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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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裏で糸を引く者

昨日も風邪でダウンしておりました。なんとか今日は書き上がったので、更新いたします。

  凍結湖ダンジョン、地下水路、空気溜まりにて


 「頼む!帰ってきてくれ!」

 「やですう~」

 「そんな事、言わずに、頼む!!」

 「ぜったいに、やですう~~」


 ヴォジャノーイとルサールカの夫婦間の調停は、一向に進展する気配が無かった。



 フロストワームとの戦闘の後、氷の中で固まっているのは、ルカの夫のノヴォだと判明した。

 クロコ達、アイスドレイクチームのコールドブレスで、氷漬けになっていた為に、フロストワームの爆散からはダメージを受けなかったようだ。

 それでも、ワームに飲み込まれたり、高い場所から吐き出されたりして、満身創痍ではあった。このまま氷に漬かっていれば、やがて死亡するのは間違いなかった・・


 「こんな人、放っておけば良いんです~」

 そう突き放すルカではあったが、チラチラと様子を覗う姿は、まだ未練があるように見えた。

 まず情報を引き出そうという事で、ヴォジャノーイを氷の中から救い出すことにした・・


 話を聞いてみると、ノヴォの浮気を怒って家出したルカの消息を知るために、傭兵としてオババのダンジョンを攻略する事を請け負ったらしい。上手く仕事を完遂すれば、ルカの居場所を教えてくれるというので飛びついたそうである。


 「で、アンタを唆したのは誰なんだい?ジャー」

 「そいつは言えないぜ・・綺麗な顔していても、リザードマンの嬢ちゃんなら、渡世の義理は承知だろ?」

 「・・ルカ、このおっさん、いつもこうなのか?ジャジャ・・」

 

 無駄に決め顔をするノヴォの頭上から、ルカの作った水の塊が降ってきた。

 「うおっ、冷てえ!かあちゃん、これは口説いてるわけじゃねえんだ」


 「あなたなんか、知りません~」

 「そんな事言わずに、な?」

 「どちら様ですか~」


 夫婦の不毛なやり取りに飽きたベニジャが、ノヴォに助け舟を出した。

 「半魚人のおっさん、黒幕のこと教えてくれたら、ルカに口利いてやっても良いぜ、ジャー」

 「そいつは・・・」

 ノヴォは、義理と人情を秤にかけると・・・


 「よし、実はな・・」

 あっさり、義理を捨てて雇い主の情報をバラすヴォジャノーイであった・・


 「・・自分でけし掛けておいて言うのもなんだけど、おっさん、それで良いのかよ・・ジャジャ」

 「元から、かあちゃんの行方が知りたくて請け負った仕事だ・・こうして会えたなら、もう報酬はいらねえからな・・」

 とは言え、ペラペラと依頼人の事を話すと、今後の仕事に障りがある気がするのだが、ベニジャはその点には触れないことにした。


 「で、雇い主はどんな奴だい?ジャー」

 「名前は『ミストレス』、裏の世界では名の知れた顔役だ・・」

 「やっぱり女がらみなんだ~」

 「違うって、そいつはそう名乗っているだけで、性別不詳、種族も不明なんだよ・・」

 「どうだか~」


 「正体不明なのに、仕事を請けたのかよ?ジャジャ」

 「間に仲介者が挟まったが、『ミストレス』の名は有名だからな・・こっちが絶対に欲しがる情報で仕事を依頼してくるやり方が、奴の特徴なんだよ・・」


 「それ以外に、黒幕について分かることはないのかよ?ジャー」

 「ない・・俺の他に人狼の傭兵団と、アンデッドの軍団を動かすことは聞いたが、結局、奴が何がしたかったのかは、分からず仕舞いだった・・」

 

 「報酬はどう受け取るんだ?ジャジャ」

 「成功すれば、仲介者が接触してくる手はずだった・・」

 「良くそれで仕事を請けたな?ジャー」

 「それだけの信用が『ミストレス』の名前にあるんだよ・・報酬の不払いで揉めた話も聞かねえし、その名を騙る馬鹿もいないのさ・・」

 過去に成りすました奴が居た事はあるらしいが、すぐに簀巻きにされてナビス湖に浮いていたそうだ・・・


 「そんな、怖い相手の依頼をすっぽかして、正体まで話して、大丈夫なの?・・」

 ルカが心配そうに聞いた。


 「心配すんなって・・成功報酬なんだから、失敗したらそれまでさ・・俺には、かあちゃんの方が大事だからよ・・」

 「別に・・心配なんかしてません~」


 「ふーん、ならもう黒幕とは手切れって事で良いんだな?ジャジャ」

 「ああ、囮って意味なら十分役目は果たしたし、このダンジョンの主に、個人的な恨みがあるわけじゃねえしな」

 果して、ヴォジャノーイの行動が、オババに対する攪乱になったかは微妙な所だが、それを指摘しても仕方がない。これ以降、敵対行動をしないと確約するなら、放置でも良いかとベニジャは考えた。


 「どうする?ルカは、ここに残るか?ジャー」

 「え~、最後まで見届けますよ~」

 「なら、俺もついていくぜ」

 「いや、おっさんは邪魔だぜ、ジャー」


 ベニジャに一言で切り捨てられて、がっくりと床に両手をつくノヴォであった。

 「俺だって、やるときはやるんだよ・・これでも中級精霊なんだぜ・・・へへ・・・」


 「半魚人のおっさんが、どんなに手練でも、ゲスト扱いされていない奴とは危なっかしくて同行できねえぜ、ジャー」

 ダンジョンのトラップは発動するし、知能の低い眷属なら、見るなり襲ってくる可能性もあった。


 「なんだ、そんなことかよ・・なら話は簡単だぜ!」

 即座に立ち直ったノヴォは、地下水路に向かって叫び出した。


 「俺も仲間に入れてくれよー」 「くれよーー」 「くれよーーー」


 「あんなので、オババのとこまで聞こえるのかよ?ジャー」

 「ヴォジャノーイのスキルで『深淵の呼び声』というものです~」

 ベニジャとルカがヒソヒソ話をしている。


 「水が繋がっている限り、かなり遠距離まで届くは届くんですが~」

 「ですが、の続きは?ジャジャ・・」

 「聞き届ける対象を選べないという欠点があるんです~」

 「それって、欠陥スキルじゃんか、ジャジャー!」

 「そうとも言いますね~」


 固唾を飲み込んで、事態を見守る二人の前で、ノヴォに赤い魔法陣が降り注いだ。


 「よっしゃ、ゲスト認定ゲットだぜ!」

 ドヤ顔で胸を張るノヴォの姿に、イラっとしながらも、フロストワームの様な敵を呼び込まなかった事に、ホッとする二人であった・・・



 だが、しかし、オババ以外にも、その叫びを聞いたモノたちは存在したのである・・


 それは、最初は1体だけであったが、あちこちから集まり始めて、あっという間に、巨大な軍勢に膨らんでいった・・

 そしてその軍勢は、地下水道を津波の様に、ノヴォ達がいる空気溜りに押し寄せてきた・・



 「「「オイラ達への報酬がまだだケロ!!」」」



 フロッグマンの逆襲であった・・・





 



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