表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第4章 リザードマン編
88/478

パーカー、車を

 しくしく・・・

 地下水路の洞窟に、女の忍び泣きが響き渡る。

 「どうしよう、あれ」

 しくしく・・

 「どうするも何も、主殿が声をかければよかろう」

 「元はといえばロザリオがあんなフラグ立てるから」

 しく・・

 「私のせいか?」

 「ん」

 「ほら」

 しく・・さんじゅうろく

 

 「悲しくて泣いてるわけじゃ無いみたいだね」

 「余裕はありそうだな」

 「くく」


 精霊の泉に誘われて、現れたのは若い女性の姿をした水の精霊?だった。美人だし、スタイルも抜群だけど、とにかく顔色が悪い。青ざめた頬に落ち窪んだ瞳が、水死体のように見えてしまう。

 恐る恐る声を掛けてみた。

 「もしもし、そこのお嬢さん、どうなされました?」

 「まっ、お嬢さんだなんて、恥ずかしい」

 そういって顔に両手を添えて、嫌々をしていた。

 「主殿、口説けとはいってないぞ」

 なぜかロザリオが怒った声で囁く。

 「そんなつもりは、これっぽっちもないんだけどなー」

 この人、いや精霊か、かなり天然入ってるね。


 らちが明かないので、僕がダンジョンマスターであることを打ち明けて、話を進めた。

 「それで、私のダーリンが浮気をしたんです、酷いと思いませんか!」

 なんのことはない、旦那に浮気されて実家に帰ろうとしたが、遠すぎたので、ここに立ち寄っただけらしい。もしかしたら追いかけてきてくれるのを待っているのかも知れない。

 「なんだっけ、こういうの」

 「夫婦喧嘩はコボルドも避ける、だな」

 こっちではそういうのか。しかしどうしようか本当に。

 「この精霊が居座ってると、他の者は来てくれないぞ」

 一つの泉に1人の妖精が、マナーらしい。

 「でも無理やり追い出すのもなー」 

 「家賃の代わりに働いてもらったらどうすか?」

 ワタリの提案で、しばらく居てもいいけど、その分を働いてもらうことで決着した。

 眷属化はしないで、ゲスト扱いで短時間労働をしてもらう。

 「あれっすね、カラータイマーっす」

 それじゃあ3分しか働けないよ。


 何が得意かわからないので、許可をとってスキャンしてみた。


 ルサールカ「ルカ」:清流の女精霊

種族:精霊 ランク5 眷属化 125DP

HP25 MP25 攻撃力4 防御力4

技能:水棲、冷気耐性、精霊属性(中)、詠唱、魅了

特技:精霊魔法(水属性)Lv6


 なるほど、魔法に特化してるね。格闘戦力は弱いけど、その分MPが多いし、精霊魔法のLVも高い。

 「精霊魔法はどんなのが使えるのかな?」

 「えーっとですねー」

 聞き出した情報をリスト化してみると、


 精霊魔法(水属性)

Lv1 ピュリファイ・ウォーター 水の浄化 使用MP1で3mx3mx3mぐらいの水を浄化できる。

Lv2 クリエート・ウォーター 水の精製  使用MP2で3mx3mx3m程の真水を出せる。

Lv3 ウォーター・ウォーク  水上歩行  水面を歩ける。使用MP2で6人まで10分間

Lv4 オーブ・オブ・ウォーター 水球   使用MP2 単体攻撃 射程100m 10水波ダメージ

LV5 ウォーター・ブレス  水中呼吸   水中で呼吸できる 使用MP3で6人まで1時間

Lv6 ヴォーテックス    渦潮     使用MP4 射程60m 

                      範囲5m半径に15水波ダメージ

 という感じらしい。

 これなら戦闘がなくても、水の浄化や水中呼吸で活躍してくれそうだ。

 「よろしくね」

 「こちらこそ、それでですね、去年の結婚記念日に・・・」

 さらに1時間、話は続いた・・・


 「やっと終わったーー」

 延々と続くルカの夫への愚痴を聞かされていた僕は、やっとコアルームに戻ってこれた。

 「お疲れ様、主殿」 「おかぁ」

 さっさと逃げ出していたロザリオとコアは、テーブルで抹茶入り青汁を飲んでいた。

 それ、気に入ったんだね。

 「ワタリは一緒じゃなかったのかな?」

 「僕の代わりに聞き役になってもらったよ」


 「あの、正座だけでも崩していいっすかね」

 「そんなことより、ちゃんと聞いてくれてます?これから本題に入るんですからね」

 「これからっすか・・・」


 「ワタリの魂、口からはみ出してないといいけど・・」

 「なむ~」

 「尊い犠牲だったな」

 「それはともかく、ルカの呪文の補助を受ければ、地下水路の探索ができそうだよ」

 「ワタリの犠牲、軽いな」

 「ギャギャ(ワタリさんですから)」


 というわけで、地下水路探検隊を編成することになった。

 主力はミコト隊とクロコ隊、それに僕と隠密ゴブリン4人衆と親方達3体で行くことにする。

 水中が主な行動域になるだろうから、ケン達や五郎〇達は思うように動けないと思う。アップルチームとロザリオ部隊にはダンジョンの守りをお願いした。

 まあ、十中八九は「貪欲なる氷斧」の逆襲は無いと思うけど、万が一で占領されたくはないからね。


 ミコト隊とクロコ隊にはロープをくつわ状にしたものを咥えてもらって、それぞれ1名を牽いて泳いでもらう。水中モーターに牽かれるフロッグマン(潜水作業員)のイメージだ。

 水中は透明度が高いとはいえ、視界がせばまるから、探査役として親方達を背負い袋に入れていく。実験の結果、アースソナーは水中でも優秀な探査能力を発揮できた。


 装備を整えた探検隊は、ルカの前に固まって並ぶ。

 「思い出せ、全ての命は水から生まれ、水の中で暮らしていたことを、ウォーター・ブレス」

 水中呼吸の呪文をかけてもらい、順々に水路の中に飛び込んでいく。


 「1号、準備良し」

 「2号、準備Okっす」

 「ギャギャ(3号OKです)」

 「ギャギャ(4号いけます)」

 「ギャギャ(5号準備よし)」


 なぜか国際救助隊のテーマが脳内に流れる中、地下水路探検隊は、未知なる領域の探索に出発した。


 「ぺね」

 「私がペネロープとは、どういう意味なんだ?」

 「ぱか」

 「はい、お嬢様て言え?わけがわからん」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ