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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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クロコダイルの

 ヨーク男爵の秘密の館の地下には、主も知らなかった巨大な地底湖が存在した。

 水牢の底には、その地底湖に繋がる2つの横穴がある。片方はかなり長い距離を進まなければ、水中から脱出できない為に、そちらを進んだ者は全て溺死することになった。

 だが、反対側に活路を求めた者は、程なく呼吸のできる洞窟にたどり着くことができた。それが幸運であったかは、甚だ疑問であったが。

 なぜならそこは広い地下洞窟ではあったが、今来た水中路以外に出口がなかったからである。

 ここにたどり着いた者は、つかの間の生を喜び、そして飢餓に絶望した。

 なまじ水がある為に、その苦痛は長引き、頑強な者は1ヶ月以上も水だけで生き延びたという。

 やがて動く気力もなくなり、静かに目を閉じて長い眠りについた・・・カノ者に呼び起こされるまでは。


 「オークックックッ、咄嗟に魔法の壷のことを思い出して魂を避難させることができたでブヒィ」

 オーク帝国の亡霊が逃げ延びていた。

 「悪魔と契約して得た、不老不死とサービス券は失ったが、アンデッドを使役する能力は健在だブヒィ。この力で、必ずやあの女騎士に例のセリフを吐かせてみせるブヒィ」

 魔法の壷の中から隣に佇む黒いローブ姿の術者に指示をだすと、それが人ならざる言葉を紡ぎ、やがて周囲の白骨死体が動き出した。

 「ウィスパーゴーストの到達範囲に、帝国の末裔が居住していて良かったでブヒィ」

 どうやらアイスオークの族長の夢枕に立ったのは、元男爵が送り込んだささやく亡霊だったようだ。

 「地上からアイスオークの軍団、地底からスケルトンの軍団が同時に攻めれば、奴らも袋のエルフだブヒィ」

 スケルトンは軍団というほど、数が揃っていないし、地上のアイスオークとは行軍速度の関係で、いまいち連携がとれていないことなど、気にもしない元男爵の亡霊であった。



「ピュイイイイイ」

 ミコトの必殺技が水底に炸裂した。

 放電された雷撃は、伝導体である水を伝わり、地上より広範囲に効果が伝播する。

 3体のスケルトンを巻き込んだが、それだけで倒すには至らなかった。さらに麻痺の効果が効きづらいようにも見える。あとひと押しが必要だ。ミコトは無謀だが体当たりを狙った。

 水中では移動を阻害されるスケルトン達の動きは鈍い。先制攻撃で1体を破壊することに成功したが、反撃で一太刀浴びてしまった。

 次々に押し寄せるスケルトンに、ミコトは死を覚悟した。

 一体でも多く道連れにする。そう心を決めたミコトの前に、見慣れぬ魚影が割り込んできた。

 

 「クロコ、前方のスケルトンにブレスだ!」 「ん」 「シャアー!」

 ホワイトリザードのクロコが冷気の吐息を吹き出す。

 すでにミコトの電撃で重傷だった2体のスケルトンは、止めを刺されて砕けていった。

 「ミコトは後方のスケルトン3体に電撃!」 「ん」 「ピュイ!」

 「続けてクロコが前進して今の3体にブレス!」 「ん」 「シャアーーー!!」

 動きの鈍い水中での範囲攻撃コンボに、5体のスケルトンが成すすべもなく轟沈した。


 「コア、破壊したスケルトンファイターを吸収、フロストエレクトリックイールのカティを召喚」 「ん」

 「カティはミコトと交代して、前方の警戒を。クロコは一旦、息継ぎに水面に移動」

 「ん」 「「ピュイ」」  「シャー」

 

 なんとか防ぎきったかな。

 まさか水牢の先に、あんな剣呑な奴らが住み着いているとは思わなかったよ。領域化に置けない範囲をもっと慎重に調査しとくべきだったね。水中戦力を増強するまで後回しにしたツケが、今ここで回ってきたということか。


 「きた」 「お代わりってことか」

 ミコトとクロコのMPはもう空だ。カティの範囲攻撃だけだと倒すには至らない。でもミコト達の中で接近戦ができるのはクロコだけだし・・・

 「主殿、私が行こう」

 「ロザリオ?そうか、君なら息継ぎは要らないか」

 「そういうことだ、騎士ロザリオ、出る!」

 十字路の穴を豪快に滑り降り、着水すると同時に、鎧の重さで沈んでいった。

 「でも、戻るときどうするの?」 「ん~~?」

 「忘れていたああああ」

 ブクブクブク・・・


 

 その頃、地上では、アイスオークの先遣隊が進軍していた。

 先鋒を任されたのは、切り込み隊長の「麦わらのブウ」

 トレードマークは頭に被った麦わら帽子だ。海が遠いので海賊ではないが。

 「女エルフの騎士など、我が部隊で十分だ。後詰などいらんブヒィ」

 確かに、先遣隊は3個小隊18名で構成されており、小さなスノーゴブリンの部族なら、単独で蹂躙できる実力を持っていたし、それだけの功績もあげていた。歴戦の隊員は士気も高い。

 「ブウ隊長はいつにも増して張り切っているブヒィ」

 「勇猛果敢な隊長の証が、あの「当たらなければ兜なぞ飾りよ」の名言を生んだ麦わら帽子だブヒ」

 「俺は家が貧乏で、兜まで買い揃えられなかった母親を慰める為に「これで十分」って言ったって聞いたブヒィ」

 「おいらは賭博の負け分が払えなくて売り払ったって聞いたんだけどブヒ」

 「詐欺師に騙されて兜と交換したって・・・」

 「前カノにオシャレっておだてられて、それ以来・・・」

 「風水士がラッキーアイテムは麦わら帽子だって・・・」

 ざわめく隊員を小隊長が諌める。

 「お前ら、たるんでると、駆け足させるぞブヒィイ」

 「「ブヒィっす」」


 ちなみに噂の中に正解があったりする。

 

DPの推移

現在値: 113 DP

召喚:ホワイトリザード -90

吸収:スケルトンファイターx6 +120

召喚:フロストエレクトリックイール -90

残り 53 DP


 召喚リストその22

 スケルトン・ファイター:骸骨戦士

種族:アンデッド(死霊) 召喚ランク2 召喚コスト40

HP10 MP2 攻撃力2(錆びた剣+4) 防御力1(錆びた鎧+3)

技能:剣、盾、死霊属性(中)、火炎脆弱、刺突半減

特技:無し

備考:死霊属性 恐怖、毒、病気に対する抵抗(中) 闇親和 光惰弱

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