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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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非逆転裁判

 ブウ・フウ・ウウの3兄弟の脅威は去った。

 僕らは戦利品の回収とダンジョンの補修を終えると、コアルームに集合して反省会を行っていた。


 「それで、私はなぜ正座をしなければならないのだろうか?」

 ロザリオが納得いかない顔をして、それでも言いつけられた通りに器用に正座をしている。

 この世界の住人って、正座や土下座に抵抗ないよね。

 「不思議っすね」

 一番、不思議なのはワタリだけどね。


 「ロザリオが正座してるのは、範囲攻撃を受ける可能性のあるエリアに親方を持ち込んだせいです」

 「ああ、なるほど・・・あれは確かに私の失態だな」

 「何か弁明ある?」

 「ないぞ、なぜならあの時はああするしかなかったのだから」

 「親方を安全圏に置いていくという選択はなかったの?」

 「まあ、あれだ。親方は背中の棘に反して、お腹はフカフカでな。手放すなどと・・・思いつきもしなかったな」

 「有罪だね」 「ふかー」 「キュキュ」

 裁判員の判断は、有罪1、情状酌量1、執行猶予1。よって判決は、

 「正座1時間のうえ、執行猶予1週間。その間はモフモフ禁止で」

 ロザリオの顔色が青くなった。

 「ば、馬鹿な。1週間も私は何を支えにして生きていけばいいんだ・・・」

 項垂れるロザリオをスケルトンファイターが両脇から抱えて退場していった。


 「次はケンです」

 「バウ」

 「分かってると思うけど、チョビ達がエンタングルに掛けられたとき、指示を待たずに飛び出したよね?」  「ね」

 「クウーン」

 「結果的にはコアは無事だったけど、最後の護りが離れちゃダメでしょ」  「でしょ」

 「バウ」

 「まあ、同じことを指示する気ではあったけどね」 「ぽむ」 「しょうがないっすよ」

 裁判員の判断は、情状酌量3。よって判決は、

 「次からは気をつけること。無罪」 「ん」

 「「 バウバウ 」」

 ケンより弁護団のチョビ達の方が嬉しそうだ。リーダー慕われてるね。


 「最後はマスターっす」 「ん」

 「え?僕も?」

 「罪状は、DPの出し惜しみっすね」 「めっ」

 「いや、あのね、それには色々な事情が・・・」

 「被告人は許可を取ってから発言するっす」

 「裁判長、意義あり!」

 「却下っす」

 「なんですと」


 「まず、中央ホールでフウ部隊とスケルトン部隊が戦っていたときっす。なぜ4体しか出さなかったっすか?まとめて8体ぐらいにすれば完勝できたっすよね」

 「こっちが完全に優勢になったら、フウは撤退を選択するよね」

 実際に、自分が倒れる時に、部下を逃がすために特技を発動してるよね。あれを最初に発動されてたら、戦力がそのまま移動されるから。

 「なるほどっす。最大防衛力でじりじり削るしかなかったということっすね」

 「無限湧きに見えても、有利な内はなんとかなるんじゃないかと思いたがるのが人のさがだから」


 「次に、武器庫の通路でアイスオークを2体しか呼ばなかったのは、なぜっすか?」

 「ああ、あれね。あれは読み違えたんだよ。前方を冷気耐性の衛兵で塞いだら、範囲呪文が効かない分、侵攻側が不利だから戻ると思ったんだ。りんごの小部屋で次の襲撃をかける手はずだったから」

 「そこをウウに強行突破されたっすね」

 「捨て身だったね。小隊長の傷が治癒呪文で治されたのも想定外だった」

 無理やり突破しようとしたなら、もう1体は削れるとふんだんだけど、小隊長が防御力を上げて、被害を度外視してくるとは思わなかった。隙ができたぶん、何回かは斬ったんだけど、そのダメージを治療されてしまったんだよね。


 「最後に、狂乱バーサーカー灰色羆グリズリーを呼ばなかったのは、なぜっすか?」

 やっぱりそこに気付いていたのか・・・

 「敵に術者がいて範囲攻撃呪文があったとしても、咆哮一発で仕留められたっすよね」

 「だろうね」

 「確かにランク7はコストかかるとは思うっす。でもコアルームに攻撃受けるより百倍マシっすよね?」

 僕も実際に、罠部屋にウウが入った時点で、それを考えたんだ。

 ここで灰色羆を呼べば、労せずして倒せるって。ダンジョンを守るにはそれがベストだって。


 「でも、それじゃ負けなんだよ」

 僕の言葉を皆は真剣に聞いている。

 「灰色羆に襲撃されたとき、僕は撤退を選択したんだ。あのとき偶然に金盥が落ちてこなければ、このダンジョンはリセットされてた」

 今、思い出しても、あの時の悔しさが甦ってくる。

 「あれは本当に偶然で、あの罠もそんな意図であそこに作ったわけじゃない。でも結果的にそれが切っ掛けとなって羆は倒せた。けど、それは僕が成し遂げたわけじゃない」

 「だから灰色羆は召喚できないというわけっすか・・・」


 これは本当に僕のわがままだ。召喚リストにあるんだから使うのはあたりまえで、勝手に縛りを作って危機を呼び込んだりするのは愚者の選択だって思う。

 でも、そのかせは僕がダンジョンマスターである為に必要なものだ。

 ただ獲物を飲み込み、強力な魔物を吐き出すだけの、地下迷宮ダンジョンという名の怪物に成り果てない為に・・・



 「マスターの弁明は聞いたっす」

 え?僕いま割りと良いこと言ったよね?それスルーなんだ。

 「裁判員の判定っす」

 「キュキュ」 「ギュギュ」 「ピュイ」

 「有罪っすね」

 「ちょっと待った!意義ありあり」

 「控訴するっすか?次は軍事法廷っすよ」

 「くっ、欠席裁判で冤罪かけられまくりの予感しかしない」

 「今なら司法取引って手もあるっす」

 「とにかく、裁判員の発言が恣意的に捻じ曲げられてる恐れがあります。正確な翻訳を希望します」

 「いいっすよ。国選弁護人のコアさんお願いするっす」

 「あい」


 「キュキュ(お腹すいた)」

 「ギュギュ(出番少ない)」

 「ピュイ(出番なかった)」

 「待遇の改善1、労働機会均等2、結果は有罪っすね」

 確かにこれだけ聞くとブラック企業みたいだ。


 「司法取引をお願いします・・・」


 このあと、DPの大盤振る舞いをして戦勝パーティーを開催した。

 「羆呼んだ方が安くついたかも」

 「うまー」


DPの推移

現在値:1119 DP

吸収:アイスオークx5 +225

吸収:アイスオーク・イニシエイト +80

吸収:アイスオーク・ドルイド +125

撃退:アイスオークx15 +675

撃退:アイスオークx14 +630* (伝令はダンジョンに侵入していないので)

撃退:イニシエイト、ドルイド +205

撃退:コマンダー、スカウトx2、レンジャー +365*

残り 3424 DP

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