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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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どう思われていようと関係ないわね

  最北湖南岸の仮設要塞にて


 「だとしたら、蜘蛛の脅威は去ったというわけだな?」

 仮設の地下施設の1室で、ドワーフキャラバンの団長であるモリブデンが大声で尋ねた。

 「これで完全に終わったかどうかはわからないっすけど、一旦は退いて行ったのは間違いないっす」

 敵後方の霍乱任務から戻った、ワタリが返事をした。

 その場にいたドワーフ達に安堵の表情が広がるが、すぐに気を引き締めてワタリの言葉を待った。


 「それで、この先の予定っすけど・・・」



 ここは最北湖南岸に設置された、臨時要塞の隣に急遽造られた野営施設である。

 穴熊チームが急ぎで掘り抜いた、地下室が4つぐらい繋がった簡単なものであったが、ずっと狭い移動車両の中で寝泊りしていたドワーフ達には好評であった。

 地下室なのも、ドワーフ的には安心感があって過ごし易いようだ。


 その1室には円卓が掘りぬかれていて、周囲に主要メンバーが腰掛けていた。ちなみに椅子は、丸太を適当な長さに切ったものである。

 円卓に着いているのは、ドワーフ側からは、各移動車両の班長6人(1号車は団長が兼任)である。ダンジョン側からは、ワタリ、ベニジャ、エルフ小隊長、アエン、のキャラバン護衛陣に加えて、ロザリオ、テオ、ノーミンが顔を揃えていた。


 さらにオブザーバーとして、冒険者のハスキーが列席していた。彼は、別室で未だに眠っているビビアンの側から離れるのを嫌がったが、残りの二人に押し切られて、しぶしぶ会議に参加していた。

 「俺らに頭脳労働が勤まるわけがねえだろうが」

 というスタッチの最もな意見が通った形である。

 


 司会のワタリが話を続けていった。

 「予定では、あと半日かかるところを、無理に無理を重ねて強行した結果、なんとかここまで辿り着けたっす」

 その代償として、移動車両はボロボロ、牽引アルマジロはヘトヘトになってしまった。

 移動車両は、比較的元気なドワーフが、メンテナンスをしているが、明日の朝まではかかりそうである。

 牽引アルマジロは、水をがぶ飲みして、餌を貪り食った後に、泥のように眠ってしまった。これも朝までは目覚めそうになかった。


 「蜘蛛が巣に戻ってから、出直してくるにしても、3・4日の余裕が出来たっす。しかもこの先は、ウチらの勢力圏内なので、心配するほどの脅威はないと思ってもらって良いっすよ」

 その言葉に、ほとんどのドワーフは笑顔を見せたが、何人かは、まだ緊張しているようだった。


 彼らは主に、ロザリオをちらちら見ていた・・


 「ん?私の顔に何か付いているのかな?」

 ドワーフの不躾な視線を感じたロザリオが、班長の一人に問い掛けた。

 聞かれたドワーフは心の中で、

 『狐のお面がついてるけど、問題はそこじゃねえよ』

 と突っ込みを入れていたが、実際に言ったのは、

 「あ、いや、何、銀色の骨格が珍しくてのう・・」

 という誤魔化しの言葉だった。


 「ああ、なるほど、この姿は、我等が大森林の守り手を模したものなのだ」

 「「エルフなのかよ!」」

 会話をしていた班長以外のドワーフからも、一斉にツッコミが入った。


 「おいおい、この骨格を見れば一目瞭然だろうに」

 「「わからんわい!!」」

 隣でウンウンうなづく小隊長以外のメンバーから、総ツッコミが入った。



 「ええーっと、場が和んだところで、話を続けるっす」

 空気を読まない司会者が、強引に会議を続けていく。

 「この場所で、朝まで休息するのは問題ないっすが、その後の行き先を決めて欲しいっす」

 ワタリが、各班長を見渡しながら言った。


 「前にも言ったと思うっすけど、移住の受け入れ先は3箇所あるっす。ウチらのマスターのダンジョンか、フロストリザードマンの居住地か、別のダンジョンマスターのダンジョンっす」

 その話を受けて、団長から質問がでた。


 「それぞれの受け入れ先の条件を聞かせてくれないか?人数の制限や、制約があればそれもお願いしたい」

 各班長も、うなづきながら熱心に聴いていた。


 「オイラだとざっとしか説明できないっすけど、わかる範囲で良いっすか?」

 「それで構わない」

 班長達もそれで良いらしい。


 「まずウチらのマスターのダンジョンは、場所はここから1日ほど南下した、小高い丘にあるっす。移住に関しては基本、眷属化してもらうことになるっすが、それ以外の制約はないっすね。人数は50名ぐらいを予想してるそうっすが、拡張は簡単にできるっすよ」

 「その眷属化っていうのは、隷属の呪文とかとは違うんだろうね?」

 5号車の班長が質問してきた。


 「違うっすね、どちらかというとクランの入会式に近いっす。本心から望まないと眷属化されないので、そのときに忠誠心のチェックとかは終わってるっすよ。裏切る前提で眷族には成れないっす」

 「もし離脱したくなったらできるのかい?」

 「可能っすね。はぐれになってもペナルティはないっすよ。まあ楽な暮らしに慣れちゃうと、そんな気にはならないっすけど・・」

 ワタリの言葉には、色々な意味で実感が篭っていた。



 「フロストリザードマンの居住地は、お仲間のタングステンさんが漂着した先のクランの長と親しくなった関係で、受け入れ先になってくれたっす。仮設の居住地として、三日月湖の南岸にあるクランの跡地を用意してあるそうっす。人数には上限はないっすけど、あまり多いと分散することになるかもって言ってたっすね」

 「その跡地というのは半地下なのか?」

 3号車の班長が質問してきた。


 「そうっすね、フロストリザードマンの典型的な居住地だって聞いてるっすよ」

 「あれは湿度が高すぎて、酒造りに向かんのじゃがのう・・」

 「そこらへんは、タングステンさんと相談して欲しいっす」



 「そして最後が問題の女帝マリアのダンジョンっすね」


 最初から問題扱いしているワタリもどうかと思うが、それを聞いたドワーフ達の反応も酷かった。

 「「ああ、それは選ばないから、話さなくていいぞ」」

 「あ、そうっすか、なら・・」

 それに異議を唱えたのがアエンだった・・ただし小声で・・


 「一応説明してあげてください・・」


 「いやいや、誰も選ばんじゃろう。あの女帝じゃぞ」

 「そうそう、時間の無駄だね。ゴブリンだらけって話じゃないか。とてもじゃないが暮らせないよ」

 そう言った班長が、ワタリを気にして言葉を繋いだ。

 「あ、ゴブリンっていってもワタリさんは違うよ。ワタリさんは、なんていうかゴブリンなんだけど、ゴブリンぽくないっていうか、下っ端臭いのに偶に凄いっていうか・・」


 「それ、褒めてないっすよね・・」

 「いやいや、ドワーフに嫌われないゴブリンってだけで、レアですよレア!」

 「そうそう、ワタリはゴブリンでない何かだからな」

 「種族名ワタリだな」


 すっかりドワーフ達の信頼を得ていたワタリであった。 


 そしてアエンは・・

 「・・ごめん、マリア、やっぱり無理みたいだよ・・」

 友人のあまりの悪評に、頭を抱えていたのであった・・・




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