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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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買ったけど使わない物

またもや投稿時間がずれ込んで、申し訳ございませんでした。

これは昨日分ですので、ご了承下さい。


 二手に分かれた調査班・地上部隊のうち、ビビアン率いる潜入部隊は、祠の奥へと進んでいった。

 途中に、戦闘の痕跡があり、通路の途中に空いた落し穴に、人狼の死体と、腐った死体が数体転がっている場所に到達した。


 「どうやら、ここで一当たりしたみたいさね・・」

 「人狼の損害が6、腐った死体が6、それと奥に人骨が1あるな・・」

 ソニアとハスキーが周囲を警戒しながら、戦闘の痕跡を調べている。


 「腐った死体はグールっぽいが、それで人狼が6体もやられるか?」

 スタッチが、恐々、落し穴を覗いている。穴の底に凶悪な罠が仕掛けてある可能性を考えたのだ。


 「あの、奥の人骨が怪しいさね」

 ソニアは、オークの丘で見かけた銀色の骸骨騎士を思い出していた。あのランクのガーディアンなら人狼6体でも倒せそうな気がした。


 「たぶん、ボーン・ガーディアンね・・オババが良く使っていたから・・」

 ビビアンの説明にハスキーがさらに尋ねた。

 「それはどれくらいの強さで、数はどれくらい居るんだ?・・」


 「強さは色々なんだけど、大体、中級冒険者と同じぐらいかも・・数は15体ぐらいって聞いたけど、今はもっと減ってるかも・・」

 「アンデッドやゴーレムの類なら、増えてる可能性はないのかよ?」

 スタッチが気になった所を確認する。


 「無理だと思う・・かなり特殊な存在らしくて、オババも新しいガーディアンは生み出せないって言ってたから・・」

 無論、ビビアンがここを去ってから、オババが作成方法を発見した可能性もあったが、それならこの通路の防備に、もっと大量に投入されているはずである。

 それとも他の重要拠点に配備して、ここまで手が回らなかったのだろうか・・


 そこまで考えて、ビビアンは、背中の薄ら寒い気配が無くなっているのに気がついた。

 慌てて周囲を見渡すと、落とし穴の底で、人骨に向かって独り言を喋っている見習い死神を見つけた。


 「うんうん、それは残念だったデスね・・ほうほう、お仲間が追われて奥へ逃げたデスか・・」

 

 よくよく目を凝らすと、デスの前の人骨から黒い霧のようなものが浮かび上がっているのが見えた。

 「了解デス・・貴方の魂が迷わず冥府へ辿り着けますように・・」


 そう呟いて、デスが大鎌を振るうと、黒い霧は霧散していった・・・



 「ちょっと、何、勝手に営業してるのよ!」

 「いやあ、誰かが呼んでいると思ったのデスが、思ったより位階の高い方で、良かったデスよ」

 一仕事終えて、満足気にデスが答えた。


 「何か話していたようだが、役立つ情報はあったか?・・」

 ハスキーの問いにデスが答える。

 「やはり、ここで防衛戦があったそうデス・・人狼はロード級一人と女神官を含めた16体で侵入してきて、うち6体を倒せただけだそうデス」


 「あいつはワーウルフ・ロードかよ・・」

 スタッチが、傭兵部隊の隊長を思い出して顔を顰めた。

 「あの泥棒猫が神官なのね・・」

 ビビアンが、狼娘を思い出して、怒りを再燃させている。


 デスの話は続いた。

 「どうやら、このダンジョンは3方向から侵入されているらしく、対応が間に合っていない様デス。コアルームも危険な状態だそうデス」


 「それを早く言いなさいよ!」

 ビビアンが、ユニコーンの背に乗って、すぐさま駆けていこうとするのをハスキーが止めた。

 「一人で先走るな・・全速で行かれたら俺達は追いつけない・・」


 「でも、コアルームが占領されたら、オババが・・」

 焦るビビアンを宥めつつ、デスに聞いた。

 「人狼側からは何か聞けないのか?・・」


 「駄目デスね・・彼らの魂は、とうに信仰する月の女神の元へ旅立っているデス・・ただ、守護者の一人が、人狼に追われて逃げているそうデス」


 「コアルームが落されたら負け、人狼を放っておくのも危険か・・」

 ハスキーの迷いをビビアンが断ち切った。


 「アタシがコアルームに増援に行くわ!ここからだとかなり距離があるけど、ニコの足なら間に合うはず」

 ビビアンの声にユニコーンのニコも頷いた。

 「ヒヒィン」


 「私も及ばずながら力をお貸しするデス」

 「いや、アンタはいらないから」

 「そうは言っても、先程の方との約束もあるデスよ・・」

 どうやら冥府への送魂を納得させる為に、何かを請け負ったらしい。


 フェアリードラゴンのラムダは、相変わらず何を考えているのかはわからなかったが、ビビアンの頭上から離れる様子はなかった。

 「・・Z・Z・・」


 ビビアンと1頭と1体と1匹を見て、ハスキーは頷いた。

 「絶対に無理はするなよ・・」


 ビビアンも頷き返した。

 「ハスキーもね・・死んだら許さないんだから・・」


 お互いの目をじっと見つめあった後、ビビアンはニコに囁いた。

 「ニコ、行って・・」

 「ヒヒィン」


 彼女らの姿は、曲がりくねった通路によって直に見えなくなった・・・



 「こっちも行くぞ・・」

 ハスキーの声に残りの二人が答えた。


 「準備は出来てるぜ、相棒」

 「人狼10体ならまだしも、ロードと神官がやっかいさね・・」

 そう言うソニアの顔は、セリフとは逆に、強敵に出会える喜びに満ちていた。


 「相手は人狼だが、準備はいいか?・・」

 「ちゃんと銀の短剣は持ってるぜ」

 スタッチは、背負い袋の底から2本の銀の短剣を取り出した。


 「使うあてが無くても、武器屋で見かけるとつい買っちまうんだよな・・」

 ダンジョンで身包み剥がれた際に、装備一式も失っていたが、最近は収入も潤沢にあり、一通り買い直す事が出来た。その際に、もういらないかと買い直しを迷った銀の短剣だったが、買って正解だったようである。


 「俺も無意識に購入していたらしい・・」

 ハスキーも腰に下げたベルトポーチから、毒草の束を取り出した。

 「ウルフズベイン」トリカブトの別名である。

 トリカブトは、その根に強い毒性があり、毒薬の材料として有名だが、その茎葉の部分を束にして乾燥させたものは、人狼避けのお守りとして扱われていた。

 おまじないに過ぎないとか、思ったより効くとか噂され続けた、その効果の程を試してみる機会がやっと来たというわけだ。


 「でもよ、それを持ってる相棒は、平気で狼娘に擦り寄られていたじゃねえか」

 「擦り寄られてはいない・・」

 ハスキーは懸命に否定するが、コナを掛けられていたのは間違いなかった。


 「ウルフズベインは、お守りではなくて武器さね」

 「「武器?」」

 ソニアの意外な発言に、二人は声を揃えて驚いた。


 「その毒草の束で叩くと、人狼が嫌がって逃げ出すさね」

 「「ほーー」」

 アンデッドに対する聖水みたいな働きがあるらしい・・


 「狼娘をムチで叩く相棒ねえ・・」

 「ビビアンには見せられない光景さね・・」

 二人のからかいを、ハスキーは無視してソニアに尋ねた。


 「ソニアは何か持っているのか?」


 「勿論さね・・アタシはコレとコレさ」

 ソニアが背負い袋から取り出したのは、ニンニクの束と、白木の杭であった。


 「「それはヴァンパイアだ!」」


 スタッチとハスキーの叫びが、ダンジョンの通路に木霊していった・・・






 


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