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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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魔法少女の願望

投稿が遅くなりました。申し訳ございませんでした。

 私の枕元に、死神が立っていた。

 黒い刃の大鎌を持った、黒いフード姿の死神だ・・

 昔、夜更かしをすると、「悪い子には死神がやって来て、冥府に連れていかれるよ」と叱られた、その死神だ。


 私が悪い子だったから、冥府に連れて行かれるのだろうか・・

 父は、私が生まれなければ、無理な冒険をして死ぬことはなかった・・

 母は、私がいなければ、エルフの里で苛められることはなかった・・


 私は、人族の村では、チェンジリング(妖精の取替えっ子)と囁かれ、エルフの里では、フォーリング(堕落の申し子)と疎まれた・・


 そんな私が、一時でも、幸せにしていたから、罰が降ったのだ。

 


 あれは、私がまだ小さかった頃・・


 「女の子の幸せって何かな?」

 「素晴しいご主人様に、誠心誠意お仕えすることです」

 「それって、メイドの幸せよね・・」


 「それ以外は・・難しいですね」

 「貴女に聞いた私が馬鹿だったわ・・」

 「ですが、他のメイド達が噂している事なら、少々・・」

 「それよそれ、それが聞きたいの」


 「なんでも、『空から落ちてきてお姫様抱っこ』、『白馬の王子様と二人乗り』、『抱き抱えられて湖に落ちる』だとか・・」

 「なるほどね、参考になるかも・・」

 「そうですか?空から落ちたら傘を開けば良いですし、馬も一人で乗れます。湖に落ちるのに抱きつかれていたら生死に関わると思いますが」

 「・・貴女ならそうするんでしょうね・・」



 昔、ダンジョンに居た頃に、メイドと話した会話が想い出された・・

 これが走馬灯というものかもしれない・・

 あの頃は、ダンジョンの外の世界に少しだけ憧れがあった。

 同じだけの恐れもあったのだけれど・・


 私でも、人並みの女の子としての幸せが掴めるかもしれない。

 その人並みが、どういうものなのか、よく分からなかっただけで・・


 冒険者になってからも、色々調べて回った。

 「冬の寒い日に、手造りの防寒具を、贈ることかな・・」

 「やはり、手料理を美味いと言って、残さず食べてもらうことだね」

 「自分より強い奴に抱かれることさね」

 「仕事の出来る後輩に、休憩時間に肩を揉んでもらうことでしょうか」

 「モフモフだね、モフモフ」


 ・・理解できない幾つかを除いて、私も好きな人が出来たら、試してみようと思っていた・・

 幸せというものを、探してみようと思っていた・・・


 そうしたら、いつの間にか、誰かさんに殆ど再現してもらっていたのだ。

 最初は、水牢に落とされたとき・・

 次は、ゴブリン穴で落ちかけたとき・・

 邪神教団を追って、馬に乗ったとき・・

 初めて料理に挑戦したとき・・

 

 あとは冬が来たら、野兎を自力で狩って、解体して襟巻きにして贈る・・


 どうやら、それは出来ないようだけれど、思い返せば、人並みの幸せは、一通り体験できたのかも知れない・・


 「そっか、私って幸せな女の子だったんだね・・」


 届かないと信じていた、普通の幸せに、いつの間にか手が届いていた。

 それは、諦めて、それでも伸ばしていた手を、彼が握ってくれたから・・


 だとしたら、もう、これで終わりで良いのかも知れない。

 私が、彼を不幸にする前に・・

 私の宿命が、私の好きな人を苦しめる前に・・このまま消えた方が・・・




 『理解できません・・』


 懐かしい声が聞えた・・


 『仕えるべき主人が見つかったというのに、職場を放棄するのですか?・・』


 死神と私の間に、彼女が立っていた。いつものメイド服を着て、少し怒ったような顔で・・


 『ご主人様から解雇されるまで、全力を尽くすのがメイドたる者の心得です』


 いや、私はメイドじゃないんだけれど・・そりゃあ昔は憧れて目指した事はあったけど・・


 『この不審者は、私が撃退いたします。貴女は、すぐに通報を!』


 ちょっと待って、なんで私の夢で、勝手に行動してるのよ?相手は死神よ、メイドが敵うわけないじゃない!!


 『侵入者を排除するのもメイドの務めですから』


 「それはメイドの務めじゃないってば!!」



 思わず出た叫び声で、朦朧としていた意識が覚醒した。

 私は、地面が剥き出しの地下室で、やはり土を固めたような簡易ベッドの上に寝かされていた。

 狭い部屋には、木の扉が一つだけあり、隅には水差しと、ゴブレットの乗ったテーブルが置かれている。


 記憶を辿れば、最北湖の殲滅戦で、魔力枯渇を引き起こして、気絶してからの事が思い出せない・・

 今の様子を見れば、仲間がどこかに運び込んでくれたのだと分かる。


 そして・・


 部屋の隅に死神が浮いていた。


 その前に立ち塞がる、半透明のメイドもいた。


 「夢じゃないんだ!」


 私は2度目の叫び声をあげた。




 『にゅーちゃれんじゃー』


 闇の精霊を追いかけて、モニターしていると、コアが新たな警報を告げた。

 投影マップには、闇の精霊のオレンジ色のマーカーと、ゲスト扱いのビビアンの緑のマーカーの間に、さらなる侵入者を表す、オレンジのマーカーが割って入ってきた。


 「誰?これ?」

 敵対的侵入者なら赤のマーカーで表示されるはずで、オレンジということは中立に近い存在のはずだ。

 『あんのうん』

 コアにも分からないらしい。ただし、その位置取りから、ビビアンを闇の精霊から守っているようにも見える・・


 「ビビアンの守護精霊とか?」

 『のんぐりーん』

 そうか、ビビアンを助けるものなら緑表示ででるよね。


 兎に角、貴重な時間を稼いでくれているらしい。

 今のうちに、増援を送り込もう・・

 「コア、最北湖からロザリオを引き抜いて、あの部屋に転送して」

 『よっこいしょ』

 『主殿、急にどうした?』

 「説明はあと、その部屋の闇の精霊を取り押さえて」

 『ふむ・・冒険者の娘以外に2体いるがどちらだ?』


 新しい方も、ロザリオから見て闇の精霊に見えるのか・・泉でブッキングしたのかな?・・

 「コア、オレンジマーカーを両方、スキャンして」

 『ぴきゅーん』



 レッサー・デス「レス」:低級死神

種族:不死者インモータル ランク9 眷属化:不可

HP99 MP13 攻撃9(+13死神の鎌) 防御9(+13死神のローブ)

技能:浮遊、両手鎌、回避、受け、隠密、クリティカル、魔法耐性、頑健、不死者特性(中)、物理耐性

特技:エセリアル(物質透過)、デス・ストライク(死神の一撃)、リボーン(復活)、精霊魔法(闇)

備考:物質透過 使用MP0 身体(と所持品)を非物質化させて、ほとんどの物体を透過する。

   死神の一撃 使用MP1 自動的にクリティカル攻撃。対象は抵抗に失敗すると瀕死になる。

   復活 使用MP0 HPが0以下になっても、24時間後に復活する。



 ゴースト「エルマ」:幽霊

種族:アンデッド ランク9 眷属化コスト:特殊

HP45 MP45 攻撃9 防御9(+7メイド服)

技能:家事、料理、儀礼、奉仕、隠密、格闘、暗器、警戒、物理耐性、不死者特性(上)

特技:エセリアル、アルカナ魔法(空間)、エイジング(老化)、アンチエイジング(老化防止)

備考:老化 使用MP1 接触した対象が抵抗に失敗すると強制的に老化現象が起こる。

   老化防止 使用MP4 接触した対象の、異常な老化を回復できる。



 「『やばいのきたー』」







 

 


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