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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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魚はロンリー、気持ちは・・・

投稿が遅くなりました。これは昨晩の分です。申し訳ございませんでした。

  凍結湖、地下通路、一人ぼっち


 満身創痍になりながらも、ヴォジャノーイはダンジョンへの侵入に成功していた。

 凍結湖に飛び込んだはいいが、全身が筋肉痛で思うように泳げず、沈むように降り立った場所が、ダンジョンの入り口だった為である。

 這うように地下通路に潜り込んだは良いが、網の目の様に広がるダンジョンの中で、完全に迷子になっていた・・・


 「畜生、どっちに進んだら正解なんだよ・・」

 3度目の分かれ道で、ぼやき続けるヴォジャノーイに答える者は居なかった・・


 「右・左と来たから、次は右でいいか・・」

 方向感覚の技能もないのに、適当に分岐を選択するので、どんどん深みに嵌っていく。これでは同じ場所に戻ってきても、気が付きもしなさそうである・・しばらくうろついてから、ある事を思いだした・・


 「確か、青く光る地底湖に、お宝が沈んでいるって話だったな・・」

 ヴォジャノーイは、雇い主に聞かされた情報を思い出して、水の気配を探ってみた。

 取り立てて、財宝が欲しいわけではないが、そこにたどり着くのが依頼の内容だったのだ。ついでに妻にプレゼントするものがあれば、貰って帰ろうぐらいに考えていた。


 「むむむ・・頭上の巨大な反応は凍結湖・・なら、こっちか・・」

 水棲精霊の特性を生かして、なんとか地下水路に辿り着いた・・・だが・・


 「こりゃあ、地底湖じゃねえな・・」

 それなりの水量はあったが、地底湖というより地下水路への出入り口に見える。左右に川の様に延びる水路は、両端とも、すぐに地面の中に潜っていた・・


 「丁度いいから、奴らを呼ぶか・・」

 外に繋がっているなら、フロッグマンを呼び出せるかも知れない・・ヴォジャノーイは、水面に向かって叫んだ。


 「一人ぼっちだからって、寂しくなんかないぜーーー」 「ないぜーー」 「ないぜー」


 地下通路に、男やもめの悲哀が木霊した・・・



 ズドドドドド

 すぐに地下水路を伝って、何かがやってくる音が響いてきた・・だが・・


 「ん?なんか音がでかくねえか?・・」

 フロッグマンが集団で泳いできたとしても、こんな音と振動はしない・・

 「ヤバイ奴を呼び寄せちまったか?!」

 召喚に応えた水棲生物ならまだしも、ダンジョンの見張り番ならマズイ事になる・・

 

 地下通路を引き返すか、地下水路の逆側に飛び込むか迷っている間に、それは出現した。



 「ギシャアアアーー」


 もう1体のフロストワームであった・・・




  凍結湖ダンジョンコアルーム(戦時司令部)にて


 「3階層、地下水路から巨大生物が侵入したわ!」

 対象のサイズによって、マーカーの大きさも変える仕様にしたとたん、反応があった。


 『ヴォジャノーイが何か召喚しよったか?!』

 侵入地点が、不明マーカーの位置と重なっている為に、オババはその可能性を疑った。


 「ちょっと待って、移動し始めた・・凄い速さで不明マーカーを追いかけてる・・地下水路の映像って映せるの?」

 『はっきりとは映らんぞ・・』

 そう言いながらも、オババは地下水路の様子を投影した。

 そこには、フロストワームに追われて、必死の形相で泳ぐヴォジャノーイの姿があった・・


 「召喚したわけじゃ、なさそうデスね・・」

 デスが、全員が思った事を代弁してくれた。


 「・・どうする?放っておく?」

 このまま地下水路を進むと、徐々に重要拠点から遠ざかるルートに入る。ヴォジャノーイが囮になってくれるなら、現状維持もありだ。


 『他にも居ないか精査する・・ダンジョンのあちこちに抜け穴を掘られていたとすると、2体じゃ済まないかもしれん・・』

 「了解、こっちは3階層から4階層へ移動・・このまま行くと・・あ!」


 『どうしたのじゃ?』

 「フロストワームの進行方向に、ゲストマーカー!このままだと1分後に接触するわ!」

 投影されたダンジョンマップには、接近する二つの光点集団が映し出されていた・・・




  凍結湖ダンジョン、地下水道にて


 凍結湖調査班・地下水路部隊は、長い水路を抜けて、空気溜まりの洞窟で一息ついていた。

 半水棲眷属用に設けられたと思われる空洞は、澱んだ空気に満たされていたが、どこかに出口があるようには見えない。抜け出るには、もう一度水路を使うしかなさそうであった・・


 「ここはハズレだぜ、次いくぞ、ジャー」

 ベニジャの先導で再び地下水路に潜ろうとしたとき、水路を伝わって何か聞こえてきた・・


 『・・ないぜーー・・』


 それを聞いたルサールカのルカが顔をしかめた。

 「嫌な事を思い出しましたぁ・・」

 「ん?知った奴の声だったか?ジャー」


 「夫が浮気がバレる度に、『お前の事を忘れた時などないぜーー』って土下座するんです~」

 「ああ、そりゃ駄目な旦那の典型だな、ジャジャ」

 「ですよね~、浮気を否定するわけでも、金輪際しないと約束してるわけでもないんですから~」


 ルカの愚痴が長くなりそうになったとき、遠くから振動が伝わってきた・・・

 

 「シャーシャー!」「ケロケロ!」

 「ヤバイのが来るみたいだな、戦闘準備!ジャー」


 ベニジャの号令でフォーメーションを組んだメンバーの眼前に、地下水路を突き破るような勢いで、巨大なワームが出現した。

 「デカ過ぎだろう!ジャー」


 空洞を半分以上も埋め尽くす巨体は、それでも後ろ半分は未だに水路の中であった。

 巨大な大顎を持つ頭部には8つの複眼が並び、その口からは、水かきのついた手が一本、突き出していた・・


 「ん?何か違和感が・・ジャ・・」

 しかしベニジャがその正体に気づく間も無く、フロストワームが襲ってきた。

 それを前衛のアイスドレイクチームが迎え撃つ。


 ギシャアアアアーー

 「「「シャーシャー!」」」

 

 亜人サイズであれば、挟み込んで両断できる大顎も、大型種であるクロコ達の胴体を咥えることは出来ない。背中や尾を狙ってくるが、それを硬い装甲と潤沢な体力で耐え凌ぐ。

 1体が守る間に2体が攻撃を繰り返し、徐々にフロストワームを押し返していく。


 形勢不利を悟ったフロストワームは、鎌首を持ち上げて、ブレスの体勢に入った。


 「くるぜ!ジャー」

 特有の構えに反応したベニジャが、メンバーに注意を喚起した。


 後衛は咄嗟に散開し、アイスドレイク3体は逆に距離を縮めた。

 一瞬、狙いを迷ったフロストワームだったが、手前に固まる3体に、コールドブレスを吐いた。


 空洞が、冷気で真っ白に塗り替えられるが、直撃しなければ冷気耐性で防げるほどの温度である。むろん冷気無効のアイスドレイクにはまったく効かなかった。


 そして、ブレスの吐き終わりに、息を吸い込もうと、僅かに開いた口に、4本のクロスボウボルトが突き刺さった。それも3本がクリティカルヒットとして・・

 それらは、壁に貼り付いてブレスを避けた大蛙の、口の中から放たれたものである。不安定な体勢ではあるが、長い舌をハーネス替わりに腰と肩を固定して撃ち放った、スノーゴブリンスナイパー達の、凄技と言えた。


 ちなみに、フロストワームがブレスを吐く瞬間に、大きく開けた口から何かが落下したが、それに気を止める者は居なかった・・


 痛みにのたうち回りながら、フロストワームは己を攻撃した相手を探すが、口を閉じた大蛙が、スキルを発動すると、あっという間に周囲の岩肌に溶け込んで見えなくなっていく。

 『・・忍法、蛙遁けいとんの術っす・・』

 大蛙の口内でワタリが呟くが、その声は外には聞こえない。


 怒り狂ったワームが、前衛のクロコ達を執拗に攻撃するが、被ダメージを上手く分散させることで、耐え切った。

 根負けしたワームが、一旦、退却しようと地下水路に潜る素振りを見せた。


 「ルカ!」

 「は~~い」

 岩陰でタイミングを図っていたベニジャの指示で、ルカが得意のコントロール・ウォーターの呪文で、水路の水をワームの巨体に纏わせていく・・


 「クロコ!!」

 「シャー!!」

 アイスドレイクチームが一斉にコールドブレスを吐いた。冷気無効のフロストワームにはダメージは入らないが、まとわりついた水が一瞬で氷つく。


 岩盤を噛み砕き、氷塊を突き進むフロストワームにとって、それは簡単に引きちぎれる鎖ではあった・・

 だが、僅か数秒であっても、束縛されたことに違いは無かった・・

 そして、それを逃さない狩人達が居た。


 「ギャ!(そこ!)」

 「ギャギャ!(隙有り!)」

 「ギャギャギャ!(もらったー!)」

 「あれ?開かないっす・・」

 

 フロストワームの首関節、複眼、大顎の付け根に3本のクロスボウボルトが突き刺さった。装甲の弱点を正確に貫かれて、絶叫を上げながら爆散した。


 「自爆かよ!ジャー」

 「そういう性質みたいですねぇ~」

 ブレス避けだった岩を盾に、氷片を避けるベニジャとルカであった。


 アイスドレイクは氷片の嵐の中でも平気な顔をしており、大蛙達は距離が離れている為に、冷気耐性で防ぎ切った・・


 

 視界が戻ったあと、フロストワームの居た辺りで、氷漬けになったヴォジャノーイが発見されたのは、クロコ達の傷をポーションで癒し、再出発の準備が出来てからであった・・・



 「これ、どうする?ジャジャ・・」

 「どうしましょうかねぇ~」



 『・・・かあ・・ちゃん・・・』






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