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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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地下資源の採掘

投稿が遅くなりました。申し訳ございませんでした。

 第4階層の最深部で、温泉が湧いたと聞いて、皆が集まってきた。

 狭い部屋に全員は入れないので、外の通路から様子を伺っているメンバーもいた。

 すでに部屋の床には、浅いプールを設置して、排水機構も完備した。徐々に溜まった天然の鉱泉が、足湯に浸かれるほど溜められていて、部屋の中は、湯気でもうもうとしていた。

 今は、壁際でバルブの点検を終えたドワーフの鍛冶師が、最終調整を行なっている所だ。


 ちなみにこの浅いプールと注水用のバルブ、それと排水機構がセットになって、75DPとお買い得だった。


 設置罠(液体系):触れると注水。バルブを閉じると排水。貯水タンクの内容は、DPにより、から、水、毒水、酸、が選択できる。 75DP~

 この罠の貯水タンクにお湯を貯めて、バルブで湯量を調節している。溢れた分は、勿体無いけれど排水である。


 「旦那、これでしばらく持つと思うぜ」

 「ご苦労様、それで湯量はどんな感じ?」

 石壁から突き出た金属のパイプからは、水道の蛇口を全開にしたぐらいの量のお湯が、出続けていた。


 「安定するまでは、なんとも言えないが、今の量より大きくは変わらないと思うぞ。お湯の温度は、たいして変化しないと思うが、それも明日まで経たないと断言出来ないな」

 「しばらくは、流しっぱなしで様子を見るしかないか・・」

 急遽設置した、浅いプールに足を浸けて喜ぶフロストリザードマンの子供達を見ながら、この先の事を考えた・・・



 「湯温が40度で、湯量は毎分10リットルか・・これってどうなんだろう・・」

 「湯量はそこそこ、温度がちょいと低めじゃな。まあ、冷まさずにそのまま入れるので、適温と言えば適温かのう」

 温泉にも詳しいという、ドワーフのおギンさんにも相談してみた。


 「それよりも問題は、なぜ、こんな湖沼地帯に鉱泉が、しかも温泉として湧いたのかということなのじゃが・・」

 「ああ、やっぱり奇妙だよね・・」

 「もっと北の山脈に近いところなら、わかるんじゃがのう・・」


 二人して首を捻っていると、ベニジャが口を挟んできた。

 「あれだろ、『不凍湖の竜』のシマにもあるじゃんか、ジャー」

 そう言われて、思い出した。

 「なるほど、他にもあったね、割と近くに・・」


 近いとは言え、真冬でも湖面が凍結しないという伝説の湖とは、十数キロは離れているのだが、地下水脈で繋がっている可能性はあった。

 「あっちは、もっと熱い湯が湧くらしいし、こっちはそのお零れってとこかもな、ジャジャー」


 湖一つを凍結から守るには、かなりの湯量と湯温が必要だと思われる。

 だとすると、この地域の地下には、温泉の水脈が広がっていて、掘ればどこからでもお湯が湧くかも知れない・・


 「まあ、普通に温泉目当てで掘り進んだら、途中の岩盤で音を上げる事になるじゃろうな。旦那だからポンポン掘れたということじゃな」

 確かにDPで拡張する場合は、深度とか岩盤強度とか無視できるからね・・

 『ぎゅるんぎゅるん』



  第4階層、ドワーフの鍛冶場にて


 ドワーフの鍛冶師達が、中央炉の火入れを、厳粛な面持ちで見守っていた。

 彼らにとって、この儀式は、重要な意味を持つらしい・・

 取り仕切っているのは、1級鍛冶師のアイアン爺さんである。


 無事に、中央炉が稼働して、赤々とした火が燃え盛ると、鍛冶師達は、その火を各自の炉に移して、それぞれの仕事に没頭し始める。

 全員に火が渡った事を確認すると、アイアン爺さんも自分の道具を取り出して、金属の塊を熱し始めた。


 「爺さん、何を作ってるっすか?」

 「ああ、ワタリか、危ねえから、それ以上近寄るなよ」

 「言われなくても、熱くて、これ以上は無理っす」

 「ワハハハ、そんな根性じゃあ、鍛冶師は勤まらんな」

 

 寒冷地帯に住む亜人の常として、冷気に対する耐性は持っているが、熱に対する耐性は無い。

 ワタリには、轟々と燃え盛る炉の前で、平然と作業をするドワーフの方が驚きなのだ。


 「なに、こんなもの、慣れじゃよ、慣れ」

 そう言いながら、赤熱化した金属の温度を、素手をかざして確かめていた・・


 「有り得ないっすよ・・」

 ワタリは、呆れながらも、職人技に見入っていた。



 アイアン爺さんは、熱した金属を、鉄床の上で、何度か叩いて延すと、元の塊に戻す作業を繰り返していた。

 「それは、下準備っすか?」

 「ああ、下準備というか下拵えだな」

 「下拵えっすか?」

 料理のような言い草に、ワタリが聞きなおす。


 「炉も鉄床もハンマーもワシの腕も、この鍛冶場に、まだ馴染んでいない。だから、新品の鍋に油をひいて熱するように、まずは下拵えからじゃな」

 「なるほどっす」


 その会話の間にも、金属の塊は、何度も打たれて、やがては小さい刃物の形をとり始めた・・

 「包丁っすか・・」

 「人数が増えたから、賄いも大変そうでな・・調理用具も数は持ち出せんかったらしい・・」

 次は鍋でも打つかと呟く、アイアン爺さんに、ワタリは素直に尋ねた。


 「武器は作らないっすか?」

 「武器は命が掛かるからな・・下拵えのついでで作るわけには、いかんのじゃよ」


 1級鍛冶師が作る武器には、それなりの道具と材料が必要になる。現状で、道具は持ち込んだものがあるが、材料が足りないという。

 「黒鋼やミスリルが、ちと足らんのう・・持ち込んだ分は、人族の冒険者の装備に使ったら、たいして残らん」


 ボーン・サーペントの素材は大量にあるが、柄や接合部に使う希少金属が足りないらしい。そこで安易に格下の材質で代用すると、武器自体の性能が低下するという。

 「幸いなことに、マンガンの奴が、このダンジョン内で、鉄鉱石の鉱脈を見つけおった。埋蔵量がどれほどあるかわからんが、今は、採掘技能持ちが総出で、掘り返しておるから、鉄材だけは問題なさそうじゃ」


 水牢では、足場になる筏を敷き詰めて、採掘を始めていた。

 掘り出した鉱石は、アイスドレイクチームが背中に積んで、鍛冶場の横まで運んでいる。

 水位はコアが、気圧で上下させているので、坑道が水没する恐れはなくなっていた。


 「燃料も、泥炭が見つかったので、当座は凌げるな。できれば石炭が欲しいところだが、贅沢は言ってられん」

 「黒鋼の鉱石やミスリル鉱石はどこで手に入るっすか?」

 「北の山脈なら、幾つか鉱脈があるんだが、掘り出されていないのには、それなりに理由があってな・・」


 ドワーフ鉱山では、もう掘れる場所は掘り尽くしてしまったらしい。

 途切れた鉱脈を辿って、新しい産出場所を探してはいたが、魔蟲や地龍、それに魔女とかが邪魔をして、思うように採掘は出来なかったという話だ。


 「鉱石が手に入らなければ、有りものを鋳潰す事になるが、黒鋼ならまだしも、ミスリルとなると簡単には行かんじゃろう・・」

 「そうっすね・・」


 黒鋼の武器もDPで変換しようとすると、かなり高価だ。ミスリルともなれば、剣一本でも幾らかかるのか・・


 「まあ、おいおいヤっていこうか・・棒手裏剣ぐらいなら、今からでも作れるぞ」

 「ぜひ、お願いするっす」


 

 その後、アイアン爺さんの銘の入った棒手裏剣を、これみよがしに見せびらかして、アズサ達に身ぐるみ剥がれて吊るされたワタリが居た・・・


 「ギャギャ(弱いのに賭け事を受けるからです)」

 「ギャギャ(この棒手裏剣も、負け分を払えるまで預かっとくぞ)」

 

 

 「・・鬼っす、鬼が群れで襲ってきたっす・・」


 



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