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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
358/478

仕事してました

  最北湖北岸、土木作業現場にて


 「あと50分ないぞ、急げ急げ!」

 「ギュギュ」

 「カタカタ」


 最北湖北岸と湿地帯を隔てる岩場を、眷属達が物凄い勢いで整地していた。

 小高い丘ぐらいある岩山を、切り通しにして隘路をつくり、その先を扇形に平らにならして、平面漏斗の様な地形を生み出していた。


 エルフが目印の旗を持って要所に立ち、それに沿って穴熊チームが岩場を削りとり、スケルトン部隊が残土を運び出していた。

 それらを監督するのは、もちろんハリモグラの親方である。


 「キュキュ!」

 「あ、もう少し北ですか?」

 「キュ」

 「OK、そこ掘って」

 「ギュギュギュ」

 「こっち運び出し頼む!」

 「カタカタ」


 それを見つめるビビアンが、ポツリと呟いた。

 「なんか、もうカオスね・・・」



 そばでテオが笑って言った。

 「うちはいつもこんなものですよ」

 そう言われても、なにか納得できないビビアンである。


 「ダンジョンマスターて、なんかこう、パパッと魔法でダンジョンを造成するイメージがあったんだけど、これ、地味過ぎない?」

 確かに、大きな穴熊は縦に回転しながら岩場をガリガリ削っているし、スケルトンは単純労働させるには、疲れ知らずでうってつけだとは思う。

 けれど、エルフが、旗のついた棒を支えるだけで、呪文を使う様子がないし、ましてや現場監督はハリモグラだ。意味不明である。


 「詳しいことは話せませんが、どこにでもマスターの力を発揮するというわけにはいかないのですよ」

 どこまで情報を開示して良いのかわからないテオは、少し言葉を濁しながら答えた。


 「そうなの?ワタシはてっきりDPの節約で、手掘りしてるのかと思ってた」

 ビビアンに図星を指されて、テオが目を逸らした。

 「ははは、何のことでしょう・・」


 「ビビアン、DPってなんだ?」

 横で聞いていたスタッチが、空気を読まずに尋ねてくる。

 テオは遠くを見ながら、口笛を吹き始めた・・

 「えーーと、後で教えてあげる」

 「ほいよ」

 

 ビビアンも少しは空気が読めるようになったらしい・・・



 その間に、ハスキーとソニアは、穴熊チームに強化呪文を付与し直していたノーミンに話掛けていた。

 「北から来る蜘蛛の大群を、即席の漏斗状地形で、隘路に集めるのは良いとして、そこからどうするんだ?・・」

 「隘路といっても、かなり道幅があるさね。蜘蛛でも5・6体は並べそうだ」


 「あまり狭いところに押し込めると、重なり合った蜘蛛が、両側の壁を乗り越えるだで、少し余裕を持たせてあるだ」

 ノーミンは、隘路の中央付近に、道幅一杯の横線を引いた。


 「この後ろに塹壕を掘るだで、そこを乗り越えた蜘蛛の対処をお願いするだ」

 「それは構わないが、我々の戦力が必要か?・・」

 周囲には、同族を指揮する上位タイプのスケルトンや、穴熊達を監視する銀色の骸骨騎士などが徘徊していた。戦力的には十分な気もする。


 「キャラバンは、強行軍を続けているので、もう限界なんだ。どうしても、ここで休息をとる必要があるだで、蜘蛛は全滅したいだよ」

 「なるほど、戦力は少しでも多い方が良いってことさね」

 出番がありそうだと、ソニアが嬉しげに話した。


 「それとオイラ達には火メイジがいないだでな、お嬢ちゃんには期待してるだよ」

 ノーミンの視線の先には、テオを質問攻めにしているビビアンの姿があった。


 それを見たハスキーとソニアは肩を竦めた。

 「やり過ぎないといいけどな・・」




  その頃のキャラバン


 「団長、1号車の車輪から異音が発生しています。5番と14番です!」

 「あと30分で安全地帯だ、なんとか持たせろ。いざとなったら切り離せ」

 「団長、3号車から通信です。『アルマジロが限界』だそうです」

 「どこも一緒だ、あと少しだ、なんとか頑張らせろ」

 「・・・返信ありました。『無理っぽ』だそうです・・」


 モリブデン団長は頭を抱えた。

 せっかく浮き草の群生地で稼いだ距離を、ここで失うわけにはいかなかったからだ。

 「・・3号車を最後尾に回して、最悪の場合は・・」

 苦渋の決断を迫られていた、その時、6号車に通信旗がたなびいた。


 「6号車より通信です。『我に秘策あり』だそうです」


 

  団長からの依頼で、ワタリが状況を聞きに6号車へ移動していった。

 「アエン、秘策ってなんすか?」

 『ワタリさんですか?こんなこともあろうかと、牽引アルマジロ用の、持久力強化魔道具を作成してたんです。やっと完成したので、3号車に持っていってください』


 そう言って、ハッチから差し出されたのは、大きめの首輪に釣り竿が固定してあり、その釣り糸の先にニンジンがぶら下げてある代物だった・・


 「これ・・魔道具っすか?」

 『もちろんです。牽引アルマジロの首に装着すれば、元気がでます』

 「ニンジンが好物なだけっすよね?」

 ワタリが、疑わしげにその道具を受け取った。


 『いえ、特にニンジンを好むわけではありません。魔力の共感性と類似性を応用した、付与魔法の基礎的な・・』

 「あー、今は急ぎなんで、その話は良いっす・・」

 『そうですか・・では次の停泊地でちゃんと理論から・・』

 その頃、ワタリはすでに3号車へと向っていた。



 「本当に効き目があるっすね・・」

 3号車の牽引アルマジロは、魔道具を首に装着すると、見違えるように元気を取り戻した。

 しかし頭の前にぶら下がったニンジンは、気にはなるようではあるが、特にそれを見て発奮する様子はなかった。


 「やっぱり意味がわからないっすね・・」

 これなら首輪だけでも良かったのではないだろうか?ワタリは首を捻って考え込んだ。


 その頃6号車では、実験結果を踏まえて、さらなる魔改造が行なわれようとしていた。

 「試作3号『元気モリモリ君』は成功しました。次は量産化に入りたいと思います」

 「量産型は猫耳カチューシャが素敵だと思います・・」

 「装甲も兼ねてフルフェイスの兜が最強だろう」

 「銀の姫ティアラが・・」

 「白金で・・」


 アエンをリーダーとするドワーフ女子魔道具工房の業は深い・・・

 

 「あ、これ可愛い! 採用!」







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