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エリス☆てぃんくるすたー

作者: 小倉うさぎ

7年前、私の町に星が落ちた。天文学者の予測により町民達の避難が速やかに行われ、死者はでなかった。急速な復興が進み少し落ち着いた位に私はこの町に再びこの地に足を踏み入れた。


私の一家がこの町に帰ってきた時はもう何もかも変わってしまっていた。大きな湖は出来てるし、周辺にあった山はいくつか消し飛んでいる。

私は昔よく遊んだ公園があった場所になんとなく向かっていた。落ちた場所から割と遠くだったから、もしかしたら残っているかもしれないと考えていたからだ。

「あった!良かったここはまだ残っていたんだ」

小さな山の中にあった公園の新しく設置されていたベンチに腰を下ろして少し風に当たっていた。かつてあった様々な遊具は爛れて当時の様子を物語っていた。

「......なんか私とここだけ切り取られた気分..もう7年か」

目を瞑った私は当時8歳のぼんやりとした記憶に想いを馳せていた。

「美咲?美咲だよね?美咲だ!」

懐かしい声に呼ばれた気がしてハッと目を覚ます。

え....なんで?ウソでしょ?

消えてしまいそうな透き通った白い髪。快晴の空のような蒼い瞳。

そこにはいるはずがない人..いや宇宙人がいた。

「覚えてる?」

流石宇宙人というべきか当時と変わらぬ姿の彼女は問いかけた。

「う、うん。覚えてるよ久しぶり..エリス」



7年前、当時私がよく遊んでいた3人組は星が落ちる少し前に壊れた宇宙船に遭遇していた。彼女は船員の1人で唯一日本語を話せた。私達と彼女は力を合わせて宇宙船の部品を探して修理し彼女達はまた宇宙の旅へと向かった。といった感じだったと思う。


「美咲、みんなは一緒じゃないの?」

「え、えとみんなは....」

私達3人はそれぞれ避難先が異なってしまい。散り散りになってしまった。私も皆の消息はしらない。

「そんなことだと思ってたよ。」

ニシシと白い歯を見せて笑った彼女は続けた。

「みんなこの町に帰ってきてるよ。これから会いに行こう」

「ちょっ待ってよ」

強引に手を引くエリス。急に走り出した私は足が縺れた。

「美咲はそういうとこ変わってないね」

「もう」


「ここが真里奈の家だよ」

萩寺(はぎでら) 真里奈(まりな)の家は昔から凄いお金持ちでそこには当時の豪邸が再現されていた。そこからいつか見た綺麗なワンピースの美少女が顔を覗かせ、こちらに気づく。

「美咲?美咲じゃない!わー久しぶりこっちに帰ってきたんだ。」

「久しぶり。元気みたいだね」

私の背からひょっこり顔を出したエリスにも気づいた。

「エリスも一緒なのね」

「真里奈は皆の居場所とか..知ってる?」

「知ってるもなにも美咲がこの町に帰ってくるのが一番最後よ」

「じ、じゃあ」

と言いかけた時だった。真里奈の家の前でキョロキョロしている背が低いツインテールの女の子がいた。

(あかね)?茜だよね何してるの?こっちこっち!」

私は嬉しさのあまりに叫んだ。何故か彼女の容貌もそこまで変わってない。

「美咲?美咲やん。久しぶりやなぁ」

茜の実家は確か関西だったか彼女は関西弁になっていた。

「茜随分変わったね」

「ええーそんな大袈裟やで。それに私なんか知らんけどちんちくりんのまんま背が伸びへんのや」

私の記憶の佐山(さやま) (あかね)はもっと内気で静かだったとおもう。それがよく喋るので私は驚いてしまった。関西恐るべし。

真里奈は私とエリスと茜を家に入れ、テーブル席に座った。

「なぁ私実はこの娘知らへんねん誰?」

「え!?」

茜が嘘をついているようには思えなかった。

「真里奈だよ。ほらよく昔遊んだ」

私と茜はヒソヒソ話した。

「何を話してるの?」

真里奈が気づいた。

「何でもないよ」

私は茜を庇った。

「正直に言うわ。私真里奈さんのこと思い出せへんねん。いや、知らへんねんせやから家も迷とったんやほんまにゴメン」

真里奈もはっきりとした茜の態度に少し驚いていたがすぐに受け入れ自己紹介をした。だが茜は思い出せない様子だった。

エリスは黙っていた。

話す途中、真里奈は時々携帯を確認していた。誰かと会話しているようだった。そして、嬉しそうになって、

(しゅん)来れるようになったって。これで全員揃うね。はぁ懐かしいな」

「ほんとに?ヤッター」

エリスも嬉しそうだった。

私と茜は顔を見合わした。私も茜も俊を知らなかった。

「ゴメン俊って誰?なのかな」

「俊だよ俊!エリスでも覚えてるよ」

そこで私と茜は自分達の記憶について話した。

「そうなんだ..えっと俊は昔よく遊んでいた1人よ。もうすぐ来ると思うけど」

程なくして俊(?)が来た。俊も私達の記憶がおかしな事に驚いている様子だった。また、私と昔何かあったのだろうか彼は露骨に視線を私に向けようとしなかった。そのくせさっき私に会うや否や

「み、..美咲!?綺麗になったな....」

なんて言い出すし、一体私の過去に何があったのだろうか。


私達が思い出話をして分かったことは

私の記憶からは俊が、茜の記憶からは俊と真里奈が消えている。ただ、エリス達を助けた記憶はある。そして、何故か7年前に宇宙へ再出発した筈のエリスがここにいる。エリスは何故ここにいるか分からないらしい。


「なぁ俺達タイムカプセル埋めたよな?ほら確か..星が綺麗に見えるとこ!俺達の秘密の場所。そこに行けば何か分かるかも知れない」

「そうね。でもあれって10年後に掘り返すって約束してなかったっけ?」

「細かいことはいいだろ?なぁ茜?」

「せや私は賛成やで。みんなのこと思い出したいもん」

「あのさぁ、そもそも隕石落ちて地形変わってない?」

沈黙。

どうやら私の一言で場を凍らしてしまったようだ。

「文献を探した結果がこれ....ね」

「仕方ないわよ。地図だって新しくなるに決まってるじゃない」

「エリスはそれでも大丈夫だよ思うなぁ」

”小学二年わたしたちの千星町”

学校で配布せれたしょぼいやつだ。私達は少々苦しみながら今の地図と照らし合わせ候補を3つ程割り出した。

「割り出したのはいいが全部水のなか..か」

落胆して俊は言った。一気に暗い雰囲気になる。

「これもしかしたら大丈夫じゃない?」

エリスは湖の端っこを指さしていた。二つは完全に湖の中だったが一つはギリギリいけるかどうかくらいのところにあった。

「でもこれ真里奈の家の反対側やん遠ない?」

気づけばもう夕方だった。

「いや、行けるかもしれない」

「私も行きたいそこに行けば何か分かりそうだから」

私達は急いで向かった。もう日が落ちかけていて、徐々に闇が空を支配し始めていた。

「この辺のはずだけど....」

現在の地形図を取り出し確認した。

「..............嘘、だろ」

そこには新しく作られるコンビニの駐車場の為にアスファルトが敷かれていた。

「私達の思い出がローソ〇に..」

立ち尽くすしかなかった。道には街灯の明かりがちらほらと見られた。

「帰ろう。もう暗いし」

素っ気なく言った俊の言葉に誰も異論はなかった。みんなもあまりの現実に疲れ果てていた。

「どうしたのエリス......エリス?」

帰ろうとする私達の中、エリスだけはどこかを見つめて動かない。そして何かに引き寄せられるかのように闇の中に駆け出した。恐らく山へ向かっている。

急いで4人で後を追った。私は夜の山に入るのが怖かった。何が現れるか分かったものじゃないし山の生物は夜行性が多いと聞いたことがある。足場が見えにくいのも難点だ。それでも私達は後を追い続けたその先にある何かの為に..


突然エリスは足を止めた。

「ここだよ」

エリスは指で地面を指した。落ち葉が沢山かかっていて何だか分からなかったが夢中で取り払い素手で地面を掘った。誰もが効率が良いとは思ってなかったはずだ無論土まみれになった。だが私達は夢中だった。やがて黒くて硬い箱を掘り当てた。妙にしっかりとした箱だった。

「..開けるよ」

先ず一通の手紙が入っていた。それを広げた。木々の間から差し込んだ月の光で何とか読むことは出来た。




みんなへ


てつだってくれて、ほんとにありがとうエリスたちはこきょうへかえることができるようになりました

でもエリスはみんなのまちにほしがおちるのしっちゃったの

だからエリスはのこってみんなのたからものまもることにしました

こんどはいつあえるのかな

つぎあったときはいっしょにあけられるといいな

でもそのときはほんとにほんとのおわかれなの

エリスはかなしくないからみんなもげんきでいてね



みさき、あかね、まりな、しゅん

エリスはわすれないよ



「これって........」

私は全てを悟った気持ちになった。

「見上げてごらん」

エリスに呼ばれた気がして空を見上げた。



星。木々の間から瞬く無数の星。一切のものが邪魔せず私にその輝きを放ち、照らしていた。それがエリスに出来る私への最大の贈り物だったのだろう。永遠に光を灯し続けるこの星たちに心をすっかり奪われていた。


ふと我に返る。今さっきエリスと言ったがそれは誰なのか..そして周りを見て目を疑った。なんと私以外に横で空を見上げいた私くらいの歳の人が3人もいたのだった。全員お互いを知らないようだった。

そして近くにはおかきの缶のようなものが置いてあって、私達はそれを迷うこと無く開けた。

「これ....私達じゃない?」

中には私を含めた4人の写真が入っていた。きっと昔に何かの縁があったのだろう。そういうこともあって私は茜、真里奈、俊とすぐに友達になれた。



最近思うことがある。過去の自分にはきっと忘れられないような事があってきっとそれは自分とって忘れてはいけないものできっとそれはかけがえの無いものの筈なのに忘れてしまっている気がする。

それでも何故だろう目を瞑るとよく満天の夜空に瞬いた星を思い出す。そのたび、どこか懐かしい気分になるのであった。

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