表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
454/478

心臓(ハート)を打ち抜く一撃

  凍結湖、青水晶の間、葬列


 「カタカタ(あんたらビビアンの冒険者仲間かなんかかい?)」

 アーチャーが3人組に話しかけるが、もちろん通じるわけがなかった。


 「なんか、あっちの骸骨軽戦士が、歯を打ち鳴らして威嚇してるさね・・」

 「いや、あれは話掛けているのだと思う・・」

 「俺としては、あの隅っこでボウっと突っ立てる骸骨シスターの方が気になるんだけどよ」


 「カタカタ(まずいな、会話が通じていないようだ)」

 「カタカタ(おいおい、どっちに味方するかわからねえって事かよ)」

 「カタカタ(棺を庇ってくれたのだから、ダンジョンを護るという点については味方なのだがな・・)」

 普通の冒険者なら、オーガー側を敵と見做す可能性が高かったが、ここがダンジョンだと知って協力してくれるなら、眷族と判断してくれるだろう。

 叛乱側の15番も、乱入してきた人族の扱いに苦慮しているようだ。


 『システムの再編に障害となる可能性・・74%・・協力者の可能性・・17%・・適合率のスキャンを開始・・』


 すると3人組の足元に青い魔法陣が出現し、頭上へと上って行った。


 「「「うおっ!」」」


 『適合率・・0.3%・・0.2%・・0%・・・不適合者と認定・・除外する』

 スペア・ガーディアンの矛先が、一斉に3人組に向いた。


 「どうも馬鹿にされた気がするさね」

 「何かを調べたのか?・・適合者をどうする気なんだ・・」

 「やべえ、こっち向きやがった」


 だが、それを好機と見た者もいた。


 「今だ!ボコれ!ウガ」

 「「「ウガー!」」

 リーダーに率いられたオーガーチームが、腰まで水に浸かりながらスペア・ガーディアンに襲い掛かった。


 「よし、取り合えずオーガーは味方で、地底湖に居るのが敵らしい・・」

 「なら、ちょいと暴れてくるさね・・」

 「だな、俺らが狙われているうちは、こっちは安全だろう・・」

 3人組も、前線へと走りこんだ。


 最前線はオーガーが猛威を振るっている為に、迂闊に飛び込むと巻き込まれそうである。

 ハスキーはやや後方から弓で援護するが、後の二人は入り込む余地が無い・・


 「だったら、こうだっ!」

 スタッチが気合いを込めると、オーガーの背後へと駆け出した。すぐにソニアも後を追う・・


 「その肩、借りるぜ!」

 オーガーへの声掛けもそこそこに、上半身だけ水面から出して戦っているオーガーの肩に飛び乗った。


 「ウガッ?!」

 オーガーは驚くが、なんとか踏ん張って体勢を維持した。


 「見えたぜ、お前が元凶か」

 スタッチの視線の先には、スペア・ガーディアンの後方で指揮をとる15番の姿が見えた。

 そしてそのまま、オーガーの肩を蹴って、15番へ斬りかかった。

 

 「くらえっ、パワーアタック!」

 「ウガッ?!(オイラを踏み台にした?!)」


 スペア・ガーディアンの戦列を飛び越えて、スタッチの強打が15番の頭部に決まった・・だが・・


 「効かないだと?!」

 着地の事など考えずに、全体重をかけた強打が、ほとんどダメージを与えることなく、弾かれてしまった。まるで石か何かに切りつけた様な感触が伝わってきた。


 「くそっ!強化魔法かよ!」

 『やはり適合率0%・・愚かなり・・』

 そのままスタッチは、15番の目の前で盛大な水しぶきを上げながら水面に落下した。

 この場所は水深が3m以上あり、オーガーでさえ足が付かない。15番は呪文で浮遊していたのだ。


 「ゴボゴボ(汚ねえぜ、術者かよ・・)」

 慌てて泳ぎだすスタッチに、湖底から新たなスペア・ガーディアンが接近してきた・・・



 『湖底の人族を優先して排除せよ・・』

 配下に指示を出した15番に、水しぶきを突き破って、ソニアが踊りかかった。


 「こっちが本命さね!ボーン・クラッシュ!!」

 ボーン・サーペントをも屠った、スケルトン特効の一撃は、ボーン・ガーディアンにも絶大な効果を発揮した。


 『ガアアアアア』

 15番が絶叫をあげて倒れた。そのまま湖底へと沈んでいく・・


 しかしソニアは渋い顔つきだった。

 「手応えが浅い・・倒しきれなかったようさね・・」

 15番が自分に付与していたストーンスキンの呪文が、ギリギリのところで即死を回避させたようだった。


 追撃を考えたソニアだったが、スタッチを迎え撃とうとしたスペア・ガーディアンが、沈んでいく15番の周囲に集まり始めたのを見て、諦めた。


 「ゴボゴボ(命拾いしたようだね・・だけど次はないさね・・)」

 岸に向かって泳ぎながら、ソニアは呟いていた・・


 指揮系統の乱れにより、スペア・ガーディアン達は、一時、湖底に集結した。

 水中に居る相手に対して、有効的な攻撃方法をもたないダンジョン側も、一旦、棺の周囲に戻ってきた。


 オババからの念話が届いたのは、このタイミングであった。


 

 まず3番と12番の足元に魔法陣が出現し、二人はオババの眷属になることを承認した。

 『二人とも、よく頑張ってくれたのう・・礼を言わせておくれ・・』

 「もったいないお言葉です・・我等の力が及ばず、オババ様の憑依体を救うことが出来ませんでした・・」

 『あ奴も長い間、働いてくれた・・後で弔いをせぬとな・・』

 「おいおい、まだ終わっちゃいないんだぜ・・反乱分子の鎮圧も、黒幕への落とし前もよお・・」


 『そうじゃったな・・7番、13番、18番の仇は取らねばな・・』

 「ああ、倍返し、いや3倍返しは、しねえとな!」


 気炎を上げるアーチャーを横目に、キャスターが冷静に尋ねた。

 「オババ様、白檀の棺はいかがなされますか?」

 

 出来るだけ早く、湖底に戻したいところだが、未だに反乱分子の勢力圏内である。彼等を排除しないことには、安心して棺を保管できなかった。


 『ひとまず、コアルームへ運んでおくれ。そこに置いておくより安全じゃろう・・お前達も一緒に来るように・・多少ならリペアのあてもあるでな・・』

 「「了解です」」


 『オーガーリーダーは共通語が話せる・・冒険者との交渉は任せて良いぞ』

 眷属になったので、オババとの会話は念話の自動翻訳機能で可能だ。だが、キャスター達が冒険者と会話できるようになったわけではないので、そこは一任するしかなかった。



 そのオーガーリーダーと冒険者は、やっと意思疎通が出来て安堵していた。


 「助っ人、感謝する、ウガ」

 「ああ、よろしくな・・あと肩に乗ってすまなかったな・・」

 スタッチが、踏み台にしたオーガーに謝ると、身振りで気にするなと返事があった。

 さらに・・


 「ウガウガ(2度目に飛んだ女戦士は、番いはいるのか?)」

 と聞かれた。どうやらソニアの人族離れした一撃に惚れたらしい・・


 「ウガウガウガ(あれは人族にしておくのは惜しい・・きっとオーガーの血が混じっているに違いない)

 他のオーガーからも絶賛されていた。


 「何か言われてるみたいだけど、やっぱり二人も乗ったのがまずかったさね?」

 ソニアに尋ねられたが、それをそのまま答えるのは拙い様な気がしたオーガーリーダーは、お茶を濁した。


 「見事な一撃だったと、皆、褒めてる、ウガ」


 嘘は言っていなかった・・

 巨人語が話せるので、オーガー語も少し聞き取れるハスキーは、オーガーリーダーの機転に感謝した。



 オババの指示で、オーガー2体が棺を担いでコアルームへ運ぶことになった。キャスターとアーチャーはその警護として同道するが、あきらかに二人の消耗度を考えれば、戦線離脱である。

 ゆっくりと洞窟を出て行く葬列を、3人と2体は見送るのであった・・・



 『・・・ガーディアン・リペア・・ナンバー15・・・』


 湖底で青い光が揺らめいていた・・・




 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ