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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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嫉妬は愛情の裏返し?

  凍結湖、地下水道、空気溜まりにて


 蛙人の奸計に嵌った、水精霊の夫婦は危機に陥っていた・・


 「かあちゃんは関係ねえ!攻撃するなら俺にしろ!」

 「はい、私は無関係です~」

 「えっ?そこ、言い切っちゃうんだ・・」

 「なので、ガンガン、石礫投げてやってください~」


 ・・夫婦の危機に陥っていた・・・


 「どうするケロ?」

 「半魚人の妄想嫁ケロ?」

 「それで本当は大蛙が嫁だケロロ」


 フロッグマンの囁きを聞いたルカは、何か言いたそうにしていたが、我慢した。


 「嫁を守る為に、他人を犠牲にするとか、鬼畜ケロ」

 「だが、その努力も無駄だケロ」

 「お前の嫁はその大蛙だケロロ!」


 「「 違うううう!! 」」


 我慢出来ずに叫んだ夫婦であったが、フロッグマン達は聞いて居なかった。

 ノヴォに対する人質にする為に、壁に張り付いている大蛙の毘沙門に襲い掛かった・・


 「ケロケロ?!」


 濡れ衣で、ノヴォの嫁認定された毘沙門(♂)は、慌てて壁伝いに逃げ惑う・・

 しかし、あっという間に包囲されて、逃げ場を失った。


 そこへ・・


 「ステイ!!」

 ベニジャの号令が響くと、フロッグマン達の動きがピタリと止まった。


 「う、動けん・・ケロ・・」

 「何故だケロ・・頭が・・頭が割れそうケロ」

 「逆らうと苦しいケロ・・素直になるケロロ・・」

 「「 あ、楽になったケロ 」」


 「整列!!」

 さらにベニジャが命令すると、そそくさとフロッグマンと大蛙達が横並びになった。

 クロコの背中に仁王立ちになり、蛙人に指示を出すベニジャの手には、を使役する為の三叉矛が握られていた。


 「番号!!」

 「ケロッ」 「ケロケロッ」 「ケロロッ」 「ケロッケ」 「ケロッケロッ」


 「よし、解散!!」


 「ういーっす、流れ解散ケロ」

 「お疲れーケロ」

 「なんか忘れてるような・・まあ良いか、ケロロ」


 ぞろぞろと地下水道に戻っていくフロッグマン達の後ろを、大蛙達も付き従っていく。


 「お前たちは居残り訓練だ、ジャー」

 慌てて大蛙を止めるベニジャの声を聞いて、フロッグマンの足が早くなる。


 「先輩、お先ですケロ!」

 「地下水路は露払いしときますんで、ケロ!」

 「さーせん、ケロロ!」

 

 居残りが嫌だったのか、蜘蛛の子を散らすように逃げていった・・・



 「はあ~、短時間とはいえ、あの数を支配下に置けるとか、ベニジャさんも凄いんですねえ~」

 感心したルカの言葉に、しかしベニジャは答えられなかった。


 ドサッという重いものが倒れる音がしたと思った途端、クロコが騒いだ。

 「シャーシャー!!」


 見ると、クロコの背中で、真っ青な顔色をしたベニジャが倒れていたのだ。


 「ベニジャさん!」

 ルカが叫ぶのと同時に、ノヴォが駆け寄って様態を診ていた。


 「大丈夫だ、魔力の使いすぎで気絶しただけだ・・」

 「良かった・・」


 「しかし大した嬢ちゃんだぜ、俺が呼んだ蛙人を上塗りして使役しちまうんだからな・・・」

 ノヴォが、ベニジャの頭を撫でながら呟いた。


 「しかも、あの数だ・・追い返すだけで精一杯だったんだろうが、それでも凄いぜ・・」

 「シャーシャー・・」

 クロコが心配そうに鳴いた。


 「ああ、大丈夫さ、少し眠れば元に戻る・・」

 「シャーシャーシャー・・」

 クロコが心配しているのは、ノヴォの方らしい・・


 「俺か?俺はこの通り・・・」

 そこまで言いかけて、ノヴォは背後に立つルカの殺気に気がついた。


 「かあちゃん! これはやましい気持ちで撫でているわけではなく!」

 「あんたって人は、私の友達にまで手を出してえええ!」

 

 「濡れ衣だあああーーー」

 ザッパーーン  

 ルカの操る水流に押し流されて、ノヴォは地下水道を錐揉みしながらどこかへと流されていった・・・


 「シャー・・・」


 間一髪で背中のベニジャと一緒に避難していたクロコが、やれやれと言った口調で、一声鳴いた・・・



  凍結湖、コアルームにて


 『なんじゃ?撃退ポイントが入ってきよった・・』

 「あ、これじゃない?地下水道のレッドマーカーが退去していったわ」

 ビビアンの見つめるマップには、圏外へと去っていく大量の敵対マーカーが映っていた。


 『吸収は無しじゃが、それでも2000ポイントは美味しいの・・』

 「どれだけ入り込まれてたのよ・・」

 戦力で言えば4個小隊に近いかも知れない。それを両者に死者無しで追い返したのだから、善戦というより謎な結果ではあった・・


 「ゲストが1体、はぐれているけど、これが作戦だったのかしら・・」

 ビビアンの予想は、残念ながら外れていた。離れているのは、押し流されただけである・・・



 『これで、こっちは大丈夫じゃ。お前は、青水晶の間へ応援に行っておやり・・』

 オババが、ビビアンに優しく言った。


 「そ、そうね、あっちも苦戦しているようだし、さっさと片付けてくるわね!」

 ハスキー達の戦いが気になっていたビビアンは、渡りに船と立ち上がった。


 「エトランジェ・デュ・ルージュは、これより青水晶の間の救援に行くわ!ついて来なさい!」

 「ヒヒーン」

 「らじゃーデス」

 「・・@・・」


 再びユニコーンのニコの背中に跨ると、颯爽とコアルームを走り出していった。



 「よろしかったのですか?オババ様」

 立ち去るビビアン達を見送りながら、キャスターが念話でオババに尋ねた。


 『何がじゃ?』

 「ビビアン様のことです。わざわざ危険な戦闘区域に送られなくても、ヒーラーやソーサラーなら眷属の中から召喚できるのでは?・・」


 『ここで、そわそわされるより、応援に行かせた方が良いかと思っての・・』

 「なるほど、納得致しました・・」


 『それに、ここに居るのが一番安全とも言い切れん・・』

 「おいおい、まだ敵が残っているっていうのかよ」

 アーチャーもその念話に紛れ込んできた。


 『フロッグマンの撃退ポイントは入ってきたが、人狼と墓守の分はまだじゃ・・その違いはなんなのか・・』

 「再度襲撃する意志があるからか・・」

 「まだ黒幕の隠し玉があるかだな・・」

 キャスターとアーチャーも考え込んだ。


 『棺がここにあり、お前たちも眷属化した・・いざとなったら青水晶の間の放棄も可能ということじゃ・・ならば黒幕が狙うなら、ここしかないのじゃが・・』


 不意を打たれた当初とは違い、今はコアルームの防備もそれなりに整っていた。

 キャスター達の耐久力も回復したし、オーガーの衛兵も6体居る。棚ぼたの撃退DPもある。

 青水晶の間が制圧できれば、それでこちらの勝利が確定するはずであった・・


 『じゃから、仕掛けてくるなら、このタイミングのはずなのじゃが・・』

 「ビビアンを向こうへやったのは隙を見せる為かよ・・」

 「それと同時に、より危険の少ない方へ誘導されましたね?・・」


 『ふんっ、どうとでも取るが良いじゃろうて・・』



 オババは、マップに映るビビアン達のマーカーを、ただ、見つめていた・・・







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