表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
476/478

空に向けてダイブ!

 「ガボガボッ(相棒、こりゃ、無茶苦茶だぜ)」

 「ガガボッ(余所見していると、振り落とされるぞ・・)」


 スタッチとハスキーは、激しい水流の中を、アイスドレイクの背中に掴まりながら運ばれていた。

 呼吸は、ルカと名乗った水の精霊が付与してくれた呪文で、水中でも問題ないが、地下通路なのか地下水路なのかわからない狭い道を、高速で流されていくのは恐怖であった・・

 

 「ガボガボ(ギャギャ『右前方に落石!』)」

 「ガボッ(左に避けろ、ジャー)」

 「「シャーシャー!」」

 

 通路といっても、太さも違えば、崩れた岩なども転がっており、その度に隊形を調節する必要もあった。

 目の良いゴブリンチームが斥侯となり、前方の障害を指揮官のベニジャに伝える事で、次々に現れる難所を潜り抜けていく・・


 「いくらルートが限られてるとは言え、こんな危険だとは聞いてねえぜ・・」

 「コアちゃんが選んだのだから、他に選択支がないんです、きっと。文句ばかり言ってないで、しっかり水流をコントロールしなさい!」

 「わかってるって、そんなに怒るなよ・・ちゃんとやってるだろ?俺も・・」

 「・・今のとこはですけどね・・」


 隊列の最後尾で、アイスドレイクに乗った精霊の夫婦が、水中でも普通に会話をしていた。

 さすが、腐っても水の精霊である・・


 「オペレーション・スプラッシュ・マウンテン」とは、地下通路を、水泡で包んだ部隊を高速の水流で押し流すという作戦である。

 夫のノヴォが水流を操作し、妻のルカが水泡を維持する。

 移動する水泡の中に、水流を操作するノヴォが取り込まれているので、MPと集中力が維持される限り、どこまでも進めるはずである・・・理論的には・・


 問題は、地下通路に障害物があると、衝突の危険がある事と、水流を維持するのに大量の水と、それが流れる通路が必要な所にあった。

 部隊を包んでいるのは、水の塊なので、岩などに衝突すれば壊れてしまう。

 勿論、すぐに再構成出来るが、中にいるメンバーに衝撃が伝わったり、悪くすれば岩に激突する事もある。それを回避するために、絶えず位置を変える必要があった。


 さらに、目的のコアルームに到達するには、大空洞の天井に開いた、エンシェント・フロストワームの抜け穴を辿る必要があった。

 大空洞を水泡のまま登ることは事実上不可能なので、他のルートを使って高度を稼ぐ・・



 「ガガボッ!(ギャギャ『前方に開口部!』)」

 「ガボッ!(大空洞に出るぜ、ビビるなよ!ジャーー)」

 「あんた!」

 「任せろ!!」


 ルカが、部隊を包む水泡から、余分な水を切り捨てて、限界まで重量を減らした。 

 ノヴォが、ここまで運んで来た水流を、さらに加速させて、斜め上を向いた通路から、水泡を打ち出すように押し流した・・


 「ガボガボッ!(馬鹿野郎!落ちたら死ぬ高さだぞ)」

 「ガボッ(まずい、ギリギリ届かないぞ・・)」

 スタッチは、足元に広がる大空洞の深さに怯え、ハスキーは、前方上方のワームの抜け穴を見据えていた。


 「ガボッ!!(モンモンチーム、出番だぜ、ジャー!!)」

 「「ケロケロ!!」」

 前方に展開していた大蛙4体が、一斉に水泡を突き破って、舌を伸ばした。

 4本の舌は、大洞窟の天井に張り付くと、無理矢理に水泡の軌道を変えた。


 「ガボボッ!(ルカ!頼んだぜ、ジャジャ!)」

 「はい、はーい」

 水泡の先端が、ワームの抜け穴の壁面に接触すると、ルカが、水泡の水を操作して、内部のメンバーを引き上げる事に成功した・・



 「ちょっと、急に吐き出さないでよね」

 「危うく、水泡から弾き出されるところだったさね・・」

 大蛙の口に搭乗していたビビアンとソニアは、快適なシートから放り出されて、文句を言っていた。

 アイスドレイクにしがみ付いて、振り回されていたメンバーと違い、口内に人を乗せて運ぶのに慣れた、大蛙潜水艇は、揺れも少なく、乗り心地は悪くないらしい・・

 ただし、シートベルトの代わりの舌を自由に動かすには、搭乗者を吐き出す必要があった。


 「こっちは死ぬ思いだったんだぜ・・」

 「まあ、無事に着いたので、良しとしよう・・」

 スタッチは愚痴を零すが、ハスキーは、全員が無事に目的の抜け穴まで辿り着けた事を喜んだ。


 「ルカ、水泡はまた造れるのか?ジャー」

 「皆を囲むと、移動する為の水流は造れないかもです~」

 抜け穴にも、若干だが湖水が溜まっているが、メンバー全員を運ぶには水量が足りない・・


 「ここからは1本道なのだろ?先発部隊だけ水流で送って、残りは走れば良い・・」

 「だな、俺ももうあれは勘弁だぜ・・」

 ハスキーとスタッチが、あぶれたメンバーは走れば良いと提案した。


 「そうね、纏まっていると、範囲攻撃呪文で被害が出すぎるかも・・ここは二手に別れるべきね」

 ビビアンの意見に殆どのメンバーが頷いた。



 残った水量から、水泡に入れるのは大蛙2体ほどである。

 アイスドレイクに乗った精霊夫婦は必須なので、それ以外の容量は少なかった。


 敵が蟲使いであることを考慮して、先発隊は火炎魔法の専門家が選抜された。

 ビビアンとバーサーカーである・・


 「行ってくるわね」

 「ああ、俺たちも直ぐに追いつく・・」

 大蛙の口内に乗り込むビビアンを、ハスキーが心配そうに見つめていた。


 「・・ビビアンは護る・・」

 「そうか、頼んだぞ・・」

 そんなハスキーにバーサーカーが声を掛けた。

 見かけは2mを超える巨体だが、その実はソーサラーである・・どう護る気なのかは疑問だったが、それでもハスキーはバーサーカーに託した。


 「ルカ、二人を送り込んだら、オババの確保を頼んだぜ、ジャー」

 「はい、はーい、やってみますよ~」


 「準備いいか?なら出すぜ」

 ノヴォの掛け声で、再び水泡が形成され、残った水に押し流されるように移動していった・・


 

 「さあ、こっちも走るぜ、ジャー!」

 「「 おう!! 」」

 「「シャーシャー!」」 

 「「ケロロ!!」」


 後続部隊も、一斉に走り始めた・・・コアルームに向けて・・・



   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ