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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第4章 リザードマン編
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サモン・サーモン

 それは例えるなら一滴の雫だった。

 神の手によって大陸の北方に落とされた、小さな小さな雫だ。

 それは広大な針葉樹林の中にある、百を越える湖の一つの傍らに落ちた。

 雫は本当に小さいので、それが立てた波紋も小さいものだった。

 だが、その波紋が他の雫のたてた波紋とぶつかることにより、より大きな波紋になっていった。

 

 最初は狼の群れだった。

 彼らが波紋に飲み込まれると、そこに小さな凪ができた。

 そこに羆が入り込んだ。

 その羆も波紋に飲み込まれていった。

 羆の消失によりできた凪は、周囲のものからもはっきり見えた。

 その頃には波紋はさざなみとなって周りに影響を与え始めた。


 すでに雪原の狩人は消え去り、氷の斧使いは氷河の奥に潜んだ。

 東の森人も傷を癒すために戻っていった。

 そしてできた大きな凪は、さらなるモノ達を呼び寄せる。


 だが、雫はそれを知らない・・・



 「なので釣りをしていても仕方ないよね」  「ひっと」

 

 今、僕らは水牢の端で釣りをしている。

 なぜかって?そこに鮭がいるからさ。


 発端はミコト達にコオロギを振舞っていたときだった。

 何度目かのジャンピング・キャッチに拍手を送っていたら、次の一投をキャッチしたのは違う魚影だったんだ。

 「え?今の何?」

 「でかい魚に見えたっす。きっとこの沼の主っす」

 「沼じゃないし、他にも泳いでるみたいだけど」

 「沼だから、ぬっしーっすね」

 バリバリバリ  「あんぎゃー」

 ミコトの突っ込みが入った。


 「ピュイ」 「ほー」 「ピュピュイ」 「ほむ」 「ピュイイ」

 コアの聞き取り調査によって、謎の巨大魚の正体がわかった。

 「鮭なんだ」 「ん」

 以前にダイダル・ウェーブをかましたときに、まだ未探索の反対側の地下水路がどこかに繋がって、そこから移住してきたらしい。敵対反応が無かったのは、鮭もなかば無理やり流されたようで、こちらに住み着いてからも餌もなく、ただ回遊していたからだそうだ。

 「ぺこ」

 お腹をすかしているらしいので、蝗を変換して餌付けをしようとした。

 そしたら・・・

 パクパクパクパクパクパク  「ぴゃー」

 鯉の餌に群がる錦鯉のように、鮭が集団でコアの周りに集まってきた。

 あれは怖い・・・


 思った以上に流れ着いた鮭が多かったので、少し間引くことになったんだ。

 鮭、美味しいしね。


 釣り人を募集したら、予想以上に人数が集まったので、まずは足場から作ることにした。 

 最初は牢屋から階段を降りたところで、並んで糸を垂れる予定だったけど、そこからいかだで浮き桟橋を拡張する感じ。

 筏は、丈夫な木の柵を変換して、引き抜いて横倒しにします。その上に、丈夫な木の床を変換し、蔦のロープで縛れば、ほら完成!

 このままでも実用できるんだけど、数が必要になるときが来るかもなので、コアに分解してもらいます。


 変換リスト:運搬(水上)

丈夫な木の筏 3mx3m 最大積載量 500kg 25DP


 8人ぐらい乗れるかな。五郎〇とかは2頭で一杯一杯だけどね。今回は1艘あれば十分です。

 この上で鮭釣りにチャレンジするのは、僕の他に5名になった。6人分の釣竿その他を用意して、一斉に竿を振る。

 「ギャギャ(マス釣り以来ですね)」

 「ギャギャギャ(鮭も美味そうだ)」

 「今回もおいらが大物を釣るっす」

 いやワタリが釣ったのはミコトだし。

 「釣りか、懐かしいな。十年振りぐらいになるか」

 ロザリオは数百年ぶりだからね。

 「ひっと」

 コアはスケルトンファイターに竿を持たせて、リモコン・フィッシングだ。

 

 この鮭釣り、実はかなり難しい。

 腹を空かせた鮭は、すれていないせいもあって、餌に食いつかせるまでは誰でもできるんだ。でも現状の簡易竿と釣り針だと、鮭の引きに耐えられない。竿を折られるか、釣り針が外れてしまう結果になる。

 そこで。どうするか。


 餌のコオロギは水面近くで浮かせたままにする。するとそこにジャンプして鮭が食いついてくる。

 すかさず竿を折らないようにカツオの一本釣りの要領で釣り上げるのがコツです。

 水中で抵抗されると、竿にすごい負荷がかかるけれど、空中なら鮭自体の重量しか掛からないから釣れるという訳。

 もちろんタイミングを間違えると、水中に逃げ込まれて竿ごと持っていかれたり、速すぎて餌に食いつく前に引き上げてしまうことになる。

 そして引きずられる竿を諦めずに握ったままでいると、

 「のおーーーっす」 どっぽーーん

 竿ごと水に引き落とされたりするんだよね。


 上手なのはコアだった。スケルトンファイターは指示されたタイミングで、竿を一定の力で引き上げる動作しかできないにも関わらず、高性能の演算能力で的確に釣り上げていく。

 逆に1匹も釣れていないのはロザリオだ。

 「なぜだ、なぜ食いつかん」

 真剣に水面を睨み付けるその後ろ姿から、めらめらと闘志が立ち上っていた。

 その闘志に怯えて魚が寄ってこないことに気がついていない。

 「ええい、まどろっこしい真似は止めだ。この方が早い!」

 そう叫ぶとミスリルソードで水面を断ち切った・・・


 「ロザリオ、退場」

 「なぜだ、鮭とやらは取れたではないか」

 確かにロザリオの一撃で水面付近にいた1匹の鮭が浮き上がってきた。

 3枚に卸されて・・・


 「一閃で3枚に切り分けるとは、よほどの手だれの仕業っすね」

 「ギャギャギャ(この太刀筋、確かどこかで)」

 「ギャギャ(旦那、見覚えがあるのかい?)」


 隠密ゴブリンの小芝居が始まったので、鮭釣りはお開きになった。

 釣り上げた鮭は、1匹だけコアが吸収・分解して、あとは皆で美味しくいただいた。

 残念ながら季節が早いので、イクラは取れなかった。秋に期待しよう。


 変換リスト:食材・料理(淡水魚)

紅鮭 100匹 25DP

鮭の皮 1kg 5DP、鮭フレーク 5kg 10DP、焼き塩鮭 100串 25DP、


 「ご飯が欲しい!」  「めしー」

 DPの推移

現在値:2734 DP

変換:丈夫な木の柵、丈夫な木の床、蔦のロープ -15

変換:丈夫な木の筏 -25

変換:釣り竿セットx6 -90* (釣り針をシェアしたりしないで、各自に1セットにしました)

残り 2604 DP


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