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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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さらば、暫しの別れの時だ

 「ゴチになったわね、次は家に来たら歓待してあげるわ」

 マリアは、そう言い残して、リンを連れて帰っていった。

 騎乗用の大型のグレイウルフ4頭は、一人のゴブリン・ウルフライダーに先導されて、東へと駆けていった。

 懸命に鞍にしがみ付くリンと、グレイウルフを押しつぶしかねないゴブシロードの巨体が、微妙に旅の不安を掻き立てていた・・・

 

 「とは言え、僕がとやかく言うことじゃないよね・・」

 「マリア様は、厳しい方でいらっしゃるようですね」

 カジャが見送りながら呟いた。

 確かに、振り落とされそうなリンにも、へたばりそうなグレイウルフにも平等に厳しいよね・・


 「私はご主人様にお仕え出来て幸せ者です」

 眷属に甘すぎるってマリアには怒られるけどね。

 「甘やかされて堕落するのは、眷属側に気の緩みがあるからです。ご主人様の厚意を、当たり前と受け止めるような不届き者は、私とロザリオ様で矯正しておきます」


 それがテオでも?

 「あの方は、厚意は素直に受け止めて、その分を相手に返すことの出来る方です」

 なんか、惚気られた?

 「そうとって頂いても結構です」


 カジャは、普段通りに、テラスの後片付けを指揮し始めたけれど、その尻尾は照れたように丸まっていた。



 そして、六つ子達も、出立の用意を始めていた。

 「とにかく、一度ビスコ村に戻って、セレンの事を家族に相談してみる・・」

 「どうせ父さんと母さんなら『一人ぐらい増えても、どうってことない』って言うだろうけどね」

 「部屋も、うちらの分が空いているし、大丈夫でしょう」

 「ただし、セレンがビスコ村に慣れるかどうかが問題だな」

 「村に他にドワーフは・・居なかったか」

 「冒険者の中に見かけた気もするが、定住はしてなさそうだったな・・」


 結局、無理そうならまたここに戻ってくるということで話がついた。

 アルマジロは、セレンが離れたがらないので、やはり村まで連れて行くことになった。

 本人よりも、村では問題になるかも知れなかったが・・


 「大人しいだで、平気だと思うだども?」

 心配する六つ子にノーミンが話し掛けた。

 「いや、問題を起こしそうなのは、冒険者とかなんだ・・」

 調教された牽引アルマジロは、そこそこ貴重なので、盗もうとする輩が出る可能性があるという。


 「なるほどだ、餌を与えたら、そのままついて行きそうではあるだな」

 実際には、アルマジロはちゃんと飼い主を認識して行動はしている。ただし、知らない人物に荷馬車などで運ばれることになっても、身の危険を感じなければ、暴れて逃走とかはしなさそうであった。


 悩む六つ子に、アエンが助け舟を出した。

 「なら、この防犯チョーカーをどうぞ」

 胸のポケットから取り出したのは、緑色をした首輪だった。


 「これは?・・」

 「家畜の盗難を防ぐ為に開発した魔道具です。まだ量産は出来ないのですが、2つはありますので、差し上げますよ」

 「それで、効果は?」

 「首輪の方は子機にあたりまして、親機はこれになります」

 再びポケットから取り出したのは、手のひらに乗る大きさの、キノコの人形だった。


 「この親機の人形から、子機の首輪が100m以上離れると、人形が鳴きます」

 「ほう、それは便利だな」

 「ねえ。ねえ、それ首輪を小さくして、持ち物とかに着けられないの?」

 「これ以上の小型化はまだ、難しいですね。それと人里を離れた場所で親機が鳴くと問題が・・」

 不穏な発言をしたアエンに視線が集中した。


 「鳴き声を聞いたモンスターが集まって来ます」

 「「「シュリーカーかよ!」」」


 どうやらキノコの人形は、警報を発するキノコ型のモンスターを真似して作られたようだ・・・


 「まあ、村に置いておく分には、役立つかな」

 「確かにな、有り難く頂いておこう・・」

 だが、村に戻るまでは、同じ小袋にでも仕舞っておくしかなかった。うっかり片方を落として、森の真ん中で鳴かれたら、何が寄って来るか分からないからだ・・



 同行してきたナーガ族の二人の見習い薬師は、ここで六つ子とはお別れである。

 「皆様のご恩は忘れません」

 「お近くを通られた際は、ぜひお立ち寄り下さい」

 タラとミラの二人は、にこやかに六つ子に手を振っていた。


 大勢のドワーフ達にも見送られながら、六つ子とセレンは、ビスコ村へと出立していった・・・



 「さて、お客さんは全員帰ったから、あとは身内で遣り残したことを終わらせていこうか」

 『あいあい』

 「コア、まずは残った死骸を、ボーンサーペント以外を全て吸収して」

 『ぱくぱく』

 「次に、ナーガ族二人を眷属化。あっと、二人ともそれで良いんだよね?」

 「「お世話になります」」

 『うぇるかむー』


 二人のスキャンデータはほぼ同じだった。


 ナーガ・ノービス・メディシン(タラ&ミラ):蛇人族 見習い薬師

種族:亜人 召喚ランク5 召喚コスト250

HP24 MP17 攻撃4(+1すりこ木) 防御4(+1丈夫な服)

技能:耐寒、誘惑、採集、薬草学、調合

特技:温度感知サーモセンサー、精霊呪文(タラ土Lv3、ミラ水Lv3)


 タラが土呪文使いで、ミラが水呪文使いの違いがあるだけだ。


 「光呪文はまだなんだね」

 「残念ながらナーガ族は、光の精霊呪文とは相性が悪く・・」

 「・・最初に発現するのは水か土が、ほとんどなのです」


 「まあ、二人には薬の調合を担当してもらうから、光呪文はゆっくりでいいからね」

 「「はい、頑張ります!」」

 

 「コア、ヘラの治療室の並びに、9マス部屋を拡張して、木の扉を設置して」

 『とんてんかん』

 「ベッドや布団の予備は、ドワーフの倉庫にあるから、グドン、手伝ってあげて」

 『オデ、ベッド運ぶ』


 「あら、素敵な殿方ですこと・・」

 「本当に、見事な筋肉ですわ・・」

 ナーガ族の二人にとっては、グドンは逞しい戦士に見えるらしい。

 人里では、ハーフオークとして疎まれることはあっても、女性にちやほやされた事の無いグドンは、ただ戸惑うばかりであった。


 「オデ、オデ、仕事しないと・・」


 「お姉しゃま!グドンがこまっているでしゅ!」

 ヘラが珍しく声を荒げて、二人の姉弟子を叱った。


 「あら、珍しい・・ヘラでも怒ったりするのね」

 「あ、そうか、もう徴つけたのね?そうでしょ?」

 「つけてましぇん!」

 顔を真っ赤にして怒るヘラを、二人は微笑ましく見守っていた・・・



 「・・徴って何?・・」

 僕はカジャにこっそり尋ねた。 

 「・・ナーガ族には、独占したい男性が出来ると、固有の徴をつける習慣があるそうです・・」

 「・・でも、それだと不公平にならない?・・」

 「・・徴をつけたナーガ族は、それ以降は他の男性には手を出さなくなるそうですから・・」

 「・・なるほどね・・」


 今の所は、ヘラにはまだ恋愛は早いみたいだし、グドンは騎士的な感情しか持っていなさそうだ。

 でもいつかは、ヘラからユニコーンのニコが離れていく日が来るのかも知れない・・・


 『ぽっ♪』



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