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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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新人さんいらっしゃい

活動報告にも書きましたが、10月2日に投稿予定だったものを大幅に書き直していました。

これがそれになります。10月3日の分は、このあと投稿する予定です。

  ダンジョンコアルーム(司令部)にて


 『キュキュ!!』

 「あ、ごめん、蜘蛛の死体の吸収が停滞してたね・・」

 親方の緊急の念話で、我に返った。塹壕に死体が溜まって現場は危険な状態らしい。

 「コア、塹壕内に増援を召喚しよう。毒耐性カスタムで、ブラウンベアを3体召喚して」

 『くまくまべあ』


 これで容量に余裕がでたはずだ。

 「すぐに塹壕内の蜘蛛の死体を吸収」

 『ん・・・けふっ』

 もうお腹一杯になったんだ・・


 「それなら、塹壕の端にアイスオークの3姉妹を召喚。長女はキャプテンで受けカスタム、次女はレンジャーで鍵開けカスタム、三女はドルイドで牧畜カスタムで」

 『てぃーえす?』

 3兄弟を復活させることは不可能だから、どうせなら性別も変えてしまった方がいいかなと。

 『ぶーふーうー』


 「召喚したての方々は、武装はどうなのでしょうか?」

 カジャが大切なことを思い出してくれた。アイスオークはノーミンしかいなかったから、前衛の武装は初期装備のままだね。

 「コア、召喚したキャプテンとレンジャーに、黒鋼の装備一式を変換してあげて」

 『らじゃー』


 「あと、これは今すぐでなくて宜しいのですが、ご主人様の身の回りのお世話をするメイドを二人ほど雇っていただければと思います」

 え?僕は別に困ってないけれども・・

 「ですが、この先、各所から訪れる方が増えてくれば、おのずと接待やお見送りなどが必要になるかと。それにダンジョンマスターとしての身だしなみも整えるべきかと存じます」


 僕は、冒険者から剥ぎ取って、適当に丈を直したボロボロの服を見下ろしながら尋ねた。

 「これじゃ、ダメ?」

 カジャはため息をつきながら答えた。


 「ダメですね」


 

 その頃、隘路では、塹壕を跳び越してくる蜘蛛の対処に大わらわであった。


 「畜生、奴ら仲間を犠牲にして、炎の壁を潜り抜けてきやがる!」

 スタッチが相対しているのは、仲間の蜘蛛を背中に背負って、炎のダメージを最小減に留めた個体だった。まともに壁の熱を浴びた炎避けの蜘蛛は、完全に炭化しているが、その下の蜘蛛は、半焼で済んでいる。

 すると、今までは一撃で倒せていた蜘蛛が、反撃をしてくるようになったのだった。


 「こっちの奴は、死体の中で死んだ振りをしていたさね!」

 ソニアが死角から飛び掛ってきた蜘蛛を戦斧で叩きつぶしていた。それは塹壕の中で、仲間の死体に紛れて、隙を覗っていたらしい。


 「蜘蛛も必死のようだが、ここを通すわけにはいかないぞ!」

 ハスキーが二人を鼓舞するように叫んだ。

 塹壕を抜かれると、ビビアンが襲われることになる。ビビアンの精神集中が切れて、持続していた炎の壁が消えたときが、この戦線が崩壊するときである。

 そうなれば圧倒的な物量で押し寄せる、レッドバックウィドウの大氾濫を止める事は不可能だ・・・


 「主殿・・まだなのか・・」

 ロザリオでさえ、危機感を募らせ始めたその時、塹壕の底がはっきりと光り輝いた。


 何事かと塹壕を覗き込んだスタッチが、慌てて叫んだ。

 「蜘蛛の死骸がなくなってやがる!その代わりにでっかい熊が3頭湧いてるぞ!」

 「馬鹿言ってんじゃないさね。蜘蛛が熊に化けるわけがないだろ!」

 「疑うなら自分で見てみろよ!」

 スタッチに言い返されて、目の前の蜘蛛を切り払うと、ソニアも塹壕を覗き込んだ。


 「・・・熊だね」

 「だろう!」

 「しかも、落下してくる蜘蛛を、滝を落ちてくる鮭を狩るように叩き落としてるさね・・」

 「喰うのかな・・」


 「「「ガウガウ」」」


 呆けたように熊を見ている二人を、ハスキーが叱咤した。

 「手が止まっているぞ。蜘蛛を攻撃してくれるなら味方だ。ほっといて持ち場に戻れ!」

 「「お、おう」」


 慌てて下がろうとした二人の視界に、今度ははっきりと塹壕の底に光る、魔法陣が映った。

 「なんか光ってるぞ!」

 「あれは魔法陣さね!しかも3つ!」


 魔法陣と聞いて、ハスキーもそちらに向って身構えるが、そこに現れたのは、3体のアイスオークだった。


 「アタイ達、3人、生まれた腹は違えども、ブヒィ」

 「屠殺される日は同じであることを誓う、ブヒィ」

 「豚縁の誓いだべさ」


 「「「なんか凄いの出てきた」」」


 冒険者達の驚きを他所に、アイスオークの3姉妹は、天に向って手を差し伸べた。

 そこへ誰かが手渡したように、黒鋼の武器が宙から出現した。

 長女は両手斧グレートアックスを、次女は左右の手に投斧トマホークを握りしめていた。そして三女は・・何も受け取れなかった・・

 「差別だだよ・・」


 項垂れる三女を残したまま、他の二人は、今し方手に入れた武器を振り回しながら、炎の壁から零れ落ちてくる蜘蛛を切り刻み始めた。


 その様子を目撃したスタッチが、相棒に尋ねた。

 「あれも味方なのか?」

 「・・正直わからん・・」


 だが、熊とアイスオークの参入と、蜘蛛の死骸が消滅したことで、戦闘が楽になったのは間違いなかった。やがて壁を突き抜けてくる蜘蛛の数ががっくりと減った。


 「どうやら持ち応えたな・・」

 ハスキーが呟いた。


 それがフラグになるとは知らずに・・・



 

 「新手の敵が来ます! は、速い!」

 隘路の上で監視していたエルフのレンジャーが、警告を叫んだ。

 前方への圧力を停止して、動きを緩めた蜘蛛の大群の中を、掻き分けるように、4体の巨大な蜘蛛が疾走していた。

 その4体は、レッドバックウィドウとは違い、全身が真っ黒で、8つの目と、上下の顎の牙だけが、赤い色をしていた。

 

 「足止めしろ!!」

 ロザリオが崖の上の高所に陣取るエルフ・レンジャーに命じた。


 「「イエス・マム!」」

 両側の陣地から、対地用バリスタ「黄牙」が放たれた。

 2号車のアイアン爺さんが、行き掛けの駄賃といって、移動車両に取り付けできない在庫を、放り出していってくれたのであった。

 砲座がなくて車両には、2号車以外に配置できなかったのだが、地面に固定して(頑丈な支柱を岩盤に打ち込む)使用するぶんには問題なかった。

 専用のボルトも10本ずつ落としていってくれたのであった。


 それを大急ぎで崖の上に配置して、秘密兵器として準備してあったのだ。

 蜘蛛の大集団には、意味がかなり薄かったのだけれども・・・


 

 バリスタの射程に入った正体不明の敵に、隘路の両側の崖から2本のボルトが発射された。

 しかし黒い蜘蛛は、余裕をもってそれをかわした。

 「大尉、当たりません!」

 「敵は隘路の壁を垂直に駆け上がって来ます!」


 蜘蛛の特性を生かした、壁走りで、隘路の頂上まで駆け上がると、その余勢を駆ったまま、黒い蜘蛛は宙に舞った。

 「飛び越えやがった!」


 次々に炎の壁を飛び越えてくる蜘蛛目掛けて、スケルトン弓兵部隊の矢が迎え撃つが、ほとんど弾き返されてしまった。

 そして塹壕をも跳び越えた4体の黒い蜘蛛が、ビビアンの4方を取り囲むように降り立った。


 ギチギチギチギチ


 黒い蜘蛛が、ビビアンに向けて威嚇音を立てる。

 それは、誰を倒せばこの戦いに勝利できるのかを知っているようであった・・


 

 しかし、ビビアンは微動だにしない・・・


 なぜなら、彼らがきっと守ってくれると信じているから・・


 「ここから先は立ち入り禁止だ。通りたければ命を置いていくんだな・・」



 


 

 


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