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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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トレイダー分岐点

 「アイアン爺さん、そっちは任せたぞ」

 「ああ、団長も達者でな」


 ドワーフキャラバンが、行き先別に二つに分かれた。

 三日月湖に向う1号車と3号車は、モリブデン団長がそのまま率い、オークの丘に向う4台は、2号車のアイアンが率いていくことになった。

 最北湖から南には、蜘蛛の脅威は及ばないであろうが、野生動物や亜人の襲撃の可能性がある。なので三日月湖までは、第一機動部隊と狼チーム3頭が、団長達の護衛として随伴することになった。

 残りのメンバーは、少し空きの出来た4台の移動車両に、人族の冒険者を詰め込んで、オークの丘を目指すことになる。

 最北湖には、一応の後詰として、ロザリオとスケルトン部隊が残ることになった。

 エルフ親衛隊は、穴熊チームの牽く橇に乗って、新しい眷族であるアイスオークの3姉妹は、同じく新入のブラウン・ベアに跨って、キャラバンに付き従っている。


 ここまで来れば、通い慣れた道であり、途中には難所も無い為に、巡航速度をあげることもできる。

 途中まで同じルートを南下していた二つのキャラバンが、やがて分岐点に差し掛かったとき、1号車の屋根にいたワタリが、団長に別れを告げた。


 「ここからは道が分かれるっす。道中の無事を祈ってるっす」

 天井のハッチを開けて、顔を覗かせていた団長が、ワタリに握手を求めた。

 「ここまで来れたのは君達のおかげだ。キャラバンを代表して礼を言う・・本当にありがとう・・」


 「オイラ達はマスターの命令で動いたに過ぎないっすよ」

 「そのマスター殿には直接会って、礼を言うことが出来なさそうなので、ワタリから伝えてもらいたい」


 団長の常識からいえば、眷属化を希望しなかったドワーフの前に、ダンジョンマスターが姿を現すことなど有りえなかった。なので、ワタリに伝言を頼む形で、謝意を伝えたかったようだ。


 ワタリからすると、オークの丘まで寄り道してくれれば、マスターは挨拶にひょこひょこ顔を出すのにと思いはしたが、あえてその事は告げなかった。

 主人の威厳を守るのも眷族の務めなのだから・・


 「了解っす。必ず伝えておくっすよ」

 「それでは、ここでお別れだ。アイアン達を頼んだぞ・・」

 「団長もお元気で・・」


 徐々に離れていく二つのキャラバンで、ドワーフ達が別れを惜しんで手を振り合っていた。

 やがて森の木々が、お互いの姿を隠してしまうその時まで・・・ずっと・・・



 2号車の屋根に移っていたワタリが、誰にとも無く声を掛けた。

 「さあ、あと少しで帰り着くっすよ!」




 その頃、ダンジョンコアルームは、ドワーフの受け入れ準備に追われていた。


 「コア、毛皮と藁布団を人数分、変換して」

 『らじゃー』

 「それと、酒造部屋と裁縫部屋を新たに拡張。サイズは9マス部屋で良いと思うから、鍛冶場に上手く併設して」

 『ふぁじー』

 

 「ご主人様、28名ともなりますと、衛生施設が手狭かと・・」

 「トイレと水浴び場だね。コア、拡張できる?」

 『おふこーす』


 移住してくるドワーフの人数と職種が決まったので、それに合わせて居住区をカスタマイズしていく。

 鍛冶場と魔道具工房は、初期に用意しておいたから、大丈夫なはずだ。人数も想定内に納まったから、寝室や食堂などの生活空間には余裕があった。


 足りない専用施設などを拡張していると、その合間を縫って別の用件が舞い込んできたりする・・・



 『かくかくしかじか』

 コアが緊急性の低い警報を鳴らした。

 どうやら領域化したヘラジカの湖に、野生動物が侵入したらしい・・・

 「ミコトチームで排除して。逃げ出したのは追わなくていいから」

 『ピュイピュイ』


 水を飲みに来たヘラジカの群れのようだ。領域の境界線は、湖の水面までなので、何頭かが口をつけた時点で侵入者扱いになる。

 「コア、ヘラジカの湖付近は、脅威度3までは警報なしで。適宜、駐屯部隊で処理して」

 『らじゃー』


 ちなみに脅威度というのは、モンスターのランクを元にした強さの尺度で、特殊能力が無ければランクがそのまま脅威度になる。

 ヘラジカやワイルド・ボアなどの野生動物は脅威度3以下なので、これからは警報は鳴らない。地上部分のキャッチャーも、同じ設定にしてあった。

 脅威度3以下を、侵入者と認定せずにスルーする設定にすることもできたけれど、撃退のポイントが入らなくなるので止めた。

 駐屯している凍結雷撃ウナギチームには悪いけれど、その都度、追い払ってもらうことにしよう・・・



 『マスター様、「不凍湖の竜」への伝言は無事に済みました、ジャー』

 ハクジャが、このタイミングで報告してきた。

 とはいえ、ドワーフキャラバンの到着予定を知らせる伝言は、相手にとって重要なので、その返事は即座に通達するように言ってあったから仕方がないのだけれど・・


 「それで何か言ってた?」

 『あちらも準備はほぼ終わっているそうです、ジャー。タングステン殿からは、丁寧なお礼の言葉を頂きましたです、ジャー』

 

 キャラバンの人数が半分になってしまった事に、愚痴の一つでも言われるかと思っていたけど、大人の対応をしてくれたらしい。

 どうやらキャラバンから離脱して、辿り着けなかったドワーフ達は、自己責任ということで納得してくれたようだ。まあ、強制連行しても、わだかまりが残っただろうから、他に方法も無かったのだけれども・・


 『移住者の受け入れが済んだら、改めて挨拶に来るそうです、ジャー』

 「こちらもしばらくドタバタするだろうから、気にしない様に伝えておいて」

 『了解しました、ジャジャ』



 やっと本来の案件に戻ろうとした所で、三度、邪魔が入った・・・


 『大変です、大変です、ますたー様、シャシャー』

 珍しくフロストリザードマンの子供から念話が入った。

 『こら、マスター様に直接お話せずに、まずハクジャ様にって教えたでしょう、シャー』

 「いや、緊急の用事なら問題ないよ、それで何があったのかな?」


 『樽の中から変な人が出てきました、シャー』


 あ、すっかり忘れていたけれど、居たね、最後の脱出艇の乗組員が・・・


 『・・・だれ?』


 


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