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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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守護騎士の標

  凍結湖ダンジョン第3階層と第4階層の中間あたり


 ベニジャ達調査班が、水流を避けて足を踏み入れた分かれ道は、フロストワームの掘ったトンネルだと思われた。しかし、戻るわけにもいかず、一行はそのウネウネとした地下通路を進んで行った・・・


 やがてトンネルは、大きな洞窟へと繋がった・・


 「どうやら、ここがフロストワームの巣みたいだな・・ジャジャ・・」

 「でも、居ませんね~」

 最近、掘りぬいた痕跡があちこちに残っている洞穴は、鼠が齧ったチーズの様に、虫食いの穴が開いており、それらが纏まって一つの大きな空洞を形成していた。

 床にも幾つか穴が開いており、そこには水が溜まっていて、溢れたぶんで床も広範囲に水没していた。

 天井からは今も、小さな滝のように湖水が流れ落ちてきていた。


 「なあ・・あの穴だけ、デカくないか?ジャー・・」

 ベニジャが指したのは、天井の中央付近に開いた、一際大きな虫食い穴であった。

 それは、通常のフロストワームの穴よりも二周りぐらい太いトンネルであった。


 「親御さんでも居たんですかね~」

 ルカは大して気にもせずに、何かを探すように周囲を見回していた。


 「あんなサイズのフロストワームとは、遣り合いたくないぜ・・ジャジャ」

 首を振りながら、ベニジャはルカの様子を見咎めた。

 「何か、気になるものでもあるのか?ジャー」


 「いえ、水を伝わって誰かの声が聞えるような・・」

 ルサールカにしか分からない、小さな声らしい。


 「また、馬鹿亭主の叫びじゃないよな?ジャー」

 「違います・・でも、どこかで聞いたような~・・」

 ルカに聞き覚えがあるとすると、眷属かゲストの可能性があった。ベニジャは大蛙を散開させると、声の響く場所を特定しようと努力した。


 「ケロケロ!」

 大蛙の風神が、壁に開いた水没した横穴の奥から、その声が響いていることに気が付いた。


 「・・で・・・誰か・・・たしゅけ・・・」


 「「ヘラだ!!」」


 

 大蛙が次々と飛び込んで行った。

 状況が分からないので、ゴブリンチームを飲み込んだままである。敵が居るなら不意打ちで排除できるし、救助が必要なら、一旦降りて、ヘラを飲み込んで戻る手はずになっていた・・


 やがて、水没した横穴から、2体の大蛙が戻って来た。

 その口内から、泣きじゃくるヘラと、瀕死のグドンが吐き出される。


 「こいつは・・ジャジャ・・」

 ベニジャが絶句したほど、グドンの様態は悪かった。

 おそらく水流に巻き込まれて、トンネルの中を揉みくちゃにされながら流れてきたに違いなかった。

 体中に裂傷や擦過傷があり、打撲と骨折で、四肢が変な風に曲がっていた。

 最も酷いのは左腕で、肘の付け根あたりから、千切れたように無くなっていた・・


 急いでヒーリングポーションを飲ませたが、それで回復するのは傷ぐらいで、意識も戻ることはなかった・・


 「えぐっえぐっ・・グドンは、ワタシを庇って・・水の中でもずっと・・抱き抱えてくれて・・ えぐっ・・」

 ヘラが泣きながら状況を話すが、混乱していて要領を得なかった。


 ただし、地上班が凍結湖に潜ろうとして、水流に巻き込まれた事と、ヘラとグドン以外のメンバーの状況は分からないということが、なんとなく分かった。


 「とにかく、このままだとヤバそうだ・・ニコかオババを探そう・・ジャー」

 ユニコーンの霊力なら、グドンの治癒も可能かもしれなかった。もしくはダンジョンコアのオババに願って、効果の高いポーションを変換してもらうぐらいしか、ベニジャには思いつかなかった。


 「でも~、どこに行けば良いのでしょうか~」

 「それこそ水占いとかで、なんとかならないか?ジャジャー」

 「そんな便利な呪文は、持ってませんね~」


 「しゃっきから、呼んでるけど・・答えてくれないでしゅ・・えぐっ・・」

 一番繋がりの濃いヘラの呼びかけが届かない以上、他の者では駄目だと思われる。


 「どこかにオババ様の眷属の方が居ないですかねえ~」

 ルカが周囲を見渡すと、遠くに誰かが立っているのが見えた。


 「あら・・ロザリオさん?・・」

 「ロザリオは居残りだぜ・・ここには・・ジャー・・」

 居ないはずと言おうとしたベニジャにも、その姿は見えた。


 ぼんやりと光る、女性の骨格をした骸骨騎士が、剣で、ある通路の先を示していたのだ・・


 「ロザリオ?・・いや、狐の面がないし・・銀色でもないぜ・・ジャジャ」

 ベニジャの声が聞えたのか、その骸骨騎士は、すっと姿を消してしまった・・


 「どうする・・ジャジャ」

 「ここは従ってみてはどうでしょう~」

 「他に手もないか・・ジャー」

 ロザリオに似ていたからでもないが、なんとなく悪意は感じられなかった。


 アイスドレイクの背中に、そっとグドンを載せ替えると、落ちないように大蛙が併走して運んでいくことにする。

 ヘラはグドンから離れようとしないので、そのまま横に乗せて運ぶことにした。


 「出来るだけ揺らさないようにな、ジャー」

 「シャーシャー」

 

 一行は、亡霊騎士の示した通路を、静かに進んでいった・・・




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