罠があったら食い破る
「怖っ!」 「ぴぴぃ」
「おいらもう夜に1人でトイレに行けないっす」
「それはちゃんと行け」
「ういっす」
あいかわらずキャッチャーの仕事はホラーだったね。
「主殿、決戦を前に味方の士気を下げるのはどうかと思うぞ」
「キュキュ」
「え?これ僕のせい?」
「案山子をプラスしたのは主殿だろう」
確かに、キャッチャーとスケアクロウが、ここまで相性がいいというか、化学反応を起こすとは思わなかったよ。スケアクロウも単なる自動人形じゃなくて、精神攻撃と幻覚をともなったサイコ系の罠だったね。
「まさか私がオークに同情する日が来ようとわな」
ロザリオがしみじみ語っていた。
とにかく、これでライ麦畑の監視者は排除できた。こっちの入り口はコアルームに近いから、余剰戦力が待機されてると不安なんだよね。その意味では案山子は良い仕事をしてくれたよ。
DPもアイスオーク5体と小隊長1体を吸収できたので305のプラスになった。緊急時の召喚がこれでできるね。
さて、突入してきた本隊は・・・
その頃のフウ中隊は
「玄関ホールに敵影なし、ブヒ」
「階段との境に鉄格子が上がってます。ただし昇降器具は見当たらず、ブヒ」
「玄関ホールで魔法戦闘の痕跡あり。旋風刃と思われます、ブヒ」
次々にもたらされる情報を分析していた。
「両扉に罠の形跡は?ブヒィ」
「無いと思われますブヒ」
「よし、もし在ったら腕立て100回な、ブヒィ」
「ブヒヒィ」
さて、地下墓地にしちゃあ、立派すぎる程の造りだが、エルフはこの奥らしいな。鉄格子の昇降装置は、この先にあって、タイミングみて降ろしてからの魔法攻撃か。えぐいことしやがる。
「お前ら、エルフの魔術師がいたら速攻でつぶせ、いいなブヒィ」
「了解でブヒィ」
「よし、開けろ、ブヒィ」
隊員の2人が扉に取り付き、強く押し開けると、左右に退避する。一拍おいて、今度は左右から2人の隊員が飛び出して、通路を確保していった。
十字路の左右を戦斧の反射で確かめると、交差点の床を丹念に調べてから報告してきた。
「この先、十字路には敵影なし、ブヒ。3方向に扉、床に落とし穴の形跡あり、ブヒィ」
「落とし穴の作動は止められそうか?ブヒィ」
「これもトリガーが不明です、ブヒ。どこかで監視していて動作させるタイプかと、ブヒ」
「チッ、やっかいだな。お前ら交差点に立つなよ、ブヒィ」
「大丈夫ブヒ」
「まずいね、この連中プロだ」
「押し込み強盗のっすか」
「似たようなもんかな。盗賊スキル持ってるみたいだし」
先遣隊がホイホイかかった罠を的確に見抜いて、避けている。半数は水牢に落とさないとアップル達に負担がかかりすぎる。でも上の階層も、まだ2小隊が包囲しているから増援も出せないし・・・
「主殿、盗賊に搦め手は効かぬよ。ここは正攻法でいくべきかと」
「力押しってこと?」
「そうではなく、中央を囮にしてからの横撃を進言するが」
なるほど、戦列を縦に伸ばしてそこに奇襲するのか。
「了解、それで行こう。皆も準備いいね?」
「ん」 「ギャギャ」 「グヒィ」 「カタカタ」
「コア、ホールのスケルトンファイターに十字路側の両扉を開かせて」 「ん!」
右か左か迷っていたら、正面の扉が開きやがったぜ。
「くるぞ!ブヒィ」
「了解でブヒィ」
だが、扉が開いただけで何も起きねえし、何も出てこねえ・・・
「誘ってやがるのか?ブヒィ」
目で合図して、隊員の1人を開いた扉の先に送り込んだ。
「広いホールに骸骨戦士が4体、4隅で待機してます、ブヒィ」
骸骨戦士だと。墓守か?広いホールならもっといそうなもんだが、エルフと遣り合って数が減ったのか? 「襲ってくる様子はないんだな?ブヒィ」
「へい、今のとこはブヒ」
「他に出口は?ブヒィ」
「正面奥に同じような両扉があるだけですブヒ」
十中八九、罠だが、その誘いに乗る振りをして食い破るのもありか。
「後ろの奴に枝道歩哨の奴を呼んでこさせろ、ブヒィ。ついでに外で待機しているウウに状況を伝えておけ、あとは奴が勝手に配置を変えるはずだ、ブヒィ」
「ハッ、伝令いきますブヒ」
伝令が4人の歩哨と一緒にもどってきたら、突入だ。
2人を玄関ホールに後方警戒で残して、十字路の3方に1人ずつは置かねえとな。そこに小隊長を混ぜるか。
ホールへの突入は、残った全員でやるとして、手前の扉の確保に2人、弾除けに先行させるのは3人でいいか。そこに小隊長を混ぜる。本体が俺様含めて8人。よし殺れるな。
手早く配置を伝えて、後は十字路警戒の小隊長にまかせた。
伝令と歩哨が合流したので、突入を開始する。
「小枝のフウ、参上!」
「なるほど、小枝と小技を掛けてるのか」
「ギャギャギャ(小技って)・・・」
最近、盗賊スキルを鍛え始めたアサマがいじけていた。
「ギャギョギャ(下っ端よりマシですよ)」
「ギャギャ(確かに)」
「なにげにディスられたっす」
敵は的確な配置で編成を済ませると、5人を後方に残して中央ホールに突入してきた。
骸骨戦士は警戒するに留めて、中央突破を図るようだ。集団の中から2人が入り口の確保で立ち止まり、3人が速度を上げて、先行する形になった。
すばやく奥の扉にとりついた3人が、一気に押し開けると、そこには銀色の骸骨騎士が立ち塞がっていた。
「よく来たな、アイスオーク共。私がエルフの騎士ロザリオだ!」
それを聞いたフウ隊長以下、中隊全員が一斉に叫んだ。
「嘘だ!ブヒィ」
DPの推移
現在値: 363 DP
スキャン:x29 -29
変換:丸盾 x8 -40
設置:スケア・クロウ -150
吸収:アイスオークx5 +225
吸収:アイスオーク・コマンダー +80
残り 449 DP




