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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
391/478

二つ名は女帝ですが

投稿が大変遅くなりました。申し訳ございませんでした。

 オークの丘、特設テラスにおける焼肉パーティーは、未だに続いていた。

 「レバーうめー、鉄分うめー」

 「血だ、血が足りねえ、もっと肉をくれ」

 「豆は身体に良いんだよ・・豆さえ食ってれば人は生きていける・・」


 おかしなテンションで、料理を食い漁っているのは、元気を取り戻した、六つ子の弟3人であった。

 二日間ほど、水と麦粥しか口に出来なかった所為か、今は貪るように焼肉や野菜を頬張っていた・・


 するとそこに、

 「良い匂いさせてるじゃない、ワタシの分もあるんでしょうね」

 と、勝手に混ざろうとした人物がいた。


 「え?誰?」x3

 いきなり登場したその人物は、放浪者風のボロいフード付きのローブに身を隠しているが、声や身体つきから、どうやら女性のようだとわかる。

 彼女の背後には、同じくローブに身を隠した、屈強な戦士風の巨漢が佇んでいる。


 唖然とする六つ子3人とは違い、残りの眷属とゲストは、一斉に闖入者に警戒をした。

 しかし彼女は、その物々しい雰囲気をものともせずに、手近にあった菜箸で、食べ頃の肉を摘もうとした。

 

 バチッ


 その瞬間、見えないバリアが、彼女の箸を弾いた。


 「ちょっと、焼肉の摘み食いも敵対行動扱いなわけ?少しは融通きかせなさいよね!」

 彼女がそう叫ぶと、闖入者の二人の足元に魔法陣が浮かび上がり、ゲスト認定された。

 それを見て、眷族達は誰が来たのかを理解して、警戒を解いた。


 だが逆に、六つ子達は、フードを外して正体を現した相手に驚いていた。

 「茶髪に黒い瞳にポニーテール・・」

 「自分ではカッコいいと思っている、放浪者風のローブ・・」

 「巨漢の従者を従えての、遣りたい放題・・まさか・・」


 「「「女帝マリア!?」」」


 焼肉を頬張りながら、マリアが睨んだ。

 「アンタ達、ゴブリンの餌にするわよ・・」


 「ごめんなさい!!」x6

 六つ子は揃って土下座した。

 キョトンとしたセレンが、見よう見まねで一緒に土下座をしたが、三つ指ついて挨拶しているようにしか見えなかった・・・



  その頃のコアルーム


 『ごぶますー』

 え?マリアがもう来たの。呼んだの2日前なのに、えらく早いね。

 『ばうばう』

 なるほど、ウルフライダーを正式に登用したのか・・それに同乗して駆けてきたみたいだ。


 「コア、マリアとゴブシロードはゲスト化して」

 『らじゃー』

 「それと、アエンとリンをテラスに移動するように通達」

 『ぴんぽんぱんぽん』

 「あとは・・接待役が必要か・・モフモフチームで手の空いているメンバーは、至急テラスへ集まって」

 『ぎょうむれんらくー』


 これで、なんとかなるかな?・・・



  再びテラスにて


 「ふーん、冒険者とかも仲間に引き入れてるんだ、順調じゃない」

 マリアは、焼けた鹿肉を挟んだままの菜箸を、六つ子達に突きつけながら、呟いた。

 「ひい、ふう、みい・・6人パーティーかぁ・・聞いたのは4人組だし、こいつら6人とも顔がそっくりだし、違うみたいね・・」

 『例の襲撃犯の事なら、別人だな。体型がもっとバラけていた』

 「ふーん、そう、ならいいわ、暴言は許してあげる」


 「ありがとうございます」x6

 「・・ございます?・・」


 「で、そっちの小さいドワーフが、うちに来るっていう子なの?」

 マリアの言葉に、六つ子は揃って首を振る。

 「めっそうもない」x6

 そう言いながら、セレンをリーダーの背後に隠した。


 「なによ、獲って喰いやしないわよ」

 『ゴブリンの餌にするとか、脅かすからだろ』

 「あんなの、ほとんど嘘に決まってるじゃない」


 「・・少しは本気なんだ・・」x6


 「ワタシも忙しいんだから、とっとと会わせて欲しいんだけど・・」

 そう言いつつ、箸を動かす手は止まらなかった。


 そうこうするうちに、アエンとリンが連れ立って、テラスに現れた。

 「マリア、久しぶり!あいかわらず凄い食欲ね?!」

 「ハイ!、アエン。でも、ついこの間、会って話をした気がするんだけど・・」

 「そうだけど、私にはとても長い時間が経ったような気がしてるの。だから貴女の元気な顔を見れて嬉しいわ・・」


 「ねえ、アエン、そろそろ紹介してよ・・」

 長々とキャラバンの苦労を語り始めたアエンに、痺れを切らしたリンが、声を掛けた。


 「あ、ごめん、リンの事が先だよね・・」

 「ふーん、この子がうちに移住希望の変り種かあ」

 値踏みするようなマリアの視線に、流石のリンも怯えていた。


 「ちょっと、マリア、もう少し優しくしてあげてよね。リンが怖がってるじゃない・・」

 「アタシは怖がってなんかないよ・・たかがダンジョンマスターじゃないか・・」

 だが、気丈に振舞うリンの足は、小刻みに震えていた。


 「ふーん、何も無理してうちに来なくても良いんだけど。役立たずに来られても、迷惑だしね・・」

 「無理なんてしてません!役に立ってみせます!」

 リンは、精一杯叫ぶが、その声は裏返っていた・・


 「そんなこと言ってもねえ・・聞いていないのかも知れないけど、うちは眷属の大部分がゴブリンだし・・」

 「知っています・・」

 「ドワーフどころか、他の亜人さえいないけど?」

 「それも承知です・・」

 「ダンジョンコアは、平凡だし・・」

 『おい、それは関係ないだろ』

 「・・それはちょっと・・」

 『おい、そこはマイナス評価なのか?』


 「だから、同じダンジョンでも、ここならお仲間もいるわけだし、なんならリザードマンの居住地に行ってもいいわけだしね・・」

 なぜか、他の移住場所を推すマリアの横を、親方が通りかかった。


 「キュキュ?」

 「あ、親方、元気してたでちゅかー?」

 すぐに抱き抱えて、お腹を撫で回した。


 「・・でちゅか?・・」

 マリアの変貌に、怪訝な顔をするリン。


 さらにそこに、穴熊のまーぼーとやんぼーが通りかかる。

 「あらあら、二人とも立派になって、もう両脇に抱えられないでしゅねー」

 「「ギュギュ?」」


 「・・でしゅね?・・」


 その後も次々と姿を現すモフモフ軍団に、マリアは人目も憚らずにデレデレとし始めた。

 『まあ、人目を気にするマスターではないからな・・』


 その姿を眺めたリンが、そっとため息をついてアエンに話し掛けた。

 「ねえ、噂と大分、印象が違うんだけど・・」

 「だから、いつも言ってたでしょ・・マリアは怖い人じゃないって・・」

 「それにしたって、どうなのよアレは・・」


 そこには、熊に抱き抱えられながら、両手で穴熊を撫で回し、ハリモグラを膝に置いて、だらしない笑みを浮かべるモフラーが居た・・・

 『マスター、涎ぐらい拭けよな・・』

 「うへへへ」



 「なんか、逆に心配になってきたよ・・アレは大丈夫なの?」

 「えっと・・たぶん・・」

 アエンの返事にも、若干の戸惑いが混じっていた。


 「まあ、女帝の別な一面も見れたし、これで腹は決まったよ。アタシはマリアの所に行くから」

 「そう、ならもう止めないけれど、辛くなったら相談してね」

 「苦労に耐えられなくなるより、愛想を尽かす方が先になりそうなんだけど・・」


 『うちのマスターが、色々すまん・・』

 

 「でゅへへへへ」





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