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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第4章 リザードマン編
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荒野の戦士達

 「お嬢、紅鮭は山椒魚の洞窟に流れ出たみたいですぜ、ジャー」

 「いくら化け物でも、あの数の紅鮭を全部、食い尽くしたわけもないだろう。こうなったら奴を倒して、もう一度、鮭を生簀に追い込むしかないぜ、ジャー」

 「しかし、あの化け物ですぜ、ジャ」

 「しかしも案山子もないんだよ、ほっとけば食い物が無くなるんだから、ジャー」

 しぶる若い衆を5人ほど引き連れて、お譲と呼ばれた若い娘リザードマンが地下水路に潜っていった。


 だが、彼女は知らない。

 その先には大山椒魚よりも恐ろしい敵が潜んでいることに・・・


 「キュキュ?」

 いや親方のことじゃないと思うけど、どうなんだろう。最近見た夢の所為で、あながち嘘ではないような気もするし・・・

 僕らはルカの洞窟に一度戻り、対策を練っていた。

 「あの地底湖はリザードマンの領域で、そこから延びる地下水路は山椒魚の領域だったみたいだね」

 「それを主殿が倒して、地下水路はダンジョン化できたわけだな」

 「だったら、ほっといてもこっちには来ないってことすか?」

 「もう山椒魚の討伐をあきらめていればね。定期的に倒しに来てるなら、そのうち来るかも」

 「どだい、直接通路が繋がっていてはミコト達も気が休まらないであろう」

 「だよね、どこかで線引きしないと」

 「地下水路、埋めちゃうのはどうすか?」

 悪くはないね。塞いでしまえばわざわざ掘り起こしてまでこっちにはこないだろうし。

 「しかしやがては地上でも遭遇するかも知れぬ相手だ。地下で戦えるなら、かなり有利だが」

 実際には水中戦が多くなりそうだから、五分五分かな。でもこちらの領域で戦うなら、コアの戦闘支援もつくし、罠も張れるから有利にはなるのか・・・


 「よし、地底湖ごともらっちゃおう」  「ん♪」

 「「了解!」」


 再び、ルカに水中呼吸の呪文をかけてもらって、同じ編成で地下水路を突き進む。目標は大山椒魚が隠れていた、天井にある大きな裂け目だ。

 そこは入り口こそ狭いが、中は大きな空洞になっていて、空気もちゃんとあった。大山椒魚の寝床には、奴が溜め込んだ犠牲者の装備や、綺麗な石が転がっていた。

 「お宝っす」

 「山椒魚でも光物を溜め込んだりするんだね」

 「ギャギャ(あれは槍の穂先ですか?)」

 アズサが指差したのは、鋭く尖った水晶で、確かに槍の穂先に使えそうだ。

 「ギャギャ(これは弓ですか?)」

 アサマが手にしたのは、半分に折れて壊れた短弓の残骸に見える。

 「ちょと貸して」

 調べてみると、普通の短弓と幾つか違う点があった。

 まず、弓の部分が硬い角か骨でできており、引くのに相当な筋力が必要そうなこと。

 次に、弦がそれに負けないぐらい硬い材質でできていること。

 さらに、側に落ちていた矢が、矢羽の無いクロスボウのボルトの様な形をしていたことだ。

 「これ、水中用の単弓かも」

 「まじすか?」

 「水中で腐らない部品を使って、抵抗の少ないボルトを打ち出す弓なのかな」

 「こっちの遠距離は水の中だと威力も射程も激落ちっす」

 「まあ、対策は立てておくよ」

 「おまかせしたっす」

 コアに連絡をとって水中短弓の対策をしてもらった。


 10分ほど、その場で待機していると、対策がやって来た。

 「主殿、私達の力が必要だとか」

 ロザリオをリーダーにして4体のスケルトンファイターが地下水路を歩いて合流した。

 「うん、相手が水中で弓を使う可能性がでてきたからさ」

 「なるほど、我らは弾除けだな」

 ニヤリとロザリオが猛々しい笑みを浮かべた。

 「後方支援はまかせて」

 「了解した。いくぞ!」

 「「カタカタ」」

 ロザリオの号令とともに続々と水中に落下していくスケルトンファイター達。

 「僕らも行くよ」

 「「ギャギャピュイシャー」」

 気分はジャブロー侵攻だね。

 「それ負けフラグっす」


 「きた」

 地底湖に着く前に、向こうから地下水路に入ってきたようだ。

 「コア、攻略部隊に連絡。ロザリオ隊は防御陣形で迎撃。フロッグチームは後方で待機。牽引チームはロープを離して遊撃を」

 「ん」 「了解した」 「了解っす」 「ピュイ、シャー」

 まさか3倍の戦力に、無闇に突っ込んではこないと思うけど・・・



 「お嬢!前方になんかいますぜ、ジャー」

 「山椒魚かい?ジャ」

 「盾を構えたスケルトンみたいですぜ。あと後方にも何かいやす、ジャー」

 「かまわないよ、やっちまいな!ジャジャー」

 「「へいっ!!」」



 うわ、本当に突っ込んできたよ。何か特殊技能でも使ってくるのかな?

 「ただの脳筋だと思うぞ。ロザリオ隊、出る」

 「「カタカタ」」


 敵は6体のリザードマンで、前衛が水晶の槍、後衛が例の単弓を使ってきた。

 「ふむ、射程は水中にしては中々だな。だが、効かぬよ」

 単弓も水晶の槍も刺突武器だ。ロザリオ達と戦うには相性が最悪だった。槍は盾で防がれ、短弓は当たってもダメージが通らない。

 「ダメだ、お嬢!こいつらに槍も弓も効かねえ、ジャー」

 「気合だ、気合が足りないんだよ、お前達!ジャー」

 気合でどうこうなるとは思えないんだけど。

 あとリザードマンがゴボゴボしゃべってる言葉が、クロコ達には聞こえるらしい。コアに翻訳してもらった。

 「どうやらあの若い個体がリーダーらしいね。お嬢って、女性なのか」

 「どうする主殿。このまま切り倒すでも問題ないが」

 「なんか侵攻部隊ってほど、脅威じゃないから、可能なら捕縛して」

 「それは逆に難しい注文だな」

 「ミコト達がうまくやってくれるよ」

 「「ピュイ!」」


 こっそりと後ろに回りこんだミコトチームの広範囲電撃で、敵の4体が麻痺した。お嬢と呼ばれていたリーダーの喉に武器を突きつけると、残りの2人も武器を捨てて投降した。

 「一応捕虜だから、抵抗しないように。すれば命の保証はしないから」

 裂け目の空気があるとこまで引き連れて移動すると、武装解除してから話しかけた。

 「あたいらをどうするつもりだい、ジャー」

 竜語訛りがあるものの、共通語が通じたので会話をしてみた。

 「どうするも、領域を侵犯してきたのはそっちだよ」

 お嬢は目を逸らしながら答えた。

 「化け物山椒魚の住処が、あんたらのシマになったって知らなかったんだよジャ」

 「じゃあ、山椒魚を狩りにきたのかい?」

 「数日前に地下水路の水が急に押し寄せて、ウチの生簀が壊れたんだ。逃げ出した魚を追ってきたのジャー」

 今度は僕が目を逸らした。

 「そっか、大変だったね」

 「あんた、何か知ってるな!ジャジャ」

 「知ってても、そちらに教える義務はないよね」

 「返してくれ!あの魚がないとウチは一家そろってお飯の食い上げなんだジャー」

 後ろの手下達も一斉に土下座してきた。

 くっ、罪悪感が半端ないね。

 「ここは食料と地底湖を交換したらどうっすか?」

 さすがワタリ、御主も悪よのう。

 「生簀を壊して手に入った鮭で、恩に着せようというお代官様には適いませんや」

 ワッハッハッハ


 「こいつらいったい何者だよ、ジャー」

 「さっぱりわかりませんぜ、ジャ」


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