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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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ドワーフの魔改造村

  三日月湖、ドワーフ移住村にて


 元はフロストリザードのクラン「三日月の槍」の居住地であり、彼らが逃げ出してから無人だった湖畔の居住区は、今は整備されて、ドワーフの移住先になっていた。

 本来なら、もっと湖沼地帯の中心部に近い場所に招くはずであったが、急な事で、受け入れ側の準備が間に合いそうになかった。そこで、丁度空き家だった、三日月湖南岸のここが、一時的な受け入れ先に選ばれた経緯がある。


 この移住村には、ドワーフ鉱山を脱出してきた18人のドワーフと、「不凍湖の竜」のクランから派遣された12人のフロストリザードが住むことになる。

 それ以外に、現在はクランリーダーのリュウジャと、その護衛2名、さらにドワーフ単独脱出組のタングステンとニッケルが、顔合わせも兼ねて訪れていた。


 話は、二手に分かれたドワーフキャラバンの、もう片方が移住先に到着した時に遡る・・・



 「よう、モリブデンじゃないか、お前がキャラバンを引率してきたんだってな」

 「おう、タングステンか、お前も良く生き延びたな。そのお陰でこうして移住先が確保できて、助かってるぞ」

 友人らしく、肩を叩きながら旧交を温める二人を見ながら、リュウジャが声を掛けた。


 「積もる話もあるだろうが、まず主要なメンバーだけでも紹介してくれ・・」

 「ああ、すまん、こっちがフロストリザードマンの世話役のリュウジャだ。そしてこいつが、キャラバンの団長だったモリブデンだ」

 タングステンの紹介で、トップの二人が握手をした。

 

 「ようこそ、三日月湖へ。とはいえ、居住区も借り物なので、大きな顔も出来ないんだが・・」

 「世話になる。これだけの住居を用意してもらえたんだ、文句を言ったら罰が当たるぜ」


 その後、各グループのリーダーの紹介と、リザードマン達の顔合わせがあり、最後に部屋割りを決めてから解散になった。

 荷物を運び込んだら、歓迎の宴会があるという。


 「ギャギャ(では、我等はこれで)」

 役目を果たした第一機動部隊が、帰還しようとしたが、ドワーフとリュウジャの両方に引き止められて、宴会の席に呼ばれることになった。

 ドワーフにとっては長旅を共にした相手であるし、リュウジャにしても、ちゃんとドワーフを歓待している所を見て欲しいのだろう。

 タスカー達は、外で待機になったが、牽引アルマジロと一緒に、なかなか豪勢な食事を与えられて満足しているようだ。


 

 「こうして再び、仲間と共に酒を酌み交せることに感謝して・・乾杯!」

 「「乾杯!!」」


 宴会は、タングステンの音頭による乾杯から始まった。

 リュウジャが用意した食事は、魚料理がメインであったが、品数も豊富で、何より酒が大量にあった。

 リザードマンが造る酒は、主に雑穀のエールと山ぶどうの果実酒だったが、普段飲み慣れているものとは違う風味に、ドワーフ達は喜んで杯を重ねた。

 

 賑やかな会場の隅で、リュウジャとモリブデンが静かに酒を飲んでいた。

 「突貫工事で補修したので、あちこち手が回っていない箇所があるが、勘弁して欲しい・・」

 「いやいや、荷車で雑魚寝を覚悟していたのだから、屋根のある場所で足を伸ばして寝れるだけありがたいぜ」

 「なにせ、俺たちは床に水溜りや雨漏りがあっても気にしない質なんでな・・山の民には住みづらいかも知れないが・・」

 「どうせ我慢出来ない連中が魔改造を始めるんだ。あとはこっちで請け負うさ」

 「ああ、本職に任せるとしようか・・」


 タングステンは、キャラバンのメンバーに、移動中の出来事を聞いていた。

 「そうか、6台は辿り着けなかったか・・」

 「皆、別れたあとで蜘蛛に襲われて、全滅だったそうです・・」

 「報告は受けとるよ。ただ、セレンだけは冒険者に拾われて、助かったそうだ」

 「本当ですか?!よかった・・本当に・・」


 そしてニッケルは、独り寂しく料理をつついていた。

 「なんで誰も挨拶に来ないんだよ・・ボクは一番エライんだぞ・・・」


 

 宴会は、夜通し続いた。

 リュウジャが1週間分を想定して貯えておいた酒蔵が、空になるまで終わらなかったという・・・


 「これは読み違ったな・・早急に鍛冶で取り戻してもらわないと、酒代だけで破産する・・」

 

 リュウジャは、護衛の一人を伝令にして、クランに酒の追加を要請することにした。

 「ついでに、他のクランにも酒を融通してもらえるように交渉してくれ。鋼の武器が欲しければ、酒を出せってな・・」

 「ガッテンですぜ、ジャー」


 伝令を見送りながら、リュウジャは考えを巡らした。

 「さて、往復2日は掛かるとして、その間の酒をどうするかだが・・」

 北を見つめながらため息をついた。


 「あそこに借りは作りたくないんだがな・・」



 丁度その頃、リュウジャの本拠地である「不凍湖の竜」クランでは、族長不在の間に、大問題が発生していた。

 「湖の様子がおかしいぞ、ジャー」

 「水位が下がってやがるぜ、ジャジャ」

 「水温も微妙に下がってる気がするぞ、ジャー」

 「てえへんだ、頭にお知らせしろ!ジャー」

 「頭はいま三日月湖に出張ってる最中だぜ、ジャジャ」

 「なら、足の速いやつに繋ぎをさせるんだよ、ジャー」

 「ガッテンだ、ジャジャー」


 

 そんな事を知らない、ダンジョンでは、桃の湯のお披露目が行われていた。

 「ふあああ~~、生き返るね」

 「良いお湯っすねえ~」

 「これから寒さも厳しくなりますし、お湯が使えるのは有難いですな、ジャジャ~」


 第4階層に湧き出た温泉を、小さなプールに溜めて湯船の代わりにしてみた。

 湯量が少ないので、さらにあちこち掘削して、なんとか男湯と女湯を造ることが出来た。


 「なんで、混浴にしなかったっすか?」

 「悪ふざけして、ボコボコにされるワタリの未来が見えたからかな」

 「ロマンがないっすね・・」


 桃の湯は、二つの湯船は完全に独立した部屋に分けられているので、よじ登る塀も、穴の空いた壁も存在しない。周囲の壁は「遮断」と「隔離」を全対象で張ってあるので、転移も透過も不可だ。

 「これじゃあ、温泉の醍醐味が半分しか味わえないっすよ」

 「残りの半分は?」

 「湯上りのエールっす!」

 「それには同意ですな、ジャ~」

 「牛乳も欲しいよね~」

 「山羊が待ち遠しいっすね~」


 しかし彼らは知らない・・

 湯上りに用意された冷やしたエールは、既に全てがドワーフに飲まれてしまっている事を・・


 『うぃっく♪』



  


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