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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第2章 女帝編
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こんな失敗作を残すわけには

 「おはよう」 「よぅ」

 コアルームで目を覚ましたら、コアが円卓の上から顔を出していたので、まずは朝の挨拶から。

 「寝てる間に何かあった?」 「ん」

 日没直前にヘラジカがもう1頭、「キャッチャー」に捕らわれたらしい。五郎〇チームとシナノが起こされて、処理をしてくれたそうだ。

 捕獲は順調だけど、このままだと周辺のヘラジカが絶滅しないかと心配したんだけれど、それは杞憂らしい。ワタリの話だと、「凍った槍」の部族では3つの狩猟隊が手分けして毎日何かしらの獲物を2頭は仕留めていたそうだ。40人近い部族を養うにはそれぐらい必要で、それで近辺からヘラジカなどの野生動物がいなくなることはなかったという。

 まあ、同じ場所で狩りを続けると、警戒してしばらくは寄り付かなくなることはあるけど、餌場や水場だといつの間にか戻ってくるのだと言う。

 ライ麦はこの辺りでは珍しいし、味も栄養も野生種より上だから、しばらくは来店客が途切れることは無さそうだ。リピーターはいないけどね。


 顔を洗いに水場に向かう。

 そういえばミコトには麦わらはあげなかったけど、水の中だと必要ないよね。今度なにか別の物をみつくろってあげないと。

 水場についたらケン達が先にきて水浴びをしていた。僕もまじって顔を洗ったんだけど、全身びしょ濡れのケンが不思議な事をしていた。

 淵の浅瀬で、4本の足の先だけ水につけると、前足で軽く水面を2度叩いている。その瞬間、水中から青白い火花が飛び散り、ケンは全身を痙攣させた。

 「え?ミコト?」 「ピュイ」

 水面に顔を出したミコトが何事も無かったように返事をしてきた。ケンを見ると、どうやら電撃は意図的に弱めてあったらしく、なにやらミコトにうなずくと、淵から離れていった。

 ケンの居た場所を良く見ると、水面にいっぱいダニとノミの死骸が浮いている。

 「低周波ノミ獲り器かよ!」

 「バウ」

 後ろをみると、チョビ達が順番待ちをしていた・・・


 

 さて、今日は陶芸をしてみよう。

 アズサ達に声を掛けたら、コマンド隊が全員、興味を示して参加するという。人数が多いから、竈も作ってしまおう。

 まずは日干しレンガを作る。

 作業場に決めた部屋の壁も粘土質が露出しているので、そこを軍曹と鶴嘴つるはしで四角に掘りぬく。掘った粘土質の土に、少しずつ水を混ぜて練りこみ、コシがでたら直方体に形を整えて、掘り抜いた空間に並べる。

 「コア、この空間だけ、温度35℃、湿度5%以下にして」 「ん」

 作業場がこの環境になると脱水症状を起こすから、乾燥部屋として壁を掘り抜いたわけ。

 レンガが乾燥するまでの時間を使って、素焼きにする土器をつくっておこう。


 先ほどと同じように粘土質の土を捏ねて、適当な硬さにしたら、板の上で転がして短いロープ上にする。

うつわの底の部分は、ロープ状の粘土を中心から渦を巻くように巻き付けて、上下から板で圧迫して平らにすると、円形の平底になる。

 この上に外周を積み上げるようにロープ状粘土を巻き上げていくと、簡単なマグカップができるらしいけど、たいていは途中でへにゃる。ここに陶芸職人の技術が生かされるわけだけど、素人の僕らは少し楽な方法を使わせてもらう。

 昨日、飲み明かしたビールの紙コップに、潰さないように慎重に粘土を巻き付けていく。それを平底の上に密着させるように立てれば、できあがりである。これを乾燥室で乾燥させてから、窯で焼き上げれば素焼きの土器の完成だ。

 たぶん、めちゃめちゃ焼き割れを起こすだろうから、10個ほど予備で作る。ついでに皿も作っておこう。

 皿は簡単で、板の上に麺伸し棒の代わりの槍で粘土を伸ばし、外周にふちとしてロープ状の粘土を一周させればできあがりだ。高台つきの深皿とか素人には無理なので、平皿で勘弁してもらう。これも10枚は必要かな?


 そうこうするうちにレンガが乾いたので、乾燥室から取り出して、代わりに土器を入れて乾かす。

 レンガは、まず敷石として窯の大きさに合わせて敷き詰める。今回はレンガの個数が少ないので小さめで。その外周に壁を積み上げるようにレンガを並べていく。漆喰は粘土で代用しておく。


 天井部分を作るのに何度か失敗して、ジェンガのように崩れたりもしたけれど、僕は元気です。

 できあがったミニ簡易窯に麦わらを少しくべてみる。煙が焚口以外からは漏れないので、合格にしときます。ではこれを

 「コア、分解して」  「ん」


 変換リスト(陶芸)

簡易窯 1mx1mx1m 煉瓦製 25DP


 おっと、少し大きくなった分、コストもそれなりだね。

 「コア、簡易窯を部屋の隅に設置して」 「ん」

 設置された窯は簡易といっても中は2段に区切られていて、焚口を塞ぐ煉瓦蓋も付属していた。乾燥させた土器を並べて、薪に火をつける。窯の中が熱くなったら煉瓦蓋で焚口を塞いで余熱でじっくり焼く。

 「本当なら3日三晩弱火でコトコト焼くんですが、今はこちらに出来上がりがあります」

 「ADが用意したっすね」

 そう言いつつ火の消えた窯から土器を取り出す。

 「それさっき入れたばっかりの奴っすよね?」

 「火が通っていれば問題ありません」

 「3日間弱火で・・・」

 「問題ありません!」

 火加減や焼き時間を適当にした結果、割れたりヒビが入ったりしなかったのは2割に届かなかった。

 「それでもカップが1個に皿が2枚残ったから上出来だよ。カップはアズサので、皿はアサマとシナノのかな?」 

 「「「ギャギャギャ(やった)」」」

 「おいらのカップも残ってるっすよ」

 ワタリが指差したカップに水を注ぐと、底から勢い良く吹き出した。

 「の、飲み口を底に作ったっす・・」

 「斬新だね」

 「ですかね」


 完成した3個をまとめてコアに分解してもらう。


 変換リスト(食器)

素焼きの土器のセット カップ、平皿(2枚) 5DP


 試しに1セット変換してもらったら、形や焼きは職人の技だけど、作り手を見分ける為につけておいたマークは、そのままそれぞれに窯印として刻まれていた。

 「ずるいっす、おいらも自分印の食器が欲しいっす」

 自慢げにそれぞれの食器を見せ合う3人に触発されたワタリが抗議してくる。

 「しょうがないなー、もう粘土がないから自分で掘り出してつくるなら、あとで焼いてあげるよ」

 「ういっす、がんばるっすよ」

 そういって軍曹を片手にワタリは、作業部屋をうろうろしだした。

 「良い土器は良い土からっす」

 壁をにらんでは、少し削って舐めたりしている。それで土の良し悪しがわかるのは匠だけだ。


 「ここの土が良さそうっす」

 ワタリが部屋の奥の壁を掘り始めた。まあ、あそこならあとで通路にしてもいいかな・・・

 「出たっす!」  「ふぇ~」

 「え、何が?」

 「「ほね」」

 ワタリとコアの声が重なった。

DPの推移

現在値: 115 DP

撃退及び吸収:ヘラジカ +90

変換:簡易窯 -25

変換:土器セット -5

残り 175 DP

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