表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
437/478

叛乱の萌芽

大変遅くなりました。日を跨いでしまったことをお詫びいたします。

 青水晶の間の床を突き破って出現したフロスト・ワームは、獲物を求めて頭を大きく揺らしていた。

 巨大な芋虫の様な胴体に、硬い頭部、その先端には大きな顎がついており、蜘蛛の様な複眼が、一斉に周囲を睥睨していた。

 フロストワームは、足元に居るオババと2体の骸骨守護者を見比べると、その巨体を叩きつけるようにオババへ圧し掛かってきた。


 「カタ!(オババ様!)」

 フロストワームの体重を乗せた大顎の一撃が、オババを打ち砕こうとしたとき、27番が盾を掲げて割り込んできた。

 しかし、その捨て身の盾受けも、超巨大サイズのワームの攻撃の前には無力であった・・


 半ば突き飛ばすようにオババとの位置を入れ替わった27番であったが、盾は一撃で粉々に砕け散り、体勢を崩した所で、ワームの大顎に挟み込まれる。

 「27番、逃げるんじゃ!」

 オババの叫びも虚しく、掬い上げると同時に閉ざされた大顎は、27番の腰の骨を噛み砕いた・・


 バキンッ 氷柱が折れるような音が響き渡り、上半身だけになった27番が、床に放り出された・・


 「あのれ・・1番・4番・9番・15番・・稼動せよ!ワームを倒すのじゃ!!」

 オババは、制御容量を無視して、ボーン・ガーディアンを一斉に稼動させた・・


 「・・カタ(・・オババ様・・それは・・危険・・)」

 僅かに動く27番が、何かを訴えようとしていた。


 「どちらにしろ、ここを破壊されれば守護者のコントロールは不可能になるのじゃから、一緒じゃよ!」

 オババは、そのままシステムを作動させた。


 蒼い水を湛えた地底湖から、続々と骸骨の守護者達が姿を現した。


 しかし、彼らは武器を構えると、床でもがく27番の頭蓋骨に止めの一撃を振り下ろした。


 「何をするんじゃ!仲間殺しをするなど、狂ったか!」

 オババの叫びを、1番と呼ばれた守護者がせせら笑った。


 「カタカタ(笑止・・仕える者をあっさり替える変節漢など、仲間でもなんでもない・・)」

 その後ろから4番が、オババの横に立つ23番に詰問した。

 「カタカタ(お前はどっちにつくんだ?返答次第ではこいつと同じとこに送ってやるぞ・・)」

 そう言って、動かなくなった27番の背骨を踏みつけていた。


 「カタカタ(・・頭頂部の尖りたるは、反骨の相・・)」

 だが、23番は相変わらず宙を見つめながら、ブツブツと何かを呟いていた。


 「カタカタ(放っておけ、そいつは昔から何を考えているか分からない奴だった・・)」

 9番が、他の2体を宥めた。そして最後尾の15番に尋ねる。

 「カタカタ(最後まで迷っていたが、決心はついたのか?」


 「カタカタ(私は・・私は・・)」

 15番は湖底から出てくると、砕かれて足蹴にされている27番を見つめていた。



 その間にも、フロストワームは暴れまくり、青水晶の間を破壊していった。

 「ここが壊されれば、お主達も戻る場所を失う事になるのだぞ!」

 青水晶の間の地底湖は、ボーン・ガーディアンの保存液であり、修復場所でもあった。ここが失われれば、やがては朽ち果てて土に戻る事になる・・


 「カタカタ(元より死ぬ覚悟ぐらい無くては、下克上など出来ぬよ・・)」

 「カタカタ(我等の目的は復讐にある・・)」

 「カタカタ(支配力が完全に無くなった時、貴女の命運も尽きる・・)」

 1番・4番・9番は、オババへの敵意を隠そうともせずに、フロストワームの破壊を放置していた・・


 「そうかい・・そこまで先代の魔女に忠義を尽すって言うなら仕方ないね・・このデカ物も、お前達の誰かが召喚したのかい?・・」

 「カタカタ(いや、待機中の我々には、そこまでの行動は取れぬよ・・)」

 「カタカタ(全ては協力者に委ねた結果だ・・)」

 「カタカタ(思った以上に良く動いてくれたようですね・・)」


 「なるほどのう・・誰だか知らんが、要らぬお節介をしてくれた者が居るようじゃな・・じゃが、ワシもタダで死ぬわけにはいかぬのじゃよ!」

 そうオババは叫ぶと、呪文を唱え始めた。


 未だに制御者には手出しの出来ない3体は、ただ見守っているだけであったが、フロストワームは魔力の集中を感じ取ったのか、オババに向けてブレスを吐いてきた。

 「カタカタカタ(・・これは避けきれません・・9割の確率で死亡・・)」

 巻きこまれた23番が、絶望的な数字をはじき出した・・


 「カタ(・・もし運命が覆るとしたら・・)」


 そして全てが、凍てつく吐息で白く塗りつぶされた・・・



 「・・・見よ、これが汝のあるべき姿なり、ホールド・モンスター!(怪物硬直)」

 ワームのブレスの中から、オババの詠唱が木霊した。

 起死回生の呪文がフロストワームの動きを止める。


 「カタカタ(馬鹿な!あのブレスを受けて詠唱を継続するなど、出来るはずがない!)」

 4番の驚愕が、その異常さを物語っていた。

 事前に冷気耐性の呪文を付与していたにしろ、フロストワームのコールドブレスを浴びて、尚且つ詠唱を継続するのは不可能に近かった。


 「カタカタ(23番が何かしたのか?!)」

 「カタカタ(いや、そんな気配は無かったぞ・・)」


 その謎は、コールドブレスの白い幕が薄れたときに解けた・・


 オババの周囲を4体のボーン・ガーディアンが固めていたのである。

 「カタカタ(遅くなりました、マスター)」

 「カタカタ(間に合ってよかったぜ、こいつらが裏切り者ってわけだ)」

 「カタカタ(手引きする者が居たとは・・しかもシングルナンバーとは・・)」

 「カタ(・・手強い・・)」


 青水晶の間の直前で合流した4体は、敵の主力がフロストワームであることを知り、対冷気呪文を付与しまくったセイバーに、キャスターの盾を持たせて突入させた。

 セイバーは、騎士のスキルで、オババへの攻撃を自らが受け止め、詠唱の中断を阻止したのである。


 ちなみに23番は、いつの間にかブレスの範囲外に立っていた。


 「カタカタ(貴様らも先代の恩を忘れて、その盗人に味方するのか・・)」

 1番が、憎々しげに吐き捨てた。


 「カタカタ(事情はどうあれ、一度忠誠を誓ったならば、主君を謀るなど言語道断であろう!)」

 セイバーが真っ向から反論する。


 「カタカタ(俺も納得いかねえなぁ・・やり方が少し悪どくないか?)」

 アーチャーが叛乱を起こした3体をにらみつけた。


 「カタカタ(元から我等は忠誠など誓っていない・・)」

 4番は武器を構え直して、オババを護る守護者の動きを見極めようとした。オババを直接攻撃することは、まだ出来ないが、守護者同士なら殺し合いもできる・・


 「カタカタ(9番、貴女までこんな企みに加担するとは・・)」

 キャスターの嘆きに、9番が反応した。

 「カタカタ(私からすれば、シングルナンバーでありながらその老婆に傅く、貴方や7番の方が不思議でなりません・・)」


 「カタ(・・相互理解不能・・)」

 ランサーの言葉が、両者の関係を的確に表していた・・



 「カタカタ(15番と23番は、どちらに付く?・・)」

 1番が、旗色を鮮明にしろと圧力をかける。

 それまで黙っていた15番が、ポツリと呟いた。


 「カタカタ(私は・・私は、仲間と戦うのは嫌です・・)」

 そう言って、再び地底湖へと戻っていってしまった。


 「カタカタ(ちいっ、使えない奴だ・・)」

 「カタカタ(老婆に組しなかっただけ、良しとしましょう)」


 そして全員の視線が23番に集まった・・・


 「カタカタ(・・今日の一番は・・蛇使い座・・)」



 「「カタ(奴は放って置こう・・)」」


 なぜかそこだけは意気投合した守護者達であった・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ