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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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首狩り族と探検隊

 「粗茶ですが・・」

 「あ、ああ、これはどうも、ご丁寧に・・」

 「むぎ茶といいます、お口にあえば良いですが、ジャー」


 あれからすぐに、ハクジャが出迎えに向った。

 こちらからもカジャを転送して、ドワーフの接待を一任する。いきなり僕が合うと、彼が混乱するかも知れないからね。

 ハクジャは、マンガンと名乗ったドワーフを、地底湖の上の居住地に案内した。僕らがフィッシュボーン(魚の骨)と呼び習わしているフロストリザードマンの住処だ。

 その一室で、ハクジャとメイド姿のカジャが、ドワーフに事情を説明している。


 「というわけで、現状ではアエン殿が我々に、タングステン殿が『不凍湖の龍』に身を寄せています、ジャー」

 「なるほど、私も貴方方に助けて頂いたわけですな」

 「アエン殿の要望もあり、お節介を焼いたわけですが、ご迷惑でしたかな?ジャジャ」

 「いえいえ、あのまま水の底で放置されていたら、碌なことになっていないでしょう。感謝しております」


 そのタイミングで、カジャがエールを出した。

 「地酒でございます・・」

 「おおお、これは有難い!なにせあの樽の中では、酒は飲めませんでしたからな」

 「ささ、喉を潤してくだされ、ジャ」

 「ではでは、遠慮なく」

 ゴキュゴキュと喉を鳴らしながら、大振りのゴブレットに注がれたエールを飲み干した。


 「ぷはーー、生き返った気持ちですなー」

 口の周りに泡をつけながら、マンガンが笑みを浮かべた。

 そこへすかさず、カジャがお替りを注ぐ。


 「おお、すいませんですな。先ほど地酒とおっしゃいましたが、これは中々、美味いエールですぞ、ングング」

 「ドワーフの方にそう言っていただけると、杜氏達も喜びます、ジャー」


 何度かお替りして、マンガンの緊張が解けた頃に、本題に入った。

 「さて、マンガン殿は1級採掘技師とお聞きしましたが、この先はどなされますか?ジャジャ」

 「と、言いますと、移住先の事ですかな?」

 「さよう、タングステン殿が主導する移住先は、この場所から三日月を挟んで、丁度対岸にあります、ジャ。あと半日もすれば、北の鉱山から移民キャラバンが到着して、うちも、あちらも賑やかになるでしょうな、ジャー」


 「なるほど、どちらに腰を落ち着かせるのか決めたほうが良いと・・」

 「樽から出られて、右も左もわからぬうちに、将来に関わる事を決めるというのも大変ではありましょうが・・ジャジャ」

 マンガンはしばらく考え込んでいたが、ふと顔を上げた拍子に、扉の隙間からこちらを覗う、3対の瞳に気がついた。


 「おや、あれは確か、私を起こしてくれた・・」

 「「「わっ、見つかった!」」」

 焦った子供達が体勢を崩して、部屋の中に雪崩れ込んできた。


 「こら、お前達、大人しくしていなさい!ジャー」

 族長のハクジャに怒られて、縮こまった子供達だったが、何か言いたそうにモジモジしていた。

 それに気がついたマンガンが、優しく尋ねた。


 「何か私に聞きたいことがあるのかな?」

 すると、一人が意を決してマンガンに聞いた。


 「叔父さんが竜王様ですか?・・シャー」


 目を丸くして驚いたマンガンは、次の瞬間、噴き出していた。

 「ブハッ、いやいや、私はそんな、大層な者ではないよ。ただの鉱物マニアさ、ハハハ」

 その答えを聞いて、あきらかに落胆した子供達に、マンガンが話し掛ける。


 「でもね、世界の半分はあげられないけれど、地底に埋まったお宝なら、掘り出してみせるよ」

 その言葉を聞いた3人が、キラキラした瞳でマンガンを見つめた。


 「「「トレジャー・ハンターだね!」」」


 その後、口々に弟子入り志願をする子供達を宥めすかしながら、部屋の外に追い出した。

 「お騒がせして申し訳ない、ジャジャ」

 「いえ、あの年頃の子供は、元気があって良いですな。私も昔の夢を思い出しましたよ・・」

 どこか遠くを見つめていたマンガンは、一つ頷いてから話始めた。


 「うん、私はこちらにお世話になろうと思います」

 「宜しいのですか?こちらに移住するとなると、マスター様の眷属になっていただく必要がありますが、ジャジャ」

 「ええ、助けて頂いたお礼もありますし、何より子供達のあの笑顔を見ていれば、ここの良さが伝わってきますからね」

 それを聞いたハクジャは、大きく頷くと、握手の手を差し伸べた。


 「では、これからは同じ仲間として歓迎します、ジャー」

  二人はしっかりと握手を交わした。



 

 マンガンは、その場で眷属化を終えて、ドワーフの居住区の案内の為にコアルームに転送されていった。

 それを見送ったハクジャが、後ろに控えるカジャに話し掛ける。


 「子供達が覗いていた事を知っていたな?ジャー」

 「はい、ハクジャ様」

 「彼の勧誘に利用したか・・ジャジャ」

 「はい、マンガン様は脱出艇を回してもらえるほどの重要人物です。ご主人様には必要な人材であると判断いたしました」


 「確かにな・・これからドワーフが大量に移住して、鍛冶や彫金が盛んに行なわれるようになるだろう。その為には鉱石や燃料となる泥炭が大量に必要になる。1級採掘技師の技は大きな助けになるはずだ・・ジャジャ」

 「地酒で釣れると良かったのですが、それほど執着されませんでしたので・・」


 「まさか子供達に言い含めたのでは、あるまいな?ジャー」

 「そこまでは仕込んでおりません。覗きにきたのは、あくまで彼等の好奇心によるものです」

 「ならば良い・・ジャジャ」


 「ですが、一つ想定外な事が・・」

 「なんだ?ジャ」

 「子供三人組リトルトリオが、全員、採掘士見習いを希望しております。私としましては、一人は杜氏の後継者に、一人はメイド見習いに推薦しようと思っていたのですが・・」

 

 扉の向こうから、甲高い子供の声が聞えて来た。

 「母さん、ランタンの油ってどこに仕舞ってあるっけ?シャー」

 「このツルハシ借りていくね。ちゃんと洗って返すからー、シャシャ」

 「大丈夫だよ、蠍と毒蜘蛛には気をつけるから・・シャー」


 それを聞いたハクジャがため息をついた。

 「召喚術士の次は財宝探検家か・・ジャジャ」



 「「「母さん、お弁当お願いね!」」」


 「はいはい、段差には気をつけるのよ」


 「「「は~い!」」」


 


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