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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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銀の小剣と狼の大剣

諸事情で正式な更新は夜になります。サブタイトルもその時に・・

大変遅くなりました。23:50頃、加筆更新いたしました。


 デスの闇魔法により、一時だけその場に具現化したメイドの幽体は、消えて行く中で、無言で他の3人に頭を下げていた。

 

 「ああ、大丈夫だ・・」

 ハスキーが呟くと、静かに微笑んで消え去った・・


 調査班は方針が決まると、慌しく構成を変更した。

 もちろん遠話によって、対策本部の指示があり、幾つかの変更の許可を得てからであるが。

 

 「オラは羊を連れて戻るだ」

 チョマカは、戦場に羊の群れを連れて行くことを反対し、その場で家畜を受け取ることにした。

 ドルイドであり、牧畜の技能持ちであるチョマカなら、一人でも群れを率いて戻ることが可能だったが、安全の為に、狼チームからチョビとチュンリーが護衛に付くことになった。

 また、本人達の希望でエルフのハイレンジャーが一人、案内役として同行することになった。


 定員は1名なので、そこでも熾烈な争いが繰り広げられたという・・

 勝利したハイレンジャーは、ビビアンから羊飼いの杖と、羊毛の鬘を渡され、あっという間に羊に囲まれて満面の笑顔である。

 負けた方は、地面に崩れ落ちて、己の不運を嘆いていた。


 「後で少佐殿に報告だな・・」

 羊飼いの代役の争いに、そもそも加われなかった小隊長は、舞い上がる部下を見ながら、ボソっと呟いた。

 一人で至福の時間を味わった、ハイレンジャーには、作戦終了後、地獄の特訓が待っているようである・・


 しかし、小隊長は知らなかった。モフモフ成分の枯渇した最前線で任務についていた上官の怒りは、熊に跨れた自分達にも及ぶということを・・・



 「さあ、凍結湖に向けて出発よ!」

 いつの間にか調査班のリーダーに納まっていたビビアンが、号令を下した。

 

 「アタシについて来なさい!」




  凍結湖ダンジョン、祠の入り口付近にて


 銀の小剣を両手に振りかざした、アーチャーこと12番が、孤軍奮闘して、人狼部隊の侵入を阻止していた。

 僅か数分とはいえ、十数倍の戦力を押さえ込んだのであるから、殊勲と言っても過言ではない。

 本人は、その代償としてボロボロになっていたけれども・・


 「カタカタ(いい加減、来ても良さそうなもんだが・・)」

 通路の後方の気配を探るが、味方が駆けつけて来る様子はなかった・・

 実は、敵が人狼と分かって、増援に来るはずだった13番が、銀の短剣を探しに武器庫へと立ち寄っていた。元暗殺者の13番には、予備で銀の武器を持つ習慣など無かったのだが、その事はアーチャーには分からない。ただひたすら、遅い援軍を待ち望んでいるだけであった・・


 対して人狼側も焦り始めていた。

 防衛のし易い地点を占有されているとは言え、たった一人の守護者を突破できないでいるからだ。

 ここで時間を浪費すると、奇襲をかけた意味が半減する・・

 積極的に攻撃を仕掛けているのだが、上手く捌かれてしまっているのが現状だった。


 基本的に人狼の戦術としては、素早い動きで敵を翻弄し、急所に牙を立てる事が多い。相手が人族ならば、少しでも傷を与えれば、呪いに感染する可能性があり、それに怯えて動きが鈍くなるのだ。

 ところが、今回の敵は骸骨の守護者であった。

 しかも盗賊の技能を保有しているようで、人狼と遜色ない素早さで攻撃をかわし、銀の小剣で噛み付き攻撃に対して武器受けをしてくる。

 油断すると、受けた小剣の刃で、通常攻撃以上のダメージを負わされる事になる。

 しかも骸骨は獣人の呪いに掛かることは無かった。


 何度か顔面に手痛い反撃を食らうと、目に見えて人狼の先鋒達の動きが鈍ってきた。

 銀の小剣を警戒し過ぎて、効率的な攻撃ができなくなっていた。


 「カタカタ(襲撃の圧力が下がってきたぜ・・このままなら護りきれる・・・」

 アーチャーが、明るい未来を思い描いたとき、それを打ち砕く声が響いた・・


 「道を開けろ、俺が出る・・」

 そういって人狼部隊の隊長である、ヴォルフが背中の大剣を抜きながら、前に進み出てきた。


 「カタカタ(おいおい、人狼に武器は反則だろう・・)」

 ただでさえ俊敏な動きと異常な筋力を保持している人狼が武器を手にすると、どうなるのか・・


 「カタカタ(畜生、隙が見当たらねえぜ・・)」

 傭兵部隊の隊長の構えは、不慣れな様子もなく、ぴたりと決まっていた・・

 「カタカタ・・(こいつ・・ただの人狼じゃねえ・・!!?)」


 アーチャーの心の乱れを見透かした様に、ヴォルフが大剣を振るった。

 思わず左手の小剣で受けてしまったが、それこそがヴォルフの狙いであった・・


 ギインと激しい金属音が響くと、アーチャーの左の小剣が、根元から折れてしまった。

 元々、銀で作られた武器は、耐久性能が劣化する。

 酷使された小剣に、ヴォルフの一撃は止めを刺した形になった・・


 「カタカタ(人狼のクセに頭脳的な戦闘を仕掛けてきやがるぜ・・)」

 「悪いな、そちらの都合に付き合っているわけには行かないのだ・・」


 ちなみに会話が成立しているようだが、守護者の言語は仲間内とオババにしか理解されていない。

 お互いに、相手が喋りそうな言葉に脳内変換して、返事を呟いているだけであった・・



 「カタカタ(ヤバイぜ、本気でピンチだ・・)」

 「これで終わりだ!」

 鋭い踏み込みから、大剣が唸りを上げて振り下ろされた。


 ギイイイン


 2度目の金属音が響き渡り、アーチャーの右手の小剣も砕け散った。

 銀の武器を失った敵に対して、人狼部隊は、その包囲網をじわりと狭めていった・・・


 「カタカタ(どうやら、ここまでのようだぜ・・)」

 ジリジリと下がりながら、アーチャーは予備の武器、というより、慣れ親しんだいつもの武器に持ち替えた。

 だが、普通の敵なら十分な威力を発揮する黒鋼の小剣も、人狼相手には、些か分が悪かった・・


 アーチャーの姿勢が、逃げ腰になった事を見抜いた人狼部隊が、一斉に襲い掛かった・・・



 「カタカタ(ほい、人狼ご一行様、ご案内!)」


 途端に、通路の床が抜けて、飛び込んできた人狼が4体、落とし穴に落下していった。


 「野郎、誘っていやがったな!兄さん、どうする?!」

 「慌てるな、穴の底に銀の槍でも用意してない限り、大した傷を負うことも無い・・すぐに跳び出してくるさ・・」


 だが、ヴォルフの予想は覆された。

 落とし穴の底には、銀の槍の代わりに、グールが6体待ち構えていたのだ。


 罠に嵌って、体勢を崩している4体の人狼に向かって、死者を冒涜する鉤爪と牙が殺到した。

 

 その攻撃のほとんどは、厚い毛皮に阻まれてしまったが、掠り傷でも受ければ、グールの特殊能力が発動して、恐怖により身体が麻痺してしまう・・

 そしてその好機を、かの者が見逃すはずもなかった。


 「カタ(推参・・)」


 一瞬で、4体の人狼が絶命した・・・









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