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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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北方より愛をこめて

 「麦わらのブウ」と名乗っていたアイスオークの切り込み隊長は、そのトレードマークの麦わら帽子だけを残して、奈落の底へと消えていった。

 「ん?」

 「ミコトから応援要請が来たって?ちょっと水牢に落としすぎたかな」


 水牢に落ちたアイスオーク達は、ほとんどが二つの選択を選ばさられる。戦斧を持ったまま沈むか、手放して泳ごうと努力するかだ。

 武器を手放すことは心情的には難しいはずだ。だが、重量級の戦斧を持ったままでは、浮かぶことはできない。前者を選択した者は、やがて水底で溺死した。

 だが後者を選んでも困難が待ち受けている。

 アイスオークの装備は革鎧だが、それなりに重量がある為に、必死に泳がないと浮き上がれないのだ。

 死に物狂いで水を掻く戦士のもとに、白い死神達が音もなく近寄ってきた。

 ミコトとカティだ。

 水面に顔を出すことしか意識にない戦士の両足に絡みつくと、勢い良く反対の水底の方に泳ぎだす。

 「ブギャップブギャップ」

 アイスオークにとっては、水牢で溺死した怨霊に引きずり込まれてるとしか思えない状況だ。助けを求める声を上げたときに、彼の命運が尽きた。なけなしの空気が肺から漏れて、代わりに冷たい水が流れ込んでくる。

 「ゴボッゴボッゴボッ」

 やがて水を掻く腕が力なく垂れ下がり、そのまま2匹に牽かれて水底に沈んでいった。


 落下したときに偶然、武器を取り落とした戦士もいた。

 幸運な彼は、着水したときも重りがないのでたいして沈まずにすみ、すぐに水面に浮かび上がれた。

 立ち泳ぎをしながら周囲を見渡すが、水から上がれそうな場所は見当たらない。このまま仲間の救助を待とうかと考えていると、前方に波紋が見えた。

 何かが水面下をこちらに接近している・・・

 武器は無い。しかも不自由な水中戦闘では逃げ出すこともできない。固唾を呑んで敵が姿を現すのを睨み付けていた戦士は、いきなり後頭部に激痛を感じて振り返った。

 敵は2匹だったのだ。

 正面から囮のクロコがゆっくり近づき、背後からグレコが奇襲する。さらに後ろのグレコに気をとられた戦士に、正面からクロコが噛み付いた。

 水面がアイスオークの血で染まり、やがて戦士は動かなくなって水底に沈んでいった。


 だが2組の連携も、落ちてくるアイスオークが増えてくると手が足りなくなってきた。しかも最後に落ちてきた隊長らしき戦士は、バタフライで泳ぎながら、素手で殴りかかってくる。

 ミコトは呆れて、マスターに応援を要請した。


 「というわけでコア、フロストエレクトリックイールのメイを水牢に召喚して」 「ん」


 新たに召喚されたメイは、水中を気づかれないように接近すると、水面にいる戦士達に電撃を飛ばした。

 バリバリバリバリ  「「ピギャアアア」」

 直撃を受けた戦士達は、既に重症を負っていたものは電撃のダメージで事切れ、そうでなくとも麻痺したまま沈んでいった。


 「どうやら全滅させたみたいだね」 「ん」

 コアが先遣隊18名の吸収を終わったことを報告してくれた。ランク3の兵士が15名、ランク4の小隊長が2名、麦わらのブウはランク5だったらしい。

 全部で撃退・吸収合わせて1920DPになった・・・


 「え?まじ?なにそれ」 「あゎ」

 「えらいこっちゃす、えらいこっちゃす」

 「・・・いや主殿、何をそんなに慌てているのかな?」

 「何って、DPだよDP」 「ぴぃ」

 「1個中隊規模の軍勢を撃破したのだから、それぐらい当然であろうに」

 「いやいやいや、世の中そんな旨い話はあるはずないって」 「って」

 「貧乏暮らしが長かったっすからねえ」

 「・・・不憫な・・・」



 その後、3回見直して、さらにコールセンターに確認しようとした所をロザリオに止められた。どうやら現在のDPが2000を越えているのは間違いではないらしい。

 「夢落ちかも知れないから、覚める前に使ってしまおう」 「おぅ」

 「ダメだ、この主従は大金が手に入ると、落ち着かなくなって浪費するタイプだ」

 「あきらめるっす」


 失礼な。これでも纏まったポイントが手に入ったら優先的に設置しようと思ってた施設があるのを思い出しただけです。

 「コア、遺跡に下る階段の途中に左に分かれる枝道の通路を9m拡張して」 「ん」

 「その先に9mx9mx3mの部屋を拡張して、その中に癒しの泉を設置」 「・・ん」

 「さらにその泉の側に癒しのハーブ畑を設置」 「ん」

 「アップルチームはできあがった泉の水を飲んで、怪我を治して」

 「ん」 「ギャギャ(ありがとうございます)」

 これで一気に1785DP消費したけど、後悔はしていない・・・ちょっとしか。

 今までは回復をリンゴだけに頼っていたけど、あれは1日に3個しか収穫できないから、負傷者が増えると対応しきれなくなるからね。これからさらに戦闘が厳しくなる事を考えれば、無駄な投資にはならないはずだよ。

 ハーブ畑は、癒しの泉が一人に対しては、1日1回の効果しか発揮しないので、そのカバーの役目が一つ。あとはかなり先の展望だけど、きっと役に立ってくれるはず。


 「そういえば主殿、精霊の泉は造らないのか?」

 「なにそれ?妖精の泉ならリストで見た気がするけど」

 「妖精の泉は妖精が集まりやすく、精霊の泉は精霊が宿りやすいのだ」

 「へー、エルフの森には沢山あったの?」

 「うむ、妖精は気まぐれだし、当りハズレが大きいのであまり勧められないのだが、精霊なら大抵は契約した上で役立ってくれるぞ。治癒精霊などがお勧めだ」

 「すごい良さげなんだけど、コア、リストにある?」  「・・ん」


 設置リスト:精霊の泉

低級精霊の泉 ランク5までの精霊が宿る  1000DP

中級精霊の泉 ランク9までの精霊が宿る  3000DP

上級精霊の泉 ランク13までの精霊が宿る 5000DP


 うわ、さすが精霊様だね。将来の楽しみに取っておこう。

 「精霊の泉は今はちょっと無理みたいだ。妖精の当りってどんな感じ?」

 「大人しくて、呪文をつかって援助してくれる妖精かな。はずれはいたずらばかり仕掛けてくるぞ」

 「なるほど、妖精っぽいね」

 ロザリオは指の先でクルクル回していた麦藁帽子を、投げてよこした。

 「戦利品だ、主殿に進呈しよう」

 「ロザリオが被れば?」

 「内側に刺繍がしてあってな。「ブウちゃんへ、トンコより」とか縫い取られているのを被る気にはなれんよ」

 「僕だってやだよ!」

 「はははは」

 


DPの推移

現在値:478 DP

召喚:スケルトンファイターx4 (ホールの衛兵) -160

召喚:フロストEイール (メイ) -90

撃退・吸収:アイスオークx15 +1350

     :アイスオーク・コマンダーx2 +320

     :アイスオーク・キャプテン +250

拡張:通路x1 部屋x1 -35

設置:癒しの泉 -1000

設置:ハーブの畑 -750

残り 363 DP


  召喚リストその23

 アイスオーク:氷豚人

種族:亜人 召喚ランク3 召喚コスト90

HP18 MP6 攻撃力4(+武器修正) 防御力3(+防具修正)

技能:斧、冷気耐性、両手斧

特技:アイス・シャープ(氷鋭刃)

備考:氷鋭刃 使用MP3 命中+15% +冷気3ダメージ


 その24

 アイスオーク・コマンダー:氷豚人 戦士長

種族:亜人 召喚ランク4 召喚コスト160

HP24 MP8 攻撃力5(+武器修正) 防御力4(+防具修正)

技能:斧、冷気耐性、両手斧、部隊指揮

特技:アイス・シャープ、アイス・シールド(氷盾)

備考:氷盾 使用MP4 防御力+4 近接した敵に冷気5ダメージ


  その25

 アイスオーク・キャプテン:氷豚人 軍隊長

種族:亜人 召喚ランク5 召喚コスト250

HP30 MP10 攻撃力7(+武器修正) 防御力6(+防具修正)

技能:斧、冷気耐性、両手斧、部隊指揮、軍隊指揮

特技:アイス・シャープ、アイス・シールド

備考:軍隊指揮は指揮下の全員に命中+5%、回避+5%


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