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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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新しき守護者

これから先の展開で、かなり悩みました。更新が飛び飛びになって申し訳ございませんでした。

少しアクセルを踏みます。今晩、もう1話、更新する予定です。

  凍結湖、青水晶の間にて


 「ニコ、ニコ、グドンをたしゅけてくだしゃい・・」

 「ちょっと、腕が千切れてるじゃない!大丈夫なの?」

 「ヒィヒィン・・」

 「おっかああ、俺、頑張ったから、許してくれーー」

 「おい、半魚人のおっさん、こっちの水はまだ押さえておいてくれよな」

 「今はグドンさんの治療が先です、アナタはそのまま逆流の法を・・」

 「大蛙とドレイク・・暴れださないだろうな?ウガッ・・」

 「ビビアンの連れている、精霊の同盟者達だ。ゲスト認定されているし、戦力としても信頼できる・・」

 「アタシらも手玉に取られた口さね・・」

 「ギャギャ(地上班のメンバーが少し足りませんが・・)」

 「ケロケロっす・・」

 「ギャギャ(まずい・・ワタリが蛙に汚染されている)」

 「ギャギャギャ(これがストックホルム症候群ってやつか・・)」


 現場は混乱しているようだ・・



 重傷のグドンを治療する為に、ニコを探していたベニジャ達一行は、無事にビビアン達に合流することが出来た。

 途中でヴォジャノーイのノヴォが逆流させていた水の壁に阻まれたが、ルサールカのルカがその水壁にトンネルを開ける事で、道を開いたのである。

 通常ならば、位階の高いヴォジャノーイのコントロール下にある水流に、ルサールカが干渉出来ないはずである。しかし、水に対する影響力の違いなのか、すんなりと水のトンネルが形成された。

 決して、ノヴォがルカの尻に敷かれているからではない・・・はずである・・


 

 合流を喜ぶ暇もなく、泣きじゃくるヘラを宥めながら、ユニコーンのニコの治療が行われた。

 それによりグドンは一命を取り留めたが、失われた左腕を再生することは叶わなかった。


 「ヒィヒィン・・・」

 「仕方ないわね・・ユニコーンの治癒能力も、四肢再生は無理なはずだし・・」

 「誰か・・なんとか出来ないでしゅか・・・」

 ヘラが涙目で訴えるが、応えられる者は居なかった・・


 「命が助かっただけでも、良しとするさね・・」

 冒険者稼業をしていれば、怪我で引退した同業者は山ほどいた。特に前衛は、四肢に不安が残れば廃業するしか道が無かった。


 「しょんな・・」

 自分だけ助かって、グドン一人を地下水流に巻き込ませたくなかった・・

 一緒に居れば、お互いに助けになれる・・

 そう思って二人で吸い込まれたのに、結局はグドンの足枷になってしまった・・


 グドン一人なら、こんなに酷い傷を負うこともなかったかもしれない・・

 ヘラは自分を責め続けていた・・


 「アタシが我儘言わなければ・・」

 

 「グドンが一人だったら、ここまで頑張れなかったかも知れないぜ、ジャー」

 「ギャギャ(そうですよ、流されたグドンさんを見つける事も出来なかったかも・・)」

 ベニジャとアズサが慰めるが、ヘラの心を軽くする事は出来なかった・・・


 「なあ、あそこにずっと隠れている、シスターっぽいのは、治癒呪文は使えないのかよ・・」

 暗い雰囲気に耐えかねたスタッチが、ずっと疑問に思っていた事を口にした。

 

 「それはアタシも気になっていたさね」

 「敵ではないようなんだが・・味方かと聞かれるとちょっとな・・」

 ソニアもハスキーも気にはしていたようだ。ただ、シスター服の下は、ボーン・ガーディアンの骸骨姿なので、その括りで判断していたに過ぎない。


 「あー、彼女ね・・あれは、まあ、あれよ・・」

 珍しく歯切れの悪いビビアンに、他のメンバーの注目が集まる。


 「もし、高位の治癒呪文が使えるなら、お願いしたいでしゅ・・」

 藁にも縋る思いで、ヘラが懇願する・・


 「あ、ごめんなさい・・彼女は確か占星術師で、治癒は不得意だった・・はず・・よね?」


 『・・幼子おさなごは尋ねた・・我が星は何処にあらんと・・さすれば星は答えて曰く・・「汝、妄想を病みて現実を疎かにせん」と・・』

 「ちょ、ちょ、ちょっと!昔の話はいいのよ! 何番だったか忘れたけど、その格好はオラクルなんでしょ?!」

 『然り・・』


 相変わらずどこを見ているのか、何を考えているのか分からない23番は、それでもビビアンの問いに答えているようである。


 「だったら・・アタシがグドンの左腕をなおしゅには、どうしゅれば良いでしゅか?・・」

 ヘラが23番に尋ねた。

 すると、先程まで虚空を見つめていた23番が、ヘラの方へ顔を向けた。


 『汝、白蛇の血を引きし者よ・・盾を失いし騎士の為に、重荷を背負う覚悟は有りや?・・』

 「ちょっと、ヘラとか言ったわよね?迂闊に返事したら駄目・・」

 「あるでしゅ! グドンの左腕を治してくだしゃい!!」

 ビビアンの静止も聞かず、ヘラは23番に答えてしまう。


 『受諾した・・汝、魔女の血を引きし者よ、新たなる盟主として我らを導き給え・・・エンゲージ・マスター(盟主契約)!!』

 23番の叫びと共に、ヘラを青い魔法陣が包んだ。


 「何が起きたさね?!」

 「盟主契約だと? システムのマスターになったのかよ?!」

 「なんで、部外者のアンタが、システムに認証されるのよ?!」

 「魔女の血筋・・魔力ではなく、血統が必要だったのか・・」

 ビビアン以外、箸にも棒にも掛からなかった3人が、驚きの声を上げる。



 その声を遠くに聞きながら、ヘラの意識は、大量に送り込まれるシステムの知識に飲み込まれていた・・


 『同調率97%・・いけます』

 『ハーフの様だが、流れる血統は純正だ・・片親の適性もあったんだろう・・』

 『ダンジョンシステムの干渉が認められます・・排除しますか?・・』


 『・・ダメ・・でしゅ・・』

 

 『・・適合者の意思を確認・・現状のまま、インストールします・・』

 『同調率96%・・依然、安定しています・・』

 『よし、拒否反応も無いな・・』

 『・・適合作業終了・・システム・オール・グリーンです・・』



 頭の中で木霊していた会話が途切れた・・

 それはガーディアンシステムの製作者達の残留した思念・・・

 ダンジョンのシステム運用の試験として導入された、魂の器を人工的に用意する為のもの・・・


 初代のオペレーターに選ばれた女性の、DNAを引き継ぎし者のみが認証される、「水晶の守護者」のマスターが再誕した・・・


 

 「グドンの左腕をしゅーふくしぇよ・・」


 『音声入力に齟齬が発生しています・・思念による指示を推奨します・・』 

 『・・・グドンの欠損した左腕を修復せよ・・』

 『了解いたしました・・』


 グドンの身体が青い魔法陣に包まれ、その左腕が、水晶で再構成された。


 「ギャギャ(グドンさんの左腕が・・)」

 「ギャギャ(ヤバイ、格好いいぜ・・)」

 「ギャギャギャ(あれはクリスタル・ボー・・うっ、頭が・・・)」



 さらにヘラが周囲を見渡すと、システムに補佐された瞳に、この地に漂う魂達が映った。


 「力を貸してくれるでしゅか?・・」

 ヘラの問いかけに、二つの魂が頷いた・・


 『・・クリエート・ガーディアン!(守護者創造)』

 『了解です・・魂魄に適合する躯体を形成・・女性・・騎士型・・構成完了しました』


 「おお、あれだ、アタイ達を案内してくれたロザリオ似の・・ジャジャ」


 『男性・・術者型・・・体格の修正?・・認証しました・・構成完了・・』


 「お、こっちはオーガー並みのガタイだな・・ソニアのお仲間か?」

 「どういう意味さね・・」

 「い、いや、ほら、バーバリアンなのかなと・・」


 しかし現れた水晶の戦士は、魔道士のマントを羽織っていた・・


 

 先に姿を現した女騎士が、ヘラの前に膝をついて礼をとった。

 「我が名はセイバー・・新しき盟主に忠誠を・・」


 それと同じくして巨体の魔道士が膝をつく。

 「我が名はバーサーカー・・今後共よろしく・・」



 「ランサー・・お前、そこまでして・・」

 「・・バーサーカー!」

 「ああ、そ、そうだな・・」

 元ランサーの剣幕に、恐ろしいほどの執念を見たセイバーであった・・・




  



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