表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
40/478

警部見てください

 狂乱の灰色羆との戦いは、崖っぷちまで追い詰められたものの、なんとか勝利できた。

 でも僕らには、その余韻に浸る間もなく次なる戦いが待ち受けていたのだ。

 そう、後片付けという名の戦いが・・・


 「実際これどうしようか」

 生き埋め作戦の為に崩した正面通路は、もう単なる崩落事故現場だよね。あのときは無我夢中でやってしまったけど、今は激しく後悔している。

 「仕方ない、親方達と五郎〇チームは外から、やんまー・こまつ組は中から堀返して。崩したぶんは通路を大きく広げちゃっていいから」

 「ん」 「キュキュ」「グヒィ」

 「コアは開通したらコアルームで後片付けの指揮をとって。僕はケンチームとワタリ達とで、ヘラジカの回収にいってくるよ」

 「あい」 「バウ」 「了解っす」

 「アップルチームはコアの護衛と手伝いをよろしく」

 「ギャギャ」

 「あと、通路の気圧が下がってるから、うかつに土壁に穴開けると吸い込まれる・・・」

  ボコッ シュゴオオオ  「キュキューーーーーー」

 「・・・遅かったね」 「ん」


 丘を回りこんでトンネルの出口へ向かうと、そこには木の柵の残骸があった。

 「あちゃあ、バラバラっすね」

 「なんとかこの2本の杭だけが横板で繋がってるかな。1頭ならなんとか乗せて運べると思うよ」

 半分以下の幅になった柵をソリに仕立て上げると、ロープで引っ張って、囮に使ったヘラジカの死体を回収しに湖方面に向かう。

 

 「もう、他の獣に喰われちゃっていないすかね?」

 「可能性はあるけど、そんなに時間はたってないし、狼と羆の臭いがそこら中でしてるから、めったな獣だと、寄り付きもしないと思うけどね」

 「ですかね」


 周囲の警戒はケンチームに任せて、無駄話をしながら森の中を進んでいく。

 「そういえば気になったんっすけど、ダンジョンのトラップって、おいら達が踏んでも作動しないっすよね?」

 「うん、しないね」

 「あれ、どうなってるんすか?」

 「たぶん眷属には反応しないように安全装置が掛けられてるみたい」

 「ほへー」

 「ただ眷属が作動範囲に入ったら、一定時間のクーリングタイムを置かないと敵が入っても作動しないね」

 「ああ、じゃあ、おいらが落とし穴の上に立って、敵がきたらひょいと避けてもダメなんすね」

 「ダメだろうね。おびき寄せるなら作動範囲の外に立ってやらないと」

 「了解したっす」


 「そうそう、もう一つ聞いてもいいっすか?」

 「そういうときは、ヨレヨレのコートを羽織って、「うちのカミさんがね」って言うのがお約束だぞ」

 「へー、じゃあ「うちの神様がっすね」」

 「話がでかいよ」

 一瞬、作務衣を着た白髪の爺さんが番茶をすすっている風景が見えた気がした。


 「・・が言うには、同じ設置物なのに、木の柵は壊れたり、掘り出して移動可能なのに、罠は再利用・再復活できるのはなぜっていうんっすよ。おいらは捜査上の秘密だってつっぱねているんすけどね」

 「それは僕も思った。設置物は時間がたてば修復されると思ったんだけど、餓狼のリーダーに壊された柵が元に戻らずに、しかも破片が薪として使えたから違うんだなってわかったんだよ」

 「ほへー、そんなことがあったんすね」

 「ワタリがうちに来る前の話だね」

 「罠は修復機能付っすよね?」

 「どうかな、まだそこまで破壊された罠がないから断言はできないね。矢とか盥が射出されるタイプは、

打ち出されたものは時間がたつと消滅するから、再装てんされてるだけだし」

 「でも突き出してくる槍は毎回新品同様に研ぎ澄まされてるっすよ」

 「あれは修復というより毎回新しい槍衾が作られてるんじゃないかな。もし死体を刺さったままにしといたら、突き出た槍は戻らずに消滅すると思う」

 「ですかね」


 そうこうするうちに現場に到着した。羆は案山子に足止めされたのが頭にきたらしく、柵もヘラジカの死体も惨憺たる有様だった。

 「うへー、バラバラっすね」

 「鑑識はまだかな」

 「被害者はヘラジカのAさん牡三歳っす」

 「これだけ遺体が荒らされてるのに、流れた血の量が少ない。他所で殺されてここまで運んでからバラしたようだね」

 「殺ったのも運んだのもうちらっすけどね」

 「この爪痕は肉食獣だな、しかもかなり大型の・・・」


 「あー、まだ時間かかるみたいっすから、アズにゃんとアサっちはヘラジカ積んじゃっていいっすよ」

 「ギャギャ?(いいの?勝手にして)」

 「大丈夫、大丈夫。おいらが責任持つから運んで運んで」

 「おい、現場の判断で死体を動かしたらあとで鑑識のおやっさんにどやされるぞ」

 「はい、はい、もう死体を損壊した犯人は目星ついてるっすよ」

 「なに?逮捕令状はとったのか?」

 「犯人死亡により書類送検のみっす」

 「チッ、つまらない事件やまだぜ、なあケン」

 「バウ」

 

 バラバラになったヘラジカを集めて、簡易ソリに積んで帰宅する。囮に使った槍と毛皮も、状態のいいものは回収した。半分以上は折られたり破られたりしていたけど。

 

 「ヌシを倒したから、これからは安全に狩ができるっすね」

 「どうかなー。確かにこの地域はあの羆がテリトリーにしてたみたいだけど、いなくなったと知れ渡れば、周辺から新手の勢力が押し出してくるかも」

 「あー、そうっすね。オークとかリザードマンとか火事場泥棒的にやってきそうっすね」

 「少人数の部隊で、ダンジョンで迎撃できれば倒せると思うけど、野外で囲まれたり、大人数で押し寄せられると、現状じゃきついね」

 「でもグリズリーを召喚できるっすよね?」

 「今回の収入を全部使えばね。でも今のダンジョンだと狭くて有効に働けないだろうし、なにより食費がね」

 「ですかね」


 帰りも何かに遭遇することなく無事に戻れた。この静けさも、グリズリーが居なくなった事が近隣の勢力に知れ渡るまでだろう。この空白地域をめぐって、周辺の勢力が新たな戦いを繰り広げるに違いない。

 今の僕らには、ダンジョンの外に影響力を維持することは不可能だ。戦闘も、コアの機能補正が受けられるダンジョン内と、野外とでは全然違ってくる。

 もっと実力をつけて、周辺から恐れられるようになってはじめて、テリトリーと呼べるものが手に入る。

「あの近辺はなんかやばい。行ったやつらが戻ってこない。近づくな」

 と噂されるようにならないとね。 


 召喚リストその12

グリズリー・バーサーカー:狂乱の灰色羆ひぐま

種族:魔獣 召喚ランク7 召喚コスト 490DP

HP63 MP13 攻撃力21 防御力7

技能:爪、牙、耐寒、嗅覚、追跡、登攀、水泳

特技:ハウリング(咆哮)、バーサーク(狂乱化)

備考:咆哮:使用MP3 敵に状態異常(恐怖)を付与

   狂乱化:使用MP1 命中+20% 攻撃力+4 回避不可ペナ


*ヘラジカはダンジョン内で死亡していないので召喚リストには載らない


DPの推移

現在値: 5 DP

撃退:灰色羆 +245

吸収:灰色羆 +245

残り 495 DP


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ