレスって言ったよな。つまり、相当の痛みがあったってことだ。あの痛みをお前が、人が耐えられるとは思わない」


「でも、あなたは耐えた」


「それは俺が異常だからな」


俺は少し悲しそうに答える。


「・・・わかった」


俺の表情から何かを感じ取ったのか西園寺は引き下がった。


「そんじゃ、いろいろ試しますか」


俺はまだ魔法で試したいことがあるので再び的のほうを向いた。


さあ、実験開始だ。


――――――


それから俺はいくつもの魔法を試した・・・結果。


「どうしてこうなった」


訓練場は爆撃でもされたのかというほど穴だらけになっており、そこら中に瓦礫が散乱していた。先生が俺のしでかしたことに目を回して気絶しておりそれをリリシアがメイドに医務室に運ぶように言っている。


そして、ルナリアはまだ恍惚とした表情をしていた。


そろそろ目を覚ましてほしい。


西園寺と九条は興味深そうに見ている。


ついでにイケメン君は茫然としたまま固まっている。


「しっかし派手にやったな~」


実験中は変なテンションになっており周りのことを気にしていなかったが終わっりテンションが戻るとこの惨状が目に入ったということだ。


「・・・これはどういことだ?」


この惨状をどうするか考えていると入口のほうから声がした。そちらを見ると騎士の格好をした人たちが入ってくるところだった。彼らはこの惨状を見て目を大きく開け驚いている。


「姫様、これはどういう・・・」


一番前にいたがたいの良い騎士がリリシアに声をかけた。


「えっと、アカハ様に魔法を見せてもらっていたのですが・・・」


「調子に乗ってやりすぎちゃいました」


「では、訓練場をどうするおつもりで?我々はこれから訓練なのですが?」


俺が割って入るとその騎士はちらっとこちらを見た後再びリリシアに話しかけた。


「え、えっと、その」


騎士の問いにリリシアは戸惑うように目をさまよわせた。


「それは大丈夫だ」


俺がやったことなので責められるのも責任を取るのもリリシアではない、俺だ。なので、この状況をどうにかする。


「ほう、貴殿がどうにかすると?」


「ああ」


騎士は胡散臭そうに俺を見つめる。


俺はその視線を無視して魔法を使うためにイメージを固める。イメージするのはここに来た時の訓練場だ。そして、イメージができると俺は指を鳴らす。


パチンッ


その音とともに訓練場が光に包まれる。


そして、その光が収まると訓練場は元の状態に戻っていた。穴もなくなり瓦礫もなくなっていた。


「これでいいだろ」


「・・・あ、ああ」


驚いている騎士声をかけるが騎士はいきなりのことに驚きが隠せないようだ。


「じゃあ、俺は訓練を見学させてもらうな」


俺はそういうと端っこのほうに腰を下ろした。


「お疲れ様です」


元に戻ったルナリアがねぎらいの言葉をかけてくる。


「訓練は見学だけでよろしいのですか?ラク様なら参加すると思っていましたが」


「ああ、まずは見てみたいからな」


ルナリアにそう言うと俺は見ることに集中する。


――――――


「彼は何者ですか?」


騎士は訓練を見学すると言い端に歩いていく後姿を見つつリリシアに質問する。


「彼は異世界人ですよ。騎士団長もそこにいましたよね?」


騎士団長と呼ばれた彼は髪の色は違うが確かに謁見の間にいたのを思い出した。


「ですが、彼は巻き込まれた一般人のはずでは」


「ええ、そうです」


「なのに、訓練場を一瞬で元に戻すほどの魔法をあれほど容易く使用するなどありえません」


楽が使用した魔法は特殊属性の時魔法である。しかも、上級魔法である。それを楽が容易く使用したことに騎士団長は驚きと警戒を表した。


「確かにサイオンジ様とクジョウ様もすごかったですがラク様はその比ではありません。ですが、彼は私たちの勝手によりこの世界に連れてこられてしまった者です。どんな者であれ守らなければなりません」


「・・・わかりました」


優しいリリシアの言葉に頷く騎士団長だが彼への警戒を解かない。


なぜなら、彼が敵になる可能性も無いわけではないのだから。

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