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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
407/478

煤けているのは俺の背中のようだぜ

途中です。夜に加筆する予定です。

23:20頃に加筆修正いたしました。

 ヘラ達が、毒消し薬の調剤の準備に取り掛かっている頃、フィッシュボーンの中骨の辺りの一室では、リュウジャとハクジャの会談が行なわれていた。

 本来なら、族長クラスの来訪者であるから、奥の間へ通すのが仕来りではあったが、今は、あそこは白き魔女達に占領されている。

 仕方なく、広めの倉庫を急遽、会議室に仕立て上げた。


 「そちらも落ち着いた頃だと思っていたが、族長が直接出張ってくるほどの厄介事でも起きたかね?ジャー」

 「いや、他人任せにはしたくなかっただけで、事件が起きたわけじゃないさ・・」

 簡素な部屋に仮設されたテーブルに腰掛けて、お互いの出方を探っていた。


 ハクジャから見れば、いつも同行していたタングステンが居ない事から、ドワーフがらみで厄介事の相談に来たと思っていた。例えば、お荷物のニッケルを引き取ってくれとか、採掘士のマンガンを貸して欲しいなどといった相談である。

 リュウジャは、単に酒の無心で側にドワーフが居ると、やり辛いので一人で来たに過ぎなかった。過剰な要請は、払いきれない借財を負う危険があった。

 無論、護衛は連れているが、彼らは常に付き従っているので、後ろに佇んでいるのが当たり前になっていた。


 そこへカジャがお茶を運んで来た。

 「どうぞ・・粗茶ですが」


 完璧な作法で、人数分の麦茶を置いていくカジャの、メイド服から覗く首筋の艶やかさに、護衛の二人が同時に息を呑んだ・・

 「おや、カジャ姐さん、いつもと雰囲気が違いますね・・」

 リュウジャだけは、冷静に、いつもと違うカジャの様子を指摘した。


 「湯上りなので、お目汚しでしたら下がりますけど」

 そう言って、ニッコリと笑うと、後ろの護衛二人が、ブンブンと首を横に振って否定した。

 それを見たリュウジャが、苦笑しながら答えた。


 「ここで姐さんを追い返したら、俺が後ろの二人に尾を踏まれそうですよ・・」

 あきらかに、ハクジャの応援としてやってきたカジャは、護衛と同じように後ろに立つと、会談の行方を見守っている・・


 その後も、お互いが受け入れたドワーフの様子だとか、マンガンが脱出艇から現れた時の様子などを話し合ったが、リュウジャは本題を切り出すのをためらっていた。

 なぜなら、近況のやり取りをした際に、こちらでも酒不足に成り掛けているのを察したからである。


 『このままお茶を濁して退散するしかないか・・』

 心の中で、リュウジャが諦めかけたとき、カジャがそっと呟いた。

 「お酒が無くてお困りのようですわね・・」


 「なぜ分かりました?・・」

 「お顔に出ていましたから」

 「そうならないように、気をつけていたんですがね・・」

 「もちろん、リュウジャ様のお心を読むのは至難の技です。でも後ろのお二人は・・」


 無言で警護に立っていても、会談の内容は聞えている。

 その僅かな表情の変化から、彼らが何を気に病んでいるのかを読み取ったというのである。


 「なるほど・・湯上りというのも彼等の警戒を緩める為の策でしたか・・」

 「いえ、それは偶然です」

 蜂蜜水を飲みながら、乱暴狼藉の罰として湯船の掃除を言いつけられたワタリの監視をしている最中の呼び出しだった。


 『乱暴狼藉されたのは、オイラっすよ・・』


 目の周りに丸い青痣を作り、頬をパンパンに膨らませたワタリは、デッキブラシもどきで、広い浴槽を磨いていた。ちなみにデッキブラシは、10フィート棒の先に、横板を打ち付け、小枝を突き刺した手作り品である。


 「ホラホラ、そっちの隅に水垢が残ってるよ、ジャー」

 カジャの代わりに監視員を頼まれたベニジャが、洗い残した汚れを指摘していた。


 「まるで、鬼姑っす・・」

 小声で呟いたワタリの愚痴だったが、しっかりとベニジャに聞かれていた。

 「お仕置きされてるのに、良い度胸だね・・皆~、明日の掃除もワタリがしてくれるそうだぜ、ジャジャー」

 「「「は~~い♪」」」


 「トホホホホ・・」


 褌姿で捻り鉢巻をした、三助の格好が良く似合うワタリであった・・・



 

 会談の現場では、リュウジャが、来訪の主目的を話し始めていた。

 「実は、用意していた1週間分の酒を全て飲み干されてしまって・・」

 「ああ、こちらも似た様なものだな、まあ、いざとなればマスター様がなんとかしてくださるが、それに甘えているわけにもいかぬしの、ジャジャ」


 「やはり、酒も能力で作り出せるのか・・クランから追加が届くまでの間、なんとか都合をつけてもらえないだろうか・・」

 「ううむ・・マスター様もお忙しいからのう・・ジャジャー・・」


 そう言い繕って、ハクジャはカジャの顔を見た。

 最近はコアルームに詰めていることの多いカジャなら、DPに余裕があるかどうかも知っているに違いないからである。

 それに気付いたカジャは、少し悩んだ振りをすると、念話でコアに連絡をとった。


 『あろは~』


 コアは湯上りの1杯で酔っ払っていた・・

 『そうでしたね・・ご主人様に代わってください』

 『おまかせあれ~』


 『凄く心配です・・』


 それでも念話の切り替えは、してくれたようである・・


 『ご主人様、少々宜しいでしょうか?』

 『いや、こちらは最北湖のロザリオだが・・』


 やはり、酔っ払いは信用してはいけなかったらしい・・


 『すみません、間違いのようです』

 『そうか、やっと呼び戻してもらえるのかと、期待したのだがな・・』

 いつになく沈んだ守護者の声に、つい、カジャは尋ねてしまった。


 『お役目が辛いですか?・・』

 『いや、最近忘れられてる気がするのだ・・しかも、ここにはモフモフが居ない・・』


 カジャはそっと念話を切った。

 『あちらは大丈夫なようですね』


 再度、コアルームに念話を送る・・

 『コア様、ご主人様です、繋げて頂きたいのは』

 『てへっ♪』


 『ご主人様、聞えますか?』

 『キュキュ?』


 『コア様・・態とじゃないですよね・・』

 『ぴゅうーー』

 『逃げられた?!』


 マスターに念話が繋がったのは、さらに3度の混線を経たあとであった・・


 『キュ??』


 



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