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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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204号室の入居者

 「どうやら本人にその気は無いみたいだぞ。諦めて帰ったらどうだ?」

 ロザリオが、ビビアンの魂を連れて行こうとする死神を説得しようとした。


 「残念デス、磨けば光る素材なのデスが・・」

 「今が曇っているように言うな!」

 すっかり調子の戻ったビビアンから、鋭いツッコミが飛び出す。


 「どうやら、お呼びでは無くなったようデスね。それでは又のご利用をお待ちしているデス・・」

 そう言って、死神は床に沈んでいく・・


 「おい、外はそっちではないぞ!」

 半分ほど床を透過した死神に、ロザリオが指摘した。


 「いえいえ、せっかく居心地が良い別荘を用意してくれたのデスから、しばらくは旅行気分を満喫するデス」

 「迷惑だから、消え失せろ」

 「そう言われても、貴女は私の上司でもないデスし・・」

 死神はそのまま床に消えていった・・・


 「主殿、どうする?完全に居着くつもりだぞ、あれ」

 『うーん、闇の精霊が住み着いてくれるのは、最初の予定通りだから良いのだけれど、ゲスト認証も受けてくれない相手なのは、困ったね・・』

 「拒絶されたのか・・」

 『あれ?そういえば申請出してない?』

 『まだー』

 「主殿・・・」



 いやいや、いきなり精霊の泉(闇)から移動したから、てっきり制御不能と勘違いしただけだから・・

 「コア、一応、レッサー・デスにゲスト申請してみて」

 『ん・・・』

 まあ、拒否されると思うけどね・・拒否するよね?


 『・・・にんしょう』

 なぜ?!

 コアの投影するダンジョンマップには、第二階層の奥で、ゲストを表す緑色の光点に変わった死神が映っていた。



 「つまり最初に、主殿がゲスト申請を忘れなければ、こんな騒ぎにはならなかったと・・」

 「それってつまり、アタシも掻かなくて良い恥を掻かされただけだと・・」

 『やれやれ、ですね』

 「「元凶の片割れのお前が言うな!!」」


 幽霊メイドに突っ込む、ロザリオとビビアンの声が重なった。


 『メイドですから・・』




 「逸材ですね・・ご主人様、あのメイドを雇用しましょう」

 コアルームに戻ってきていたカジャが、モニターを熱心に見つめながら呟いた。


 「え?でも幽霊だよ?」

 「問題ありません。ダンジョンに幽霊メイドは憑き物です」

 上手いこと言ったね・・


 「第二階層の地下墓地なら、雰囲気もぴったりですし、あれだけの人材を遊ばせておく必要はないと存じます」

 カジャはえらく乗り気だけれど、なにかしがらみが有りそうなんですけど・・


 「因縁が無ければ、ゴーストになったりしませんので」

 ごもっともです・・




 「それでなんでエルマがここに居るのよ?しかも幽霊になって・・」

 『もちろん貴女の安眠を守るためです。幽霊になったのは偶然です』

 「ぐ、偶然なんだ・・・」


 メイドのエルマの説明によると、死んだ場所が、特別だったらしく、彼女の意識ごとそれに取り込まれたらしい。その後、気がつくと幽霊となって麦畑に立っていたそうだ・・


 「ちょっと待て、麦畑と言ったか?」

 横にいたロザリオが、聞き捨てならない言葉を耳にして、慌てて話しに割り込んだ。

 『呪文で焼き払われた、ライ麦の畑です』


 「キャッチャーか・・・」

 ロザリオは額に手をあてて呻いた・・


 「ねえねえ、何か不味いの?・・」

 ビビアンが、心配になって尋ねてきた。

 

 「うちで一番恐れられている存在だ・・」

 「なによそれ、最恐は貴女じゃないの?」

 「・・どういう意味で最恐なのか、あとでじっくり問い糺すとしてだ・・私などは足元にも及ばぬな・・」

 「こ、この威圧感が、足元にも及ばないって・・嘘でしょ?!」


 「私もまだまだ鍛練が足らないという事だ・・」

 「・・どんな怪物を飼っているのよ、ここは・・」


 ビビアンは、そんな怪物に、一度は取り込まれたというエルマを心配して尋ねた。

 「それで、体調・・は幽霊だから関係ないか・・精神状態・・は、人をからかう位だし平気そうね・・見た目も半透明なだけで、以前とちっとも変わらないし・・うん、大丈夫みたいね」


 『私よりビビアンです。4年前から見て、まったく成長していないように見えますが・・』

 「少しは成長したわよ!」

 『身長と体重は増えたようですが、それ以外の・・』

 「ストップ、それ以上、乙女の秘密を口にすると、エルマと言えども容赦しないわよ・・貴女はここの眷属じゃないから遠慮はいらないわけだしね・・」


 ビビアンの本気の脅しに、ロザリオでさえ一歩後ずさった。


 『なるほど、眷属になれば良いわけですね』

 ベテランのメイドは、ビビアンをあっさり、かわした。

 「ちょっと、貴女はオババの眷属でしょ。勝手に所属を替えたら怒られるわよ・・」

 『今はフリーですので、問題ありません。ということでお願いします』

 メイドは見えないコアルームに向かって、要請した。


 「ちょ、ちょっと、エルマ、本気なの?!」

 焦るビビアンの目の前で、メイドは、足元に出現した白い魔法陣から立ち昇る光の柱に包まれていった。


 眩しい光が治まると、そこには・・・さっきと変わらぬ半透明のメイド服姿があった・・


 だが、投影マップを見ることができたなら、そのマーカーが、オレンジから、眷属の青に変わったことに気がつけたはずである。


 半透明のメイドは、スカートの裾を摘まむと、片膝を折り、正式な作法で、この場に居ない雇用者への挨拶をした。

 『メイドのエルマと申します。今後ともよろしくお願い申し上げます』


 呆気にとられていたビビアンが、何かを言いかけたが、それより早くエルマが話し始めた。


 『それでは、先程の続きでよろしいでしょうか?』

 「続きって?・・・」

 『もちろん、ビビアンが淑女として成長していない件についてです』


 「・・あんたは、そんな事の為に、眷属になったのかああああ」


 何度目になるか分からない、ビビアンの絶叫が、ダンジョンに木霊した・・


 



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