舞い降りた悪夢
「ただいま」 「ぁい」 「グヒィ」
慌ただしくダンジョンに帰り着いた僕らを、コアとアグーが出迎えてくれた。他のメンバーはお仕事中らしい。ソリから急いで獲物のヘラジカ2頭を降ろすと、コアに吸収を頼む。
「コア、急いでヘラジカ2頭とも吸収して。すぐにおっかない山親父が怒鳴り込んでくるから」
「ん?・・・ん」
山親父(熊の別名)がわからなかったのか、首をかしげながらもコアがヘラジカを吸収してくれた。このDPで灰色羆を迎え撃つ。
ソリは再び木の柵として活用しよう。一つはトンネルの入口を塞ぐように配置する。杭の先端は安全の為に丸めたので刺さりが甘いから、地面に穴を掘って埋めなおす。
「はっ!おいらだけ外に取り残されたっす」
外側で柵を支えていたワタリがお約束をしていたが、本人はこの世の終わりみたいな表情をしていた。
「いや、そんな悲壮な顔しなくても。ぐるっと回って正面通路から戻れば?」
「その手があったっす」
うっかりワタリ兵衛はおいといて、2つ目の柵は小部屋の入り口に配置する。外側の柵は気休めだけど、こちらは防衛用だから念入りに補強しておこう。
「コア、50-100DPで設置可能な罠のリストをお願い」 「ん」
ヘラジカはランク3だったので1頭が45DPになったから、現在のDPは106だ。有効な罠が無い場合には召喚で戦力を増やして戦うことになるけど、ランク3が1体だと正直厳しいと思う。
設置可能罠
落とし穴: 広くて深くて痛い落とし穴 50DP、広いか深い毒針の落とし穴 75DP、
深い水牢の落とし穴 100DP
踏むと作動:踏むと鉄格子 50DP,踏むと毒針 75DP、
踏むとギロチン 100DP
触ると作動:触ると扉が閉まって施錠 50DP、触ると毒針 75DP、
触ると属性ダメージ(弱) 100DP
開けると作動:開けると石弓 50DP、 開けると毒針 75DP
開けると属性ダメージ(弱範囲) 100DP
見ると作動:見ると混乱(確率低) 100DP
毒はだいたい75DPかかるのかな。効果がわからないのと、1つしか設置できないから却下だね。確実性で50DPを2個か、一発勝負で100DPを1つか・・・
「コア、罠1-6を小部屋の入り口に設置、さらに罠2-6をコアルームからトンネルに入ってすぐの床に設置して」 「ん」
「第一次防衛ラインとして小部屋にコマンド部隊3名」 「ん」 「了解っす」
「第二次防衛ラインとしてコアルームにアップルチームとケンチーム」
「ん」 「ギャギャ」 「バウ」
「最終防衛ラインは正面通路の五郎〇チーム」 「ん」 「グヒィ」
「残りの皆は巣穴で待機でよろしく」 「ん」 「キュキュ」「ギュギュ」
「今回の敵は単独だけど強大だよ。いざとなったらコアルームも放棄して、一度外に退去する可能性も考えておいて」
「それほどヤバイっすか?」
「たぶんね」
迎撃の準備は整えたので、待ち時間を利用して荷物と装備の整理をしておこう。
空蝉の計で消費した石槍を、各自に再配備。同時に担いできたヘラジカの角、3頭分とモモ肉のブロックを倉庫に運び込んでおく。
食事はケンチームとアップルチームは済んでいるので、親方達とコマンド部隊には大量に残っていたコオロギを配給しておく。留守番組は少し前にすませておいたそうだ。
ソリから外したロープの使い道を考えている時に、コアが警報を発した。
「きた!」
一呼吸おいて、獣の唸り声と木の柵が砕け散る音がダンジョン内に響いて来た。
「柵が一撃で壊れるのか・・・」
いくら羆でも強すぎないか?
「コア、奴をスキャンして」 「ん」
柵の残骸を踏み越えてトンネルに侵入してきた奴を、白い光りの帯がとりまく。
グリズリー・バーサーカー:狂乱の灰色羆
種族:魔獣 ランク7
HP63 MP13 攻撃力21 防御力7
技能:威嚇、追跡、爪、牙、登攀、水泳、耐寒、嗅覚
特殊技能:ハウリング(咆哮)、バーサーク(凶暴化)
備考:咆哮 使用MP3 自分を敵と認識した相手に状態異常:恐怖を付与する
凶暴化 使用MP1 命中+20% 攻撃+4 ただし回避不可のペナルティ
一瞬、意味がわからなかった。
そして次の瞬間、叫んでいた。
「コマンド部隊はコアルームまで撤退!接敵しちゃダメだ!!」
だがその指示はすでに遅く、2枚目の柵も一撃で吹き飛ばされた。
僕らのダンジョンに悪夢が舞い降りた・・・
DPの推移
現在値:16DP
吸収:ヘラジカx2 +90
設置罠:広くて深くて痛い落とし穴 -50
設置罠:踏むと鉄格子 -50
スキャン: -1
残り 5 DP




