メイドの心得
途中です。出来上がってから投稿しようと思ったのですが、10時頃になりそうなので、一旦、あげときます。
10時20分頃、加筆修正しました。
『それでは先任のメイド長への、ご挨拶がありますので、これで失礼いたします』
「ちょっと、アタシの話はまだ終わってないんだけど・・」
引き止めるビビアンを、さらりと流して、幽霊メイドのエルマは壁の向こうへと消えていった。
「さて、私も駐屯地に戻るとするか・・」
「あ、あの、駆けつけてくれて、ありがとう・・」
「なに、大した事はしていないし、面白いものも見れたしな」
「それで、できれば、あの日記の内容は忘れて欲しいのだけれど・・」
「くっくっくっ、さて、どうするかな・・」
「・・この守護者も、良い性格してるわね・・」
「ははは、それではまたな、『贖罪の業火に身を焦がす、薄幸の魔法少女ビビアンヌ』よ!」
「その名前で呼ぶなーーー!」
笑い声を残しながら、ロザリオは最北湖へと転送されていった。
後にはポツンと、ビビアンだけが取り残された・・
「・・なんだったのよ、今の騒ぎは・・」
疲れたように呟くビビアンの耳に、通路を駆けて来る複数の足音が聞えた。
そしてノックも無しに、部屋の扉が蹴破られた。
「ビビアン!無事か?!」
「敵はどこにいるさね!」
「夜這いを掛けられたって?!」
ハスキーを先頭に、必死の形相で助けに現れた仲間達の顔を見て、ビビアンは何故かほっとした。
「大丈夫、色々出てきたけど、納まる所に納まったから・・」
ビビアンに怪我も無く、部屋に不審人物も居ない事を確認したハスキーが話し掛けた。
「なら良いんだ、体調はもう回復したのか?・・」
「うん、もう平気。ばっちり目が覚めたわ」
「でもよ、ビビアン泣いてるじゃねえか・・」
スタッチに言われて、目元に指をあてると、涙で濡れていた・・
「あれ、おかしいね・・いつの間に・・」
ビビアンは、一生懸命に笑顔を見せるのに、瞳から零れる涙は止まらなかった。
泣き笑いをするビビアンの頭を、ソニアがそっと抱き抱えた。
「怖い夢でも見たんだろうさ・・大丈夫・・アタシらが側に居るさね・・」
ビビアンが泣き止むまで、3人はその場で佇んでいた・・・
ダンジョンコアルーム(移民管理センター兼メイド部屋)にて
『改めて着任のご挨拶をさせて頂きます。この度、メイドとして配属されました「エルマ」と申します。今後ともよろしくお願い申し上げます』
目の前で、半透明のメイドが、膝を折って御辞儀をしていた・・
「私が先任のカジャです。暫定的にメイド長を拝命しておりますので、貴女は私の指揮下に入ってもらいます」
『よろしくお願いします』
カジャが、いつの間にかメイド長に昇格していた。
メイドの序列は、やはり雇用期間で決まるらしい。ランクから見るとエルマの方が上なのだが、下克上は起きなかったようだ。
「前職の経歴を聞かせてもらえますか?」
『はい、メイドとしてはオババ様の所で30年、その後、教団で3年ほど務めました』
「前職からの紹介状はありますか?」
『残念ながら、勤務中に殉死いたしましたので、もらえておりません』
「そうでしたね、ですが貴女の最期を看取った老女から、その献身を称える御言葉があったと聞いております。それをもって紹介状といたしましょう」
『ありがとうございます』
メイドの世界にも厳しい仕来りがあるんだね・・
それと非常に気になるんだけど、前々職のオババ様って、もしかして?・・
『「冥底湖の魔女」と呼ばれている方です』
・・やっぱりそうなんだ・・あの婆さんの関係者だったとは・・
「あれ?でも実際には、本物の『冥底湖の魔女』が居るはずだよね?」
『先代の魔女は、私が勤め始める少し前に、ダンジョンに攻めて来て、オババ様に返り討ちにあったそうです』
「じゃあ、あのナンバーで呼ばれていた守護者達は?」
『そのとき、システムごと奪ったと聞いております』
うわあ、えげつない事するね・・さすがオババだね・・
「前職がどうあれ、今の貴女は、こちらのご主人様にお仕えしているメイドです。その事をくれぐれも忘れないように」
『はい、メイド長』
「私達の職務は、ダンジョン内の清掃、コアルームの整理整頓、ご主人様とコア様の御側周りと護衛、戦闘時における戦術の助言と遊撃、敵対勢力への潜入及び破壊工作です」
いやいやいや、後半はメイドの仕事じゃないよね?・・
『心得ております』
あれ?納得しちゃうんだ・・
「今の所は手が足りずに、他の眷属の方々には、ご自身の居住区の管理はお任せしている状況です」
『はい』
「ですが一部の方は、お忙しいのか、部屋の掃除を後回しにされています。まず、この汚部屋・・いえ、片付いていない部屋を清掃します」
『承りました』
「たとえ、中から鍵を掛けて抵抗されたとしても、貴女なら壁を抜けて入室できるはずですね」
『お任せください』
「期待していますよ」
メイドが二人で、恐ろしい相談をしていた。特になんでも貯め込む癖のある某ニンジャ・ゴブリンにとっては・・・
『なむ~』
そこへ第4階層に落ち着いた、ドワーフのメンバーから連絡が入った。
『おう、旦那、今ちょっと良いかのう?』
「アイアンかな、何か不都合でもあった?」
『いや、こっちは粗方片付いたんで報告じゃ。立派な寝床に、鍛冶場も用意してもらって感謝しておるよ』
「気に入ってもらえたなら良かったよ」
実際、ドワーフの住居の好みが分からなかったから、適当に拡張したからね。少し心配だった。
広さは50人を予定していたから、余裕はあるんだけど、なにせ急造だからね・・
『それで、こっちは勝手に酒盛りが始まったんじゃが、一緒に飲まんか?』
流石ドワーフだね、荷解きも終えない内から宴会を始めたんだ・・
「コア、各地域の状態は?」
『おーるぐりーん』
どうやら、死神も大人しくしているようだね。
「了解、今からそっちに行くよ」
『おう、待っとるぞ。ついでに酒と肴も連れてきてくれ』
「はは、了解」
「コア、いつもの宴会セット(300DP分)と飲み放題セット(300DPまで)をドワーフ居住区の食堂に変換」
『よろこんでー』
「あと、手の空いているメンバーは全員、食堂に集まるように連絡して。ゲストは申し訳ないけど、屋外テラスのバーベキューで勘弁してもらおう」
『らじゃー』
さて、お酒が足りると良いんだけどね・・・
無理でした・・・




