恐竜が湖にやってくる
突然のトラブルで投稿が遅くなりました。申し訳ございません。
凍結湖ダンジョン、湖底口付近にて
「カタカタ(それで、湖上の状況は?)」
セイバーこと7番が、配下のシャドウに報告を求めた。
「カゲカゲ(巨大型はまだ、暴れています。中型が沢山走り回ってます)」
シャドウの認識能力では、ギガントホーンドトードが巨大型、フロッグマンは中型としか判別できないようだ。
「カタカタ(巨大型の特徴は?)」
「カゲカゲ(4つ足で角が生えています・・羽はないです)」
間違ってはいない・・ただし、両生類っぽいとか、水掻きがあるとか、舌を伸ばして捕食しているとかが、抜け落ちているだけである・・
「カタカタ(角があるということは、竜種か?4足歩行で、羽がないとなると、地竜もしくはアースドレイクの類かも知れんな・・)」
セイバーは限られた情報から、巨大生物の正体を推測した・・間違っていたけれども・・
「カタカタカタ(地竜なら水中は苦手だろう、だが、周囲の地面を掘り抜いて来る可能性はあるか・・よし、シャドウ達は、この周辺の地下通路を重点的に監視せよ。巨大型が接近するようなら、速やかに通報せよ)」
「「カゲカゲ(了解です)」」
セイバーは一人で、湖底からの入口を守ることになった。
「カタカタ・・(フロッグマンなら私一人でどうとでもなる・・問題は地竜だな・・アースドレイクなら勝ち目はあるが、そう都合良くは行くまい・・)」
悲壮な決意を胸に秘め、セイバーは敵を待ち受ける・・
それが、全くの勘違いだとも知らずに・・・
そして湖上では、同調召喚されたギガントホーンドトードが、未だに暴れていた。
「退避、退避するケロ」
「ここは俺に任せろケロ!・・・ギャー」
「馬鹿が食われたケロロ!」
暴れていると言っても、巨大角蛙は、ほとんど移動はしていない。
召喚された場所から動かずに、舌を伸ばして射程範囲のフロッグマン達を捕食しているのだ。
賢く射程圏外に逃れた者は、遠巻きに見張っているのだが、中には何を勘違いしたのか、突っかかっていく蛙人がいる。
「やあやあ、我こそは風車の池で一番の勇者なり!いざ尋常に勝負するケロ・・・ギャアーー」
「ドン・キ・ケーロが殺られたケロ」
「争いはしないで!同じ生き物だもの、話し合えば分かるケロ・・ギョエー」
「風の池のケロシカが食われたケロ」
「どうやら俺の出番のようだケロ・・・この封・・・ギュロローー」
「あれは誰ケロ?」
「知らない奴ケロ」
「口上も言い切れなかった寂しい奴ケロロ」
だが、彼らは忘れていた。無謀に突撃する者がいるから、巨大角蛙は動かずに居るのだということを・・
手近に食べるものが無くなれば、億劫でもその巨体を動かす事になる・・
暫く待って、これ以上は餌が勝手に寄ってくる事が無いと判断したギガントホーンドトードは、のそのそとヒキガエルの様に歩き出した。
「う、動いたケロ!」
「こっちに向かって来るケロ」
「もうダメだケロロ・・」
恐怖に足を竦ませて、震えるフロッグマン達の前に、三叉矛を構えた、半魚人が立ちはだかった。
「俺様の手下を、これ以上殺らせるわけには、いかねえんだよ!」
「あ、兄貴ケロ!」
「待ってましたケロ!」
「来ると信じていたケロロ!」
フロッグマン達の期待を一心に集めて、ヴォジャノーイは巨大角蛙と対峙した・・
「例えデカくても、水に棲んでる事に変わりはねえ・・どちらが力が上か、気づかせてやれば従うはずだぜ・・」
ヴォジャノーイの左右に広がった魚眼と、ギガントホーンドトードの斜め後方まで見れる蛙眼が交錯する・・
「そらした方が負けるケロ」
「野生の掟ケロ」
「でもあれ、視線が合ってるケロロ?」
蛙人達が固唾を飲んで見守る中、戦いの決着がついた。
プレッシャーに負けた側が、ついに目をそらしたのだ・・
そして、前進してきた前足で、無残にも踏み潰された。
ベシャッ
「あ、兄貴が負けたケロ!」
「そんな・・睨めっこで無敗の兄貴がケロ・・」
「口ほどにもない奴ケロロよ」
ヴォジャノーイを踏み潰した巨大角蛙は、それを無視してフロッグマン達に接近していった。
「どうやら潮時のようケロね」
「時間稼ぎにもならなかったケロよ」
「見せ場まで用意したのに、期待外れケロロ」
そして蜘蛛の子を散らすように、逃げ去っていった。
残ったのは、ある程度食べて満足したのか、その場に蹲って居眠りし始めたギガントホーンドトードと、湖岸の泥に埋まった半魚人の魚拓だけであった・・・




