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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
392/478

その時、警報は鳴っていた

少し短いので、あとで加筆します。

11/5 6:40頃に加筆修正しました。

 その異変は、コールセンターのメイド服姿の担当者が見つけた。

 「あれ?ランプが黄色く点滅してますね・・なんでしょう?・・」

 それは丁度、マリアが菜箸で焼肉を摘み食いしようとしたタイミングであったが、彼女にはその事は分からない・・

 しかし、しばらく見つめていると、ランプは元の緑色に戻った。

 「よかった、赤くなるまでは、ほっとけば直るって、本当だったんですね・・」

 彼女は、既に冷めてしまったお茶を、そのまま上司の机へと運ぼうとした・・・


 「あらあら、警報ランプの点滅を、見てみぬ振りして遣り過ごすとか、誰に教わったのかしら?」

 「ひやぁっ、ボス、そこにいたんですか?あわわ」

 「お茶が冷めるほど、じっと動かなかったら、何があったか見に来るとは思わなかったんですか?うふふふ」

 「だ、大丈夫です、ランプは緑に戻りました」

 「あらあら、黄色になった時点で、報告しなさいと言っているんですけどね」

 そう言って、上司は手元のコントローラーのボタンを押した。


 するとメイド服の担当者の頭に取り付けられていたカチューシャから、微細な振動が伝わって、脳に直接な痛みを発生させた。

 「いたたた、痛いです、まるでカキ氷を一気に食べた時のような頭痛がああ・・」

 「これは、アイスクリーム頭痛を与える、お仕置き装置ですよ、うふふふ」

 「アイスを食べていないのに、頭だけキーンとなるのは、すごい損した気分ですうう」


 「あらあら、今度、警報を無視したら、タンスの角に小指をぶつけた痛みにしますからね、うふふ」

 「あ、それは慣れているので大丈夫かも・・」

 「慣れるほど、ぶつけているのですか・・『ドジっ子』侮れませんね、うふふふ」


 「ああ、キーンはダメです、キーンは・・・あれ?段々、アイスを食べている気になってきました・・これはこれで有りかも・・」



 その頃、ダンジョンコールセンターの休憩室には、年末のイベントに向けて、缶詰になっている「貴腐人」の姿があった。

 入り口に掛けられた、

 「緊急時以外、邪魔をしないで下さい。したら手伝わせます」

 と書かれたプレートも、この時期の恒例になっている。


 いや、時期的に少し早いかもしれなかった。

 例年なら、もっと押し詰まってから修羅場になっていたはずだが、今年は半月以上早くから篭っていた。


 「ドジっ子」のうっかりが治らないように、「貴腐人」の趣味も、担当医に匙を投げられる類のものである。新任の上司も、早々に諦めて、コールセンターの仕事が落ち着いている今のうちに、缶詰になることを提案したのであった。


 上司のお墨付きをもらって、「貴腐人」は創作活動に勤しんでいるかと思うと、そうでもなかった。

 〆切が迫らないと、創作意欲が湧かない・・というわけではなく、彼女は執筆活動を隠れ蓑にして、同志達と情報交換をしていたのである。


 表向きは、お互いの進行状況や、今年のトレンド、さらには無理の利く印刷所の情報など、イベントに関係したやり取りがなされていた。

 しかしその裏では、一部の同志にしか理解できない隠語を使って、検閲されると危険な情報が行き来していたのだ。


 「・・『主腐』の所からは様子は窺えない・・『腐女子』は、現在、謹慎中・・あとは『汚蝶腐人』のセレブなコミュに期待するしかありませんね・・」

 特別区画の独房に収監された同僚を見舞いに行ったときに、彼女は、以前の上司の痕跡を辿ろうとして失敗していた。

 「・・あの時は、ラプラス降臨の件もあって、十分な時間が取れなかったのが悔やまれます・・今は管理局にマークされて、特別区画へ入ることは不可能に近くなってしまいました・・」


 収監者の脱獄に関与した嫌疑を掛けられて、ブラックリストに名前が載ってしまった為である。

 その嫌疑自体は、実は正当なのだが、証拠不十分で、監視下に置かれるぐらいで済んでいる。ただし、目立つような行動は取れなくなった・・

 仕方なく、時期的に忙しいはずの、同志達に協力を仰いで、情報収集に勤しんでいた。


 「ここまで痕跡が辿れないとなると、普通の懲罰ではないということでしょうか・・」

 元の上司が犯したのは、部下の監督不行き届きという、間接的な罪である。幾ら庇った相手が、違法行為の常習犯だったとは言え、あまりにも厳罰過ぎる・・


 「何かがおかしい・・誰の意思が関わっているのか・・」

 「貴腐人」は思考の闇に沈んでいくしかなかった・・・



 そして原稿は1ページも進んでいなかった・・・



 しばらくすると、コールセンターの奥にある主任室では、専用のデスクチェアに腰を沈めながら、どこからか届いた分厚い報告書を読む、上司の姿があった。


 「あらあら、誰かさんはまだ諦めていないみたいね・・しつこい子は嫌われちゃうぞ」

 その報告書には、「貴腐人」が、その趣味の繋がりを使って何かを調べている事が書かれていた。


 さらに次のページをめくりながら、独り言のように呟いた・・

 「こっちのロートルも、そろそろ退場してもらおうかしらね・・いつまでも下界にしがみ付かれると、こちらも迷惑なのよね、うふふふ」


 「管理人さん」と呼ばれる上司は、そのコードネームに似つかわしい活動を開始しだした・・・


 

 

  蒼い地底湖のオババのダンジョンにて


 「やっかいな奴が降りてきたのう・・」

 オババは、どこかを映し出していた、魔道具の鏡を閉じると、ため息をついた・・・


 「カタカタ(敵でしょうか?)」

 側に控えていた骸骨守護者の7番が、主に尋ねた。


 「敵でもあるし、上司でもある・・友人だった時もあったかのう・・」

 オババは遠い目をしながら、過去を振り返っているようだ。


 「カタカタ(主の敵ならば排除いたしますが?)」

 「そう簡単にはいかんじゃろうよ・・本人が襲ってくるわけもないしのう・・」

 「カタカタ(では、何が来るのですか?)」

  

 守護者の質問にオババは答えた。

 「そうさな・・来るとすればアイツじゃろうな・・」


 オババの脳裏に、遙か昔に全力で戦って、勝てなかった相手が浮かんでいた。

 「あの時よりも、ワシは弱い・・一人では勝てぬ・・さてどうするか・・」


 7番は、ただ静かに横で控えていた・・・




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