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2 アランside



お父様が友人にだまされ、多額の負債を負ったという知らせが入った。

「なんとかするから、心配するな。」と言い残して、父は金策に駆け回っている。

最悪、家は爵位を売って平民になるかもしれない。


イレーヌはついてきてくれるだろうか?

ついてくるに決まっている。


イレーヌは、幼い頃に家同士が決めた婚約者だ。

だけど、僕たちは、お互いを愛している。


「アランのお嫁さんになるのが夢なの。」

「アラン、だいすき。」

小さい頃、君は、頬を染めて嬉しそうに僕に打ち明けてくれたっけ。

うちの家族もイレーヌのことを、実の娘のようにかわいがってる。


平民になっても、イレーヌと家族がいれば、僕は幸せに、やっていけると思う。

彼女は、かわいくてほんわりした外見と違って、しっかり者だ。

早くに、母を亡くしたイレーヌは、まだ幼い弟を育てながら、父を支え、子爵家の切り盛りを手伝ってきた。

かわいくてしっかり者の君を、恥ずかしそうに微笑む君を、苦難があっても前を向く君を、いや、君のすべてを僕は愛している。


今日は大事な話があると、イレーヌに呼ばれた。

僕らの結婚の話だろうか?

家の問題の行方によっては、結婚は延期しないといけないかもしれない。

苦労をかけてしまう。ごめんよ。イレーヌ。




****




イレーヌは、自分から呼び出したくせに、こぶしを握りしめて言いだしにくそうにしている。

小さく手が震えている。どこかで見たことがある光景な気がするが、思い出せない。


「アラン様、お金のない貴方との結婚は考えられないの。婚約を破棄させてくださいませ。」


???? なにを言ってるんだイレーヌ。意味が分らない。


「イレーヌ、僕を愛してるって言ったのは、ウソだったのか? ずっと一緒に居たいって言ったじゃないか!」


「あのときの気持ちは本当よ。でも、没落する貴方と結婚する訳にはいかないじゃない。ドレスも首飾りも買えないわ。それにね、トレーニ伯爵のご子息が私と結婚して欲しいと、おっしゃるの。」

イレーヌが、小さく口をとがらせる。


君は、そんな物が、欲しかったのか?

確かに、貧乏子爵だから、ろくにドレスもアクセサリーも贈れなかったが.....。


「イレーヌ、女ったらしのフィリップか? それででいいのか?」

「ええ、トレーニ伯爵は、お金持ちだわ。フィリップ様も素敵な方よ。貴方との婚約破棄の賠償金も支払ってくださるって。」


「君は、金持ちと結婚したかったのか? 君なら平民になっても、ついてきてくれると信じてたのに。」

「平民になって、どうやって暮らしていくとお考えでしたの?」

「え? 護衛とか商人とか...。」

「失礼ですが、アラン様は、護衛ができるほど剣の腕前がお上手でも、商売の知識がお有りでも、ありませんよね?」

正直どうやって暮らしていくとか、考えてなかった。

君となら、なんとかなると思ってた。

でもでも、お金がないからと、僕を裏切って、フィリップと一緒になるというのか?

他の誰かのものになるというのか? 許せない。


「金の切れ目が縁の切れ目というのか! 君がそんな女とは思わなかった。女ったらしのフィリップが、君に似合いだな! 死ぬまで、君のことは許さない。」

今まで、イレーヌに見せたことのない憎しみのこもった目で、にらみつけた。


「ええ、貴方に許してもらおうとは思ってないわ。死ぬまで憎んでちょうだい。」と、嬉しそうに笑った。

「君って、女は!!!」

嬉しそうに笑うイレーヌに腹が立って、頬を打ってしまった。


「女に手をあげるって、最低だわ! 私の前に二度と現れないでちょうだい。」

イレーヌは、血がにじむほどこぶしを握りしめていた。


わかったよ。イレーヌ。

僕は、成り上がって、君が今日したことを死ぬほど後悔させてやる。






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