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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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探検隊の功績

途中です。お昼過ぎに加筆いたします。

 ドワーフで採掘技師のマンガンと、それに弟子入りしたつもりの3人のフロストリザードマンの子供たちは、ダンジョン内を気ままに探索していた。


 「ここが、皆がオークの丘と呼んでいる、ダンジョンの天辺です、シャー」

 「ボクらは、豚饅頭って言ってたけどね、シャシャ」

 「それ、悪口らしいから、言ったらダメって、お母さんが怒ってたよ、シャー」


 子供達のおしゃべりを聞きながら、マンガンは、興味深そうに壁や天井を見回していた。

 「なるほど、ダンジョンと言っても、色々あるんだねえ・・・石の壁に覆われていない通路か・・これはこれで地層が直接見れて便利ではあるね・・」


 「チソウってなんですか?シャー」

 「あれだよね、焼かずにお墓に埋める・・」

 「それは、ドソウでしょ、シャシャ」


 「地層というのは、ここみたいに、土が何層にも色に分かれて積み重なっていることかな・・」

 マンガンは、子供にも分かり易いように、簡単な説明をした。


 「へえー、本当だ、縞々模様になってるね、シャー」

 「珍しいけど、これが見れると便利なの?シャシャ」


 「ああ、地層が見れると、そこに何が埋もれているか、だいたいの見当がつくんだよ」

 「え?じゃあ、お宝がどこにあるか、すぐにわかるの?シャシャー」

 「すぐは無理かな・・見当はついても、当たり外れはもちろんあるからね・・」


 「なるほど、それがサイクツシの技なんですね、シャー」

 「よし、ボクもサイクツシの魔眼を鍛えて、お宝を見抜く能力を手に入れるぞ、シャー」

 「アタシも、アタシも、シャシャ」


 はしゃぐ子供達を見ながら、マンガンは、

 「まあ、経験を積めば希少な鉱石が採掘し易くなるのは、間違いじゃないからね・・」

 と考えていた。



 「この茶色っぽい縞が、粘土層といって、捏ねて焼くと陶器になる地層だね・・」

 「あー、知ってる。お酒の壷とか造るやつだ、シャー」

 「そうそう、食器にも使われてたね・・」

 「へー、あれってこんな土から作ってたのかー、シャー」


 「この黒っぽい縞が、腐葉土層といって、木の葉が降り積もって、長い年月かけて土に変わった地層だね・・」

 「葉っぱって、腐って泥になるんじゃないの?シャー」

 「湖に近いと、そうなるかな・・ここだと黒土になったみたいだね・・」

 「「「なるほどー」」」


 

 徐々に下に向かって降りていくと、やがてトンネル通路に出た。

 「ここは、穴熊さんのお家だったところを広げた、モフモフハウスだそうです、シャー」

 「あ、あそこに歩いてるよ、こんにちわー、シャー」


 「「ギュギュ」」

 穴熊の親子が、水浴びしに行く途中なのか、通路を歩いていた。

 挨拶をして、すれ違うと、さっそく地層の確認である。


 「ここは、先程の場所より古い年代の地層になるはずだ・・」

 「下の方が、古いんですか?シャー」

 「だいたいは、そうだね・・たまに上級の土属性の精霊術師が、上下をひっくり返したり、一部分だけ引き上げたりするから、ぜったいではないけど・・」

 「そうなんですね、シャー」


 「隊長、ここのチソウが、色が違うんですけど、シャー」

 一人が、床に近い場所を示して言った。


 「おお、それは泥炭層だね、良く見つけたね」

 「やったー、お宝発見だ、シャー」

 「「いいな、いいな、シャシャ」」


 マンガンが、鶴嘴の先端で、黒っぽい層を、掻きだした。すると、それは崩れずに、一塊の土塊として通路に転がり落ちた。

 「これは湖や沼の底に溜まった泥が、長い年月をかけて、泥炭に変化したんだ・・昔はここも沼の底だったのかも知れないね・・」


 「へー、それがいつの間にか、丘に埋もれたんですね、シャー」

 「そんなことってあるんだ、シャシャ」

 「それで、泥炭って、お宝として価値はどうなの?シャー」


 「これだけだと、安いけど、大量に掘り出せば、燃料として十分に役に立つよ・・立派なお宝だね」

 「「「やったーー」」」


 さっそく掘り返そうとする子供達を、マンガンは慌てて引き止めた。

 「ダンジョンの壁を勝手に掘ったら、マスターに怒られるよ」

 「あ、そうか、お母さんにも言われてた、シャシャ」

 「でも、どうしよう、マスター様にお願いしてみる?シャー」


 「泥炭は逃げないから、ここはそのままにして、もっと奥に行こうか・・他にもお宝があるかも知れないよ・・」

 「「行くー」」


 しかし、泥炭層を見つけた子供は、まだ未練がありそうだった。

 「誰かに盗られないかな・・シャー」


 するとマンガンが、腰のポーチから、ネームプレートのような金属板を取り出した。

 「これに君の名前を彫って、ここに差し込んでおくと良いよ・・誰が発見したのかすぐに判るようにね」

 「隊長、ありがとうー、シャシャー」


 たどたどしい手つきで、銅版に名前を刻むと、誇らしげに通路の床付近の壁に差し込んだ。

 「いいなー、いいなー、アタシも名前を残したいなー、シャシャ」

 「ボクも頑張ろう、シャー」


 残った二人は、マンガンの背中を押すように、先へと急ぐのであった。

 「ほらほら、あんまり急いでも、途中のお宝を見逃すかもよ・・」


 「あ、ここも色が黒っぽいよ、シャー」

 「それは・・穴熊の糞かな・・」

 「ぎゃあーーー」


 賑やかな探検は、さらに下層へと続いていった・・・



 ヘラの治療室を通り抜けさせてもらって、秘密の通路を使って、第2階層へと降りていく。


 「ここが、元は悪いオークのお墓で、今はスケルトンの軍人さん達が住んでる地下墓地です、シャー」

 「お墓だっけ?長寿の男爵が住んでたって聞いたよ、シャシャ」

 「ボクは、悪霊になって、とり憑いてたって聞いたかな、シャー」


 「なるほど、石組みの様子が、古代オーク帝国の様式だね。最もかなり手抜きで造ったようだけど・・」

 「手抜きなんだー、シャー」

 「お金無かったのかな、シャシャ」

 「男爵ダメダメじゃん、シャー」

 正確には、男爵位を剥奪された元貴族なので、建設予算は、かなり削られていたようだ・・・


 このエリアは、殆どが石壁で、剥き出しの地面がないうえに、牢獄とかが気味悪いので、早々に通り抜けた。


 隠し扉を開けて、下り階段を降りると、そこは水牢である。


 「ここは、広いな・・掘ったというより、自然の洞穴を利用しているのか・・」

 天井から水面までが6~7m、さらに水底までは10mほどあり、壁面はすべて剥き出しの岩盤に近い。水に落ちた侵入者が、登り辛いように、壁は平に削られているが、天井などは、まだ凸凹している箇所残っていた。


 「あそこも手抜きだね、シャー」

 「水牢だから、天井は後回しだったんだね、きっと、シャシャ」


 しかし、マンガンの目は、天井ではなく、向かい側の岩盤に向けられていた。

 「あちら側には行けないのかな・・」

 「通路はないけど、クロコ達に頼めば渡してくれますよ、シャー」

 「アタシが呼ぶね、クロっち、かむひやーー」


 すると、その声に応えるかの様に水牢の水面に波紋が沸き立ち、巨大なアイス・ドレイクが浮上してきた。

 「あれ?クロっち、大きくなった?シャシャ」

 「シャー」


 以前より大きくなったアイスドレイクに、子供達は物怖じもせずに、その背中に乗り込んでいった。

 マンガンも恐る恐る、その背中に乗り移る。


 「じゃあ、あっち側にお願いね、シャシャ」

 「シャー」

 子供3人とドワーフ一人を乗せたまま、クロコは悠々と対岸へ泳いで渡っていった。


 対岸の岩盤が近づくと、再びマンガンの視線が鋭くなる。

 それを見た子供達も、目を皿の様にして岩肌を見つめるが、苔むしているだけで、他の岩と区別などつかなかった。

 しかし、熟練した採掘師の目には、他人には見えない何かが映っているらしい・・・


 「キラーンって音がしそう・・、シャー」

 「どっちかって言うと、キュピーンかな、シャシャ」

 「ボクには、くわっ!て聞こえるけど、シャシャー」

 「「それだ!」」


 岩盤を撫でていたマンガンが、鶴嘴でコツコツと欠片を削り落とした。

 「これは・・鉄鉱石の鉱脈かも知れない・・」

 「お宝、お宝ですか、隊長!シャー」

 「さすが、サイクツシの魔眼ですね、シャシャ」

 「凄い、アタシも、くわっ!てやりたい、シャー」

 「シャーシャー」

 何故かクロコも加わって、大騒ぎである。


 「まだ、お宝になるか分からないよ・・この欠片には鉄鉱石が含まれてはいるけど、どこまで鉱脈が続いているかで価値が変わるからね・・」

 「じゃあ、どんどん掘りましょうよ、シャー」

 「あ、でも、ここを掘ると、水が流れ込んじゃうよ、シャシャー」


 水面に近い場所を、大々的に採掘すれば、水没するのは目に見えていた。

 「ここもマスターと相談だね。試掘して、どこまで鉱脈が続いているのか、そしてどこまで掘っていいのか確認しないと・・」

 「じゃあ、ここに隊長のプレートを、シャー」


 「岩盤なら、これで十分だよ」

 そう言って、マンガンがポーチから取り出したのは、奇妙な形をしたハンマーであった。

 それを力一杯、岩肌に叩きつけると、そこには、四角い縁取りで囲われた、細かい文様が刻みつけられていた。


 「これが隊長の紋章なんですか?シャー」

 「そう、これを見れば、誰が最初に見つけたのかが、わかるんだ」

 「すげー、サイクツシ、かっけー、シャシャー」

 「皆が見習いを卒業したら、作ってあげるからね」

 「「「やったーー!」」」

 「シャシャー!」


 「え?君も欲しいの?」

 アイスドレイク用の打刻印なんかあったかなと考えるマンガンであった・・



 さらに奥に進むには、水路を潜るしかない。

 子供達は、涼しい顔で泳いでいるが、マンガンだけは決死の思いで息を止めて、ミコトの背にしがみついた。

 なんとか水牢から延びる、短い方の水路を潜り抜けると、そこは水霊の洞窟と呼ばれている場所である。


 「ルカさん、こんにちわー、シャー」

 「「こんにちわー」」


 「皆、いつも元気ね~、こんにちわ~」

 口々に挨拶する子供達に、愛想良く手を振り返す、水精霊のルカであったが、実態は、居候の家出妻である。


 「失敬ですね、ちゃんとお仕事もしています~」


 見えない誰かに向かって、文句を言う彼女を、不思議そうに見ながら、子供たちは第4階層へ続く隠し扉へと歩いていった。

 その後から、アイスドレイクの背でぐったりしているマンガンが続いていく。


 「あら、まあ、呼んでくれれば、呪文をかけに行ったですのに~」

 呼ばれなければ、動こうとしない、干物妻であった・・・



 「隊長、大丈夫ですか?シャー」

 「・・ああ、ちょっと水を飲んだだけだよ・・もう平気だ・・」

 あまり平気そうに見えない、青白い顔をしているマンガンを、子供たちが心配そうに見つめていた。


 「今日は、もう戻りましょうか、シャー」

 「あ、お弁当食べてないよ、どうしよう・・シャシャ」

 「ここでお昼にする?シャー」

 「そうだね、せっかくのお母さんの心遣いだ・・無駄にしたら、勿体無いお化けがでるぞ・・」

 「「「はーい」」」


 子供達は、背中に背負っていた、蕗の葉で包まれたお弁当を取り出した。

 「はい、隊長の分です、シャー」

 「おや、私のも用意してもらったのかい?」

 「もちろんです、シャシャ」


 思い思いの岩に腰掛けて、お弁当を開いた。

 「あ、今日は鮭の切り身だ、シャー」

 「ポテトサラダも入ってるね、シャシャ」

 「やったー、イナゴの姿煮もあるよ!シャー」

 喜ぶ子供達の横で、マンガンが微妙な表情をしていた・・


 「・・・イナゴか」



 食事が終わって、さらに顔色が悪くなったマンガンを気遣いながら、探検隊は、第4階層へと降りていった。

 この階層は、DPで拡張するときに、地下水対策の為に、石造りになっていた。 


 「これだとチソウも見えませんね、シャー」

 「サイクツシの魔眼で、石壁は透視できないんですか?シャシャ」

 「流石に無理だねー・・」


 結局、一番下の部屋まで行ったが、状況は変わりなかった。

 「ここまでのようだね・・」

 「残念です、シャー」

 「今度は、ボクらの居住地の方を探検しましょう、シャシャ」


 諦めて戻ろうとすると、女の子が何かを見つけた。

 「隊長、ここ、壁の色が違っていませんか?シャシャ」

 「どれどれ・・」

 マンガンが調べると、確かにその部分だけ、石壁の色が変色していた。

 しかも手で触れると、僅かに温かい・・・


 「これはもしかすると・・」

 そう言って、ポーチから、手動のドリルを取り出した。


 「すげー、隊長のポーチってなんでも入ってるんだ・・シャー」

 「ドワーフなら、大抵、魔改造した道具箱を持ち歩いているね・・それは採掘技師に限らずだけれども・・」

 そう言いながら、ドリルで壁に小さな穴を開けていく・・


 何度か、ドリルの先端を交換して、遂に壁をくり抜く事に成功した・・


 すると・・・


 ブシャアアーーー という音とともに、熱いお湯が吹き出してきた。


 「あちゃちゃちゃ!」

 モロに正面からお湯を被ったマンガンが、ドリルを放り投げて転げ回った。


 「隊長!」

 「あつ!なんだこれ、水じゃないぞ!シャー」

 「クロっち、ブレス!」

 「シャアアアアーー」


 クロコが、コールドブレスを吐いて、お湯を凍らせた。

 しかし、後から湧き出てくるお湯が、凍りついた水柱を溶かしていく。


 「ええっと、これだ!シャー」

 家から持ち出した鶴嘴の先端を、ドリルの穴に押し込もうとする。


 「凄い水圧だ、皆、手を貸して!シャー」

 「「らじゃー!」」

 

 3人掛りで鶴嘴を穴に押し込むと、ミコトが躰を押し付けることで、お湯が止まった。


 「どうしよう、これ・・シャー」

 「怒られるかな・・シャシャ」

 「アタシが、見つけたから・・シャシャー」

 項垂れる3人を、復活したマンガンが慰める。


 「大丈夫だ、これは凄い発見だぞ!」

 「本当ですか?隊長!シャー」


 「ああ、まさか、こんな場所で鉱泉が湧き出るとはな・・」

 「コウセンって、ピカーってなる奴ですか?シャー」

 「それは光線でしょ、シャシャ」


 「鉱泉は、ちゃんとしたお宝だぞ・・」


 「「「やったあああーーー」」」

 「シャーーーー」


  

 後に、この鉱泉は、発見者の名前から「桃の湯」と名付けられることになる・・


 

 

 



  


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