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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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傘張り浪人は仮の姿

 宴会が終わった次の朝から、ドワーフ達は各自の職能にあった仕事を、自発的に始めていた。

 彼らにとって、酒を飲んでいるか、好きな仕事をしている時が、至福なんだそうである。

 ある意味、ワーカーホリックと言えなくも無いが、楽しそうだし、別に止める理由はなかった。


 彼等の作品を心待ちにしているメンバーも多いことだしね・・


 「では、ボーン・サーペントの素材の加工は、依頼した通りでお願いする・・」

 朝になって、村へと戻る4人組は、それぞれの武器・防具・装備品の加工を頼んだドワーフ達に、別れを告げていた。

 「ああ、任せておけ、お前さん達が戻ってくるまでには、しっかり仕上げておくからの」

 「たぶん、1週間から10日ほどかかると思う。買い付け先で、うまく家畜の市が開かれていると、早く戻れるのだが・・」

 「まあ、出来上がった武具は逃げやせんから、慌てずに、道中気をつけて行くんじゃぞ」

 「感謝する・・」



 「アタシの蛇矛も頼んだぜ、爺さん」

 「お前さんのは、かなり特殊な形状をしておるからのう・・まあ、なんとかなるじゃろう・・」

 ソニアは特注で、長柄の矛を発注した。先端の両刃は蛇の様にうねっており、石突きは尖った牙の形状をしている。斬ると突くを両立させているのだが、バランスを取るのが難しく、担当の鍛冶師が頭を悩ませていた。

 ちなみに蛇矛なのは、サーペントの属性をより強く武器に持たせる為である。



 「そこの戦士は、盾で決まりで良いんじゃな?」

 最後まで、盾にするか胸当てにするか迷っていたスタッチだったが、結局は盾に決めたらしい。

 「盾の方が、ブレス耐性が強くなるって言うからな」

 胸当てだとアンデッド耐性が、盾だとブレス耐性が強くなるらしい。どちらも逆は耐性(弱)になるので、効果がないわけではない。


 「水耐性という選択もあるのじゃがな・・」

 「ええい、これ以上、悩むネタを増やすな!」

 「ほいほい、ちなみに盾の形状は、丸とカイトとタワーとあるがどうするのじゃ?」

 「効果に違いがあるのか?」

 「それはないのう。主に重量と防御力の違いだけじゃ」

 「ならカイトにしてくれ、一番使い慣れてるからな」

 「あいよ、紋章は入れるかね」

 「家紋なんて、ねえから、適当に強そうな・・そうだな、水竜でも象った意匠にしといてくれよ」

 「ほいきた、あとはお任せでよいの」

 「ああ、期待してるぜ」



 「そういえば、アタシの分はどうなったの?」

 眠り続けていたビビアンは、素材うんぬんに関しては、交渉もしていなかった。

 「いや、それなんだが・・」

 言いよどむハスキーを、ソニアが横からフォローした。


 「ビビアンは、どうせ装備品を選ぶだろうと思って、水中呼吸と水中行動の付与のついたアクセサリーを頼んどいたよ」

 「そう、まあボーンサーペントの杖じゃ、もらっても使い道ないし、それしかなさそうね・・」

 サーペント・ロッドも水属性じゃなければ・・などと呟きながら納得したらしいビビアンを、ハスキーはほっとした様に見つめていた。


 「・・後は自分でやりな・・」

 耳元で囁いたソニアに感謝の目礼をして、ハスキーは出立の号令をかけた。


 「では行くぞ、まずはビスコ村に帰還する!」




 「ビビアン達は帰ったみたいだね・・」

 「一度、ビスコ村の冒険者ギルドに、大氾濫の顛末を報告しに戻られるそうです」

 カジャが、お茶を注ぎながら、答えてくれた。


 コアルームには、現在、目立って豪華なソファセットが置かれている。コアが、1000ポイント近くも払って購入した、アンティーク家具である。

 新古典主義派の流れをくむロココ調のソファとサイドテーブルとカウチの3点セット。どこぞの市民革命で斬首された王様の宮殿にありそうな、豪奢な一品であった。


 よく考えると、座るのが僕とコアだけなので、えらく無駄な気もしないでもないが、あの時は、DPが溢れる事に無我夢中で、後の事を考えていなかった・・

 設置されたソファセットを見て、返品できないかコアに聞いてみたが、断固拒否をされてしまった。

 全身を使って、家具を守ろうとするコアだったが、両手を伸ばしても、3点に手が届くわけもなく、最後は涙目で訴えかけられて、返品は諦めた・・


 今は、カジャの淹れてくれた、お茶を飲みながら、頬ずりしてソファの背凭れの感触を堪能している最中だ。

 「でもコアって、いつもオーブに座っているから、ソファっていらなくないかな?」

 そう呟くと、コアは、滑るようにオーブから降りて、ソファにちょこんと腰掛けた。

 右手はオーブに触ったままだったけれど・・


 『ふふん♪』

 ドヤ顔のコアが可愛かったので、良しとしよう・・



 「ご主人様、建設予定のゴブリン長屋とオークマンションは、いかがいたしますか?」

 カジャが、僕が忘れかけていた居住区の拡張の件を、思い出させてくれた。


 けど、そのネーミングはどうなの?

 「失礼しました、特に眷属の皆様に格差を付けた訳ではなく、皆さんのご希望を募ったところ、そのような略称がつきまして・・」


 なんでも、スノーゴブリン達は、貧乏長屋に憧れがあるらしく、「畳一畳あれば寝れる」とか「忍者は食わねど、毒楊枝」とか騒いでいるそうだ。つまり連結した狭い個室で良いということらしい。

 それに対して、アイスオークの3姉妹からは、現状の羊小屋の間仕切りより、広い部屋が欲しいと要望がでていた。ノーミンも、以前は農具置き場と一緒の大部屋に住んでいたので、できればモフモフ軍団が、遊びに来ても入れるぐらいの広さは欲しいようだ。

 それをもってオークマンションという呼び名がついたらしい。


 まあ、フロストリザードマンもドワーフも、階層に数えられるほどの居住地を持っているわけで、彼等の希望を聞いてあげるのも、吝かではない。

 DPも十分あるしね・・


 「お言葉ですが、ご主人様が思っているより残りのポイントは少ないようです」

 え?そうなの?

 「ドワーフの皆様と、そのペットの眷属化で、3635ポイントの支出がありました。この中には、新しいメイドの眷属化も含まれております」

 ああ、幽霊の彼女ね・・


 「さらにロザリオ様の往復の転送と、ワタリ様の転送、及び、宴会の諸経費が、〆て1560ポイント。つまりここまでで、5210ポイントを消費しております」

 それって、コアの最大容量を越えているのでは?・・


 「ですので、コア様が暫時、保管されている死骸を吸収して賄っておりました」

 『もしゃもしゃ』

 すると残りは?


 「スキャンで消費された分もありますし、私の目の届かない所で、使われた使途不明金も考えますと、残額は、ほぼゼロで、予備の死骸が2体というところでしょうか・・」

 カジャは直接、コアのデータにはアクセスできないから、そこのところは正確な数字はでないようだ。それでも、短期間でダンジョンの召喚システムを把握して、使用DPを概算できる能力は、すごいとしか言いようが無い。

 暗算が得意なのは、賭博師としての経験なのだろうし、帳簿付けはメイドの嗜みなのかも知れない・・


 黒蜘蛛(正式な名称は、黒衣の落し仔らしい)は、ランク9なので、その死骸は405ポイントになるはずだ。残り2体なら810が、今の残高と考えていいだろう。

 そういえば、落し仔の撃退ポイントも、溢れてしまったなあ・・などと考えながら、今後の予算を組んでみた。


 「そうすると、オーク3姉妹には、しばらく仮住まいを続けてもらおうかな・・」

 『アタイ達は、構わないよ。ここも気に入っているからね、ブヒィ』

 「ゴブリン長屋はどこに造ろうか?・・」

 『あんまり深いところは勘弁っすね。オイラ達は、アウトドア派っすから』

 まあ、ダンジョンよりも屋外の方が、ニンジャもスナイパーも活躍できそうだよね・・


 「なら、モフモフチームと同じ、1・5階層にしようか。ちょっと横に広くなりそうだけども・・」

 『そこはお任せするっす。できれば釣瓶井戸も欲しいっす』

 確かに水場は近い方が便利だろうけど、なぜ井戸?

 『長屋には井戸が付き物っすよ』


 忍者と暗殺者しかいない長屋って、物騒なんですけども・・・


 『しにがみながや』


  


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