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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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レミングの死の行進

 探検隊の遺跡調査は継続中。

 兵士の休息所らしき場所には、装備品の他に、兵士個人の所有物らしき雑貨が散乱していたが、ほとんどが朽ち果てていた。

 「使えそうな物はないっすね」

 ワタリが埃まみれになって休息所からでてきた。

 「よし、先に進もう」


 兵士待機所の左の扉を開けようと近づくと、背負袋の中から親方の鳴き声が聞こえた。

 「キューキュー」

 「ん?どうかした?」

 「キュキュ」

 「この先に何かいるの?」

 「キュ」

 親方のアースソナーに反応があったらしい。アースソナーは地中の音や微細な振動を探知する能力だ。それはダンジョンや遺跡でも活躍できる。まったく動かない相手だと反応しないみたいだけど。


 「数はわかる?」

 「キュー、キュー、キュー・・・」

 指を折って数えようとしてるけど、両手でも足りないらしい。

 「いっぱいいるのか」

 「どうするっすか」

 待機所の3つある片扉を見比べてみる。やってみる価値はあるかな・・・

 「十字路までもどろう。試してみたい事があるから」


 十字路の出口の方に全員が揃ったのを確認してから、正面の両扉に向かって水袋を投げつけてみる。

 ドサッ カチッ カパッ

 予想通りに扉に水袋が当たったと同時に、交差点の床が3mx3mの広いサイズで落とし穴になった。

 バタンッ バタンッ バタンッ

 さらに連動して兵士待機所にある3つの片扉が全部開いた。

 「さすがっすね、兵士を呼び込む罠も酷いっすけど、それを見破るマスターも」

 「さっき休憩所の扉を開けた時の反応が、なんか変だったんだよね。1体ぐらい素手でも襲ってくるはずなのに、3体ともまず装備を取りに行ったから。だから扉が開いたら、敵襲の合図だから装備を整えてから迎撃しろっていう段取りなのかなと」

 休憩所の反対側が何の部屋かわからないから、そっちも開くかは賭けだったんだけどね。3つともまったく同じ扉だったから、罠で開くなら3箇所同時と予想したら当たりだったみたいだ。

 「さて、なにが来るのかな」


 巨大ネズミの集団でした。


 「「うおおおおお」」

 目の前で、黒い奔流と化した巨大ネズミの集団が、次々に現れては落とし穴に落ちていく。

 ただ、何匹かに1匹は、斜めにジャンプしてこちらの通路に飛び込んできた。

 「松明で叩き落として!ケン達は後方で待機で。直接触るとやばそうだ!」

 巨大ネズミは身体が腐り落ちたゾンビだったのだ。

 頬肉がこそげ落ちて、顎の骨が見えている奴や、片目がでろんと垂れ下がっている様なのもいる。

 「さすがにTS細胞とかでゾンビ化してるわけないけど、ネズミはもともと感染症の保菌者の可能性があるからね。アンデッドになって体中に菌が繁殖してたらやばいよ」

 「伝染されたらどうなるっすか?」

 「満月の夜にネズミ男になる」

 「ビビビっす」


 30体以上を穴に送り込んだころ、やっと巨大ネズミが途切れた。その頃には松明を振り回し続けた腕が棒のように凝り固まっていた。

 「なんとか撃退したね」

 「ギャギャ(すごい数でした)」

 「落とし穴が底なしで良かったよ。下手するとネズミで溢れかえっていたかも」

 交差点の落とし穴は、6mぐらい下で急角度のスロープになっていて、落ちたネズミはどこかに消えていた。

 「串刺しでなく、スロープで生きたままどこかに誘導して捕獲かー」

 ここの所有者の性格が知れるね。

 「不殺ころさずの誓いでも立ててるっすかね?」

 「そんな逆刃刀を持った浪人ほど高尚な人物じゃないよ。逆にひと思いに殺してくれた方が楽ってタイプだね」

 「とほほ」


 しばらく待ってみたけど、ネズミの新手は来ないし、罠がリセットされる様子もなかった。

 「んー、この罠は手動で再稼働させるのかな?だとするとダンジョンマスターはいないね」

 「それだけでも安心っす」

 確かにダンジョンバトルでもないのに、他人のダンジョンに潜るのは勘弁して欲しいかな。

 開きっぱなしの落とし穴を渡るのに道具が必要だから、一度上に戻ろう。



 「ただいま」 

 「あぃ」 「ギャギャ(ご無事で)」

 階段の横穴で心配そうに待っていたコア達に元気な顔を見せる。

 「ここは、多分、悪趣味な貴族の隠れ家だったみたいだ」

 「ほー」

 「スケルトンとゾンビ・ジャイアントラットが襲ってきたから、死霊使いの類が操っているのかも」

 「るぅ?」

 「いや、ダンジョンマスターはいないね。罠が自動復帰しないし、モンスターも統制されてない」

 現状で判明している事を全て伝えると、第二次アタックに備えて用具の準備をする。


 「コア、蔦のロープを2本変換して。あとこの場でいいから丈夫な木の床を1つ設置して」

 「ん」

 ロープは非常用だ。あの罠に落ちたら簡単には救出できないだろうけど、用意はしておこう。

 木の床は幅50cm、長さ3mの板にバラして持っていく。2枚を並べて斜めに渡せば、普通に渡れるはず。消耗した松明を補充して、あとランタン用油も持っていこう。

 

 油は探したら在庫がほとんどなかったので、コアに分解・変換してもらった。


 変換リスト(燃料)

ランタン用油 1ビンで6時間x12本 10DP


 結構高いね。器のガラスが高いのかな。火炎瓶代わりにホイホイ使ってると、赤字だね。でもまあ、アンデッド対策だから全部もっていこう。

 準備ができたところで、再度挑戦だ。



 十字路まで戻ったけど、ネズミが落とし穴をよじ登ってくる気配はない。開きっぱなしの床の穴に、丈夫な木の板を渡して、順番に渡る。

 兵士の待機所の3つの扉も開いたままで、床に散乱する白骨死体も、少し蹴散らされているが、さっきと同じ位置に倒れている。

 左手の部屋は食堂らしく、中央に大きな長方形の木製テーブルがあったようだが、今はその残骸だけが残っている。周囲にあったはずの幾つもの椅子は、原型を止めないぐらい、削られてしまったようだ。

 部屋は9mx9mx3mの普通の大きさで、奥にもう一つ木製の片扉が見えるが、無残に食い破られていて、先に小部屋がある事だけ見て取れた。この中に30匹以上のゾンビラットがひしめいていたかと思うと、ちょっと中に入って探索しようという気が失せた。

 「親方、この奥に何かいる?」

 「キュキュ」

 「動くものはいないそうだから、こっちはもういいかな」

 「ボロボロのグチャグチャっす」

 おっかなびっくり食堂を覗き込んだワタリが、嫌そうに首を振った。

 戻ろうとしたとき、アズサが床の白骨死体を見て、ぽつりとつぶやいた。

 「ギャギャッギャ、ギョギャ(これって骸骨兵士の死体扱いなのでは)」

 「「それだ!」」


 急いで軍曹でかき集めて、予備の板の上に乗せて、えっちら階段の横穴まで運んだ。

 「コア、これ吸収できる?!」   「・・・ん!」

 ラッキー! コアによるとランク2相当だったらしく、休息所の3体も含めて、6体で120DPになった。まいどー。


 次は十字路を左手に進むことにした。やはり木の板の橋を架けて、慎重に渡る。

 「こっちも兵士がいるっすかね?」

 「いや、正面両扉の罠に連動してなかったから、違うと思うよ」

 アサマが一応、罠の有無を調べてから、ゆっくりと押し開ける。


 そこは、拷問部屋だった・・・




DPの推移

現在値:175 DP

変換:蔦のロープx2 -10

設置:丈夫な木の床  -5

変換:ランタン用の油 -10

吸収:スケルトン・ファイターx6 +120

残り 270 DP

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