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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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詳しい話を聞かせてもらおうか

サンタ(完結編)が、消化不良っぽいので、補足的な話になりました。

蛇足のような気もするので、悩んでいたら日付が変わっておりましたが、これは昨日の分です。

遅くなって申し訳ございませんでした。

  ダンジョンコアルーム(審議中)


 「それで、太陽のクラウスは見逃したんだ・・」

 『主殿、全ての責任は、この私が取るから、マーボー達を責めないでやって欲しい』

 降伏した相手を討ち取らずに逃がした事に対して、ロザリオは責任を感じているらしい。


 「いや、別にそれは構わないんだけど、クラウスが戦意を無くしたのも不思議だったし、負けを認めて首を差し出したのも謎なんだけれど・・」

 あのノリだと、一人でも暴れまくるような雰囲気だったよね・・


 「たぶんですが、一騎打ちを申し込んだ時に、既に負けを認めていたのだと思います・・」

 カジャが呟いた。

 「相手の力量も分からないのに?」

 それにクラウスは個人の戦闘力には自信がありそうだったけれど・・


 「そうではなく、配下の6割以上を失った所で、当初の目的を果たすことを諦めたのではないかと・・」


 自分1人が生き残っても、持ち帰れる宝は損害には見合わない。でもこのまま逃げ帰っては、族長としても、太陽の名を持つ英雄としても矜持が許さない・・


 「それで、無謀な一騎打ちに持ち込もうとしたのか・・」

 クラウスとしては、相手が乗ってこなければ、それでも良かったのかも知れない。正体不明の敵は、結局は巣穴からは出てこなかった。つまりは英雄と直接戦うことを恐れたと、部下達は思うだろう。

 もし万が一、敵が一騎打ちに乗ってきたら、その時は雌雄を決して、勝てば良い・・


 「ロザリオ様が名乗りを上げた事により、クラウスに勝ちは無くなりました」

 代理の騎士を倒しても、大勢に影響は無い。慎重な敵の親玉は、最後まで安全な場所からアンデッドを操って、クラウス側の戦力を、少しずつ削っていくだろう・・


 「ですので、あの戦いには、両者の名誉しか掛かっていなかった・・」

 騎士の馬上試合なら、ランスで突き合って、落馬した方が負けになる。両者が同時に落馬したときのみ、剣による打ち合いが発生する。

 クラウスとロザリオの場合は、異種騎獣戦だったので、どちらが先に一撃を入れたかで勝負が決まる。


 『だが、先に落馬したのは私だ・・』

 「騎乗したままで、マーボーに縦回転させたんだって?」

 『不覚だった・・』

 それは、目の前に五体投地するよね・・


 『だから、あの蛮族の英雄が、愛騎が動けなくなったときに素直に負けを認めたのを見て、剣を振り下ろせなかったんだ・・』


 「相手の潔さに比べて、自分のボケが許せなかったと・・」

 『クッ・・』

 「それで格好の良い事を言って、誤魔化してきたと・・」

 『ククッ・・』

 「あまつさえ、マーボーに水中呼吸の呪文が付与されていないことに気付かずに、溺れさせそうになったと・・」

 『クッ・・殺せ!いっそ殺してくれ!!』


 まあ、撃退でそれなりにDPは回復できたから、吸収できなかったのはそれほど問題にはならないけどね・・

 「ではなぜ、審議を?」

 「あ、いや、捕獲した蛮族戦士をどうしようかと思って・・」


 「『そっち?!』」

 


 流砂に嵌って窒息したのが5人、桟橋で落水したのが2人、ボートで矢衾になったのが4人いた。

 このうち、5人は蘇生出来なかったので、そのまま吸収したのだが、残りの6人は息を吹き返したのだ。

 

 「人族は眷属化できないから、放逐かなあ・・」

 「今ならまだ本隊も湖畔に居るようですし」

 クラウス達は、主にトナカイの回収と治療で、岸から離れた林の中でキャンプ中のようである。逃げ出したトナカイは、指笛に応じて戻ってきているが、無事だったのは6頭もいないようだ。


 という訳で、まだ意識の戻らない6人は、身包み剥いでボートに乗せて岸辺へと送り出した。

 漕ぎ手のいないボートが2艘も流れてくれば、クラウス達が気がついて回収してくれるだろう・・


 「さて、サンタがDPを運んでくれたから、色々出来る様になったけど、まずは調査班に遠話だね」

 「サン・テです・・」

 『とぅっとぅるー』




 その頃、最北湖から南下する一人のハーフリングがいた。


 「あんなのが居るなんて、予定が滅茶苦茶だよ・・」

 ハーヴィーは、クラウスが一騎打ちで負けた瞬間に、あの場所から逃げ出していた。


 「太陽のクラウスも、前評判よりは弱かったなあ・・やっぱり脳筋だけだと搦め手に弱いよね」

 ぶつぶつと独り言を呟きながら、夜の森を移動して行く。湖のアンデッドや、いまや敗残兵となった蛮族の戦士達に見つかると厄介なので、今のうちに距離を稼ぐ算段のようだ。


 「次は誰に話を持っていこうかな・・敵がアンデッドなら教会関係だけど、ボーンサーペントの素材ごと浄化されても困るよね・・」


 ハーヴィーは、未だに諦めていないようである・・・




  フロストリザードマン・クラン「不凍湖の龍」居住地にて


 「墓場の守護者は、見当たらないか・・」

 凍結湖から戻って来た第一機動部隊と、クラン周辺を偵察させた配下の報告を聞いて、族長のリュウジャは考え込んでいた。


 「ギャギャ(足跡を辿って、地下洞窟への入り口までは追跡できたんだが、その先は俺達では入れなかった・・)」

 ミイラの軍団を発見できなかったアップルは、一旦、索敵を諦めてリュウジャの所へ戻って来ていた。

 今後の方針を決める為にである。


 そこにリュウジャの配下の幹部が走りこんで来た。

 「頭!水温と水位が下がった原因がわかりやした!」

 「そうか!それで対処は可能か?」

 リュウジャにそう聞かれて、幹部の顔が曇る。


 「それが、あっしらでは手の施しようが・・」

 「結局、原因はなんだったんだ?」

 「へい、不凍湖の下を、でっかいワームが掘り抜いていきやがったんです」


 「ワームだと・・そのせいで水位が下がっていったのか・・」

 十数年に一度ぐらいは、その手の災害を聞くことがあるが、まさか自分のクランが被害に合うとはリュウジャ自身も想定していなかった・・


 「ギャギャ(そのワームはどこに行ったのだ?)」

 アップルが冷静に指摘した。

 「どうやら、北北西の方向へ抜けていったようで・・」

 幹部は自信なさげに答えた。


 「ここから北北西というと・・おそらくは凍結湖・・」

 「ギャギャ(俺もそう思う・・)」


 溶けないはずの氷が溶けた異変、そしてミイラの軍団などの動向が、全て一点に集約していた。


 「あそこで何が起きているのか・・」

 リュウジャは、次の一手をどう打つか決めかねていた・・


 アップルリーダーに遠話が届くまでには、いま少し時間が必要であった・・・




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