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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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ドナドナの値段

10/26の9:45に306話の改稿をしました。その為に本編の投稿が夜になります。

 第4階層で、騒乱の宴会が行なわれていたころ、第1階層のテラスでは、穏やかにバーベキュー大会が開催されていた。

 こちらは、ゲスト組が主流を占めていて、その接待に眷属達が紛れている様子であった。


 「リン、本当に良いの?今ならまだマスターにお願いして、ここに残れるようにしてもらえると思うけど」

 アエンが、焼けた肉を渡しながら、リンに尋ねた。


 「もう決まった事なんだから、いつまでも繰り返さないでよね。アタシは一人でも大丈夫だってば」

 「大丈夫じゃなさそうだから、アエンが気にしてるのよ・・」

 隣に座った、ネオンもリンの様子がおかしいのに気がついていた。


 いくらアエンを通して面識があるとはいえ、相手は女帝と呼ばれるほどの絶対権力主義者だ。

 『パンが無ければ、ゴブリンを食べればいいのよ』

 ぐらいは言い出し兼ねない・・


 果たして、自分はその時にゴブリンを食べれるのか・・

 リンは、今更ながら、女帝の元で暮らすことの困難さを噛み締めていたのである。


 「マリアは、そんな事は言わないと思うけど・・」

 アエンは、友人の悪評の根強さに、目眩がする思いであった・・・



 ドワーフの一団から、少し離れたテーブルでは、冒険者4人組が、すごい勢いで皿を空にしていた。

 「しかし、塩振って焼いただけなのに、この串焼き、美味いな。あ、ねいちゃん、肉追加で」

 「肉が柔らかいし、臭みもないからね。しかも種類があるから飽きがこないって寸法さね」

 「ふむ、これは猪で、これは鹿か・・どれも血抜きしてからしばらく熟成してあるみたいだな・・」

 「もぐもぐ・・肉って新鮮な方が美味しいと思ってたけど、違うのね・・あ、この焼きリンゴとじゃが芋も追加で・・もぐ」


 周囲を給仕して回っている、フロストリザードマンの女性陣が、注文に応じきれないほどの食欲であった。

 「ビビアンは、病み上がりで食べすぎは良くないんじゃないか?・・」

 ハスキーが気にして、注意を促がすが、本人は無頓着のようだ。


 「大丈夫、魔力の使い過ぎで倒れてただけだし、長引いたのは、急激なレベルアップの影響だから・・」

 「そりゃそうか、あれだけの蜘蛛を一人で燃やしてたんだからな」


 実際には、ビビアンの炎の壁だけで倒した蜘蛛は少数で、残りの大半は、塹壕に落下して自滅したり、そこから這い上がってきたところを、戦士達が切り倒していた。

 それでも、大量の蜘蛛にダメージを与え続けた功績は大きく、ビビアンは一気に2レベルアップして、二桁の大台に届いていた。

 ちなみに他の3人も、9レベルには届いたが、ソニアはまだしも、他の二人はギリギリだったようである。


 「それで、この後はどうするのさね?」

 「あ、おい、その肉は俺が焼いてた・・」

 「そうだな、ドワーフに頼んだ武具が出来上がるまで1週間ほどかかるらしい・・」

 「ちょ、それも俺が狙ってた・・」

 「もぐもぐ・・なら一度、ビスコ村に戻る?ギルドに報告も必要でしょ?」

 「ならばこの焼きリンゴを・・危ねえ!・・」


 バーベキューという名の戦場では、3強1弱の様相を呈していた・・・


 「武具の加工の依頼を、仲介してもらった代わりに、というわけでもないんだが、一つ頼まれたことがある・・」

 「また、やっかいごとかい?」

 「いや、家畜の買い付けと移送だ・・」

 「ダンジョンが牧場でも始めるのかい?」

 「どうやら、そのようだな・・」


 テラスから見える場所にも、放牧用の柵が張り巡らされていた。

 「あれって、アルマジロ用じゃないんだ?・・」

 確かに、今は広々とした敷地で、4頭の大きなアルマジロが草を食んでいた。


 「元は羊用らしいぞ。山羊でも良いとは言われたが・・」

 「山羊も羊も、ビスコ村には買い取れるほど数はいなかったはずさね」

 「だな、南に下って、筍の里まで行けば、家畜市場も開いているだろうけどな」

 そう言いながら、スタッチは、3人の隙を窺うが、すでに鉄板の上には何も残っていなかった。


 「こいつら・・鬼か・・」


 

 「買い付けの軍資金は幾らなんだい?」

 「支度金で金貨7枚だ。これで羊なら20頭、山羊ならその倍を買い付けてくる。報酬は、連れ帰った羊の頭数によって上乗せしてくれるそうだ・・」

 「なるほど、安く大量に仕入れれば、その分、こっちの利益になるってわけね」

 「7枚って半端じゃないかい?」

 「現金が無いらしい。宝石も見せられたが、あれは価値が高すぎる・・俺達だと、換金時に両替商に足元を見られて大損しそうな大きさだった・・」


 「まあ、お宝がザクザクしてるようには見えないからねえ」

 ソニアは、麦畑と果樹園の他に、牧場までも始めようとするダンジョンを見渡しながらため息をついた。


 「なあ、金貨とかダンジョンで生み出されるもんじゃないのか?」

 スタッチの想像では、ダンジョンの宝箱に徐々に湧いてでる様な気がしていたのだ。


 「代償も無しに貨幣とかが生み出されるわけではないのだろうな・・たぶん本来なら、犠牲者の所持金のはずだ・・」

 ハスキーの言葉に、他の3人が不吉な物を見るような目で、支度金の入った財布代わりの巾着革袋を見つめた。


 「大丈夫なのそれ?・・」

 「持ち主の呪いが掛かっていそうさね・・」

 「恨むなら俺らじゃない方にしてくれよ・・」


 そこまで言って、ビビアンが何かに気がついた。

 「ねえねえ、これって、もしかしてアタシ達の分も混ざってる気がするんだけど」

 「そういや、そうさね」

 「相棒、その分は上乗せさせるんだろうな?!」


 だが、ハスキーはゆっくりと首を振った。

 「無理だな・・俺たちの分は、銀貨1枚あるかないかだ・・」

 「「「ああ、そうだね」」」


 宿も取れずに、酒場の親爺さんに、残り物のスープを恵んでもらっていた過去が、4人の脳裏に甦った・・・







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