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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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家名はスミスです

 「バウバウ」

 「あれ?チョビお帰り。いつの間に戻ってきたの?」


 影狼のチョビが、コアルームに飛び込んできた。長旅で埃まみれのまま、ソファに蹲ろうとしたのを、カジャがすかさず、抱きとめた。

 「はい、お湯を浴びてからにしましょうね」

 「バウ」


 『ほむほむ』

 「バウバウ」

 コアが、長い聞き取りをして、チョビ達の現状を認識した。


 「六つ子も、もうすぐ到着するんだね?」

 「バウ」

 同行者も多いみたいだし、テラスで歓待しようか・・


 「お任せください」

 カジャが、準備に取り掛かった。




 「あれが、ヘラちゃんのいるダンジョンだよ」

 「なんか、牧場の柵みたいなのが増えてるね」

 「放牧してあるのは・・アルマジロか?・・」


 六つ子達が、外見が微妙に変わったオークの丘の側まで近づくと、出迎えの人影が見えた。

 どうやら、先触れの為に先行したチョビが、話をつけておいてくれたようだ・・


 「アイスオークのノーミンさんと、ヘラちゃん、それと横にいるのはドワーフさんかな?」

 「こんな所にまで、大氾濫から逃れてきた難民が来てるのか・・」

 「もしかしたら、セレンちゃんの知り合いが居るかもね」

 しかし、セレン本人は、怯えた眼差しを向けているだけであった・・・



 「お帰り・・というのも変だども、よく無事に戻って来ただよ」

 「なんとかね、チョビ達のお陰だよ」

 「牽引アルマジロは、向こうの柵に放しておけば良いだよ」

 ノーミンは、既にナーガの里の出来事を、掻い摘んで聞かされていたので、六つ子の同行者に、ドワーフとナーガ族がいることも知っていた。


 「タラ姉しゃん、ミラ姉しゃん、おひしゃしぃぶりでしゅ」

 「まあ、ヘラちゃん、大きくなって!美人さんになったわねえ」

 「背も少し伸びた?ぐるっと回ってみせて。どうせなら服も脱いじゃおっか」

 旅の間は大人しかったナーガ族の見習い薬師の二人であったが、ヘラを見た途端に見せ始めた本性に、六つ子達も引いていた・・


 「ヘラはナーガ族の隠れ里に居辛くなって、飛び出して来たって聞いていたが・・」

 「構われ過ぎて、逃げ出したんだね、きっと・・」

 「里中の大人があれだったら、確かに逃げるね・・」

 

 後から聞いた話によると、ナーガ族と多種族の男性の間に出来た子供は、殆どがナーガ族として生まれるので、ハーフは数が少ないらしい。下半身が蛇形体でない子供は、珍しさから、里の大人達に大人気だったそうである・・

 なお、ヘラが二人を「姉さん」と呼んでいるのは、同じ師匠について、薬草学を学んでいた頃の名残である。


 

 「セレン、セレンじゃないか、あんた、よく無事で・・」

 ドワーフの孤児がいると聞いて、受け取りにきた、おギンさんが、一人だけになったセレンを抱き抱えていた。

 しかし、セレンは、ギンの抱擁から逃れると、六つ子のリーダーの後ろに隠れてしまった。


 「そうかい・・あんたも子供心に、わかっているんだね・・」

 「どういう事ですか?・・」

 リーダーが、セレンを庇いながら尋ねた。


 「アタシらは、キャラバンを組んで南下していたんだが、途中で意見が割れてね・・このダンジョンに厄介になるのを良しとしない派閥が、別行動を取ったのさ・・」

 「それが、この子の乗っていた・・」


 「蜘蛛から逃げ切ってくれれば、またどこかで再会できるかもと、思っていたけど・・他に生き残りは居なかったんだろう?」

 その質問に、リーダーは、首を静かに振って答えた・・


 「そうかい・・この子だけでも助かって良かったとしようじゃないか。お前さん達には礼を言っておくよ・・ありがとう・・」

 「いえ、もう少し早く気がつけば・・・」



 「さあ、長旅でお疲れでしょう。ささやかではありますが、ご主人様からの御持て成しですので、ご遠慮なく召し上がって下さい」

 カジャが、場の雰囲気を変えるために、料理を運び込んできた。


 「せっかくだし、頂くか・・」

 「異議なし!」x5

 

 六つ子の弟3人も、いつの間にか復活していた・・



 「なら、ナーガ族の隠れ里は、大丈夫なんだな?」

 「そうね、次の大氾濫は数十年後だろうし、距離的にも黒衣の沼からは、かなり離れているから・・」

 ノーミンとドルイド姉が、隠れ里の防備について討論しながら、肉を焼いていた。


 「はい、ヘラちゃん、あ~ん」

 「タラ姉しゃん、一人で食べられましゅから・・」

 「ダメダメ、あたしが食べさせたいの、はい、あ~ん」

 ヘラは、二人の姉弟子に囲まれて、おろおろしていた。


 「アルマジロって何を食べるのかな?」

 「・・なんでも食べる・・」

 「じゃあ、お野菜でも焼いてもっていこうか?」

 「・・こくり・・」

 セレンの世話は、レンジャー妹が請け負っていた。


 その様子を脇で見ながら、ギンとリーダーが小声で相談していた。

 「・・あの子の今後だけど、どうするかねえ・・」

 「・・ここで育てるのは、まずいですかね・・」

 「・・まずくはないけど、最善でもなさそうだよ・・」

 「・・と言いますと?・・」

 「・・子供ながらに、親達が仲違いした結果、こうなったのを薄々感じているんだろうね・・あきらかに以前より距離を置かれてるよ・・」

 「・・なるほど・・なら、家で預かりましょうか?・・」

 「・・いいのかい?」

 「・・妹達にも懐いているみたいですし、家は大家族で、家業は鍛冶屋です」

 「・・なら、頼もうかねえ・・」


 牧場の方へ、焼き野菜を運んでいくセレン達を眺めながら、彼女の行く末に思いを馳せる二人であった・・・



 

 



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