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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
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隊商が襲われています、どうしますか?

 浮き草の群生地では、ベニジャ率いる氷竜騎兵隊が、殿を務めていた。

 キャラバンを追いきれなくなった蜘蛛を、自らを囮にして、縦穴に誘い込み、大蛙がそれを捕食する。粗方、目の届く範囲の蜘蛛を呼び集めてしまうと、撤退の準備をすることになる。


 「新手が来ました、お嬢、そろそろ戻りませんと、ジャジャ」

 リザードマン・エリートが、接近してくる新たな蜘蛛の集団を見つけて報告してきた。それは大型コロニーに匹敵する規模の集団であった。 

 

 「潮時だね、オマエら戻るぜ、ジャー」

 これ以上の足止めは危険とみて、ベニジャは撤退を指示した。

 アイスドレイク部隊は地上を、大蛙チームは地下水道を伝って、最北湖を目指した。



  ダンジョンコアルーム(司令部)にて


 「ベニジャの部隊は撤退を開始したみたいだ。コア、予定通り、痕跡を消しながら領域を縮小して」

 『らじゃー』


 カジャと相談した結果、浮き草群生地の縦穴は放棄することにした。

 最初は陣地化して、罠と大蛙で撃退しようという方針だったのだけれど、リスクが高すぎるということで、取りやめにしたのだ。


 「縦穴に潜れば反撃されないのは良いんだけど、迂回されると意味なくなるよね」

 「はい、今の段階で、こちらがダンジョンマスターであることを明かすのは得策ではないと思われます」

 仕掛けるなら、敵が逃げられない場所か・・


 「湿原地帯を通過してしまえば、敵の勢力範囲から抜け出せます。その先まで追ってくるかどうかは不明ですが、まず間違いなく、境界線で全力戦闘を仕掛けてくると思います」

 だとすると、ここか・・


 コアの投影した周辺地図に、三角形のマーカーが点滅していた。

 その意味は「重要戦略拠点」、場所は最北湖であった・・・




  最北湖北岸、第二補給拠点にて


 「これで良くなるはずでしゅ」

 「手間かけさせたね、恩にきるよ」

 ビビアン達の治療の為に、ヘラが転送されて現地入りした。その治療が、今、終わったところであった。


 あれだけ苦しんでいた3人だったが、今は元気を取り戻して、水をがぶ飲みしていた。

 お腹も減っているようだが、それは暫く禁止である。


 「あーー、酷い目にあったわね」

 ビビアンが、憑き物が落ちたようにサッパリした顔で伸びをしている。

 「酷い目にあったのは、こっちの方だぜ・・」

 スタッチが恨めしそうにビビアンを見た。


 「なによ、アタシの所為だって言うの?あれは食材が傷んでいたか・・もぐ・・」

 ソニアが慌ててビビアンの口を塞いだ。

 なぜなら、ここがその食材を売ってくれた場所なのだから・・


 「食材に問題は無かったさね。きっと食べ合わせが悪かったんだろうさ」

 「・・もがもが!」

 ビビアンが反論しようとするが、ソニアはそれを許さない。がっちりホールドして黙らせた。


 「とにかく、ビビアンは、しばらくの間は料理禁止さね」

 「・・もが・・」

 自分でも責任の一端は感じていたのか、ビビアンは大人しく受け入れた。


 「さて、俺達の安全が確保された所で、これからどうする?」

 「まずは状況の確認だな・・彼らは大氾濫を認識しているのか?」

 ハスキーがソニアに尋ねた。


 「そこらへんは、直接話して欲しいさね」

 ソニアが後ろに声を掛けると、一人のツンドラエルフが姿を現した。


 「どうも、この補給拠点の担当者のテオと言います、よろしく」


 4人がそれぞれ紹介を終えると、テオが本筋を話し始めた。

 「実は、うちのダンジョンに北の山脈からドワーフの皆さんが移住することになりまして、そのキャラバンが、蜘蛛に襲われて困っているところなんです」

 その話を聞いてビビアンが首を傾げた。


 「ドワーフって、ダンジョンマスター嫌いで有名だけど、移住なんて良く承知したわね?」

 「まあ、そこはあちらにも色々事情があるようなんで、うちのマスターは基本が来る者拒まずですからね」

 「なるほどな・・それであの雑多な集団が出来上がったわけだ・・」


 ハスキーが目を向けた先では、エルフと穴熊とスケルトンが、何やら共同で土木作業をしていた。

 

 「キャラバンは、蜘蛛の大群を引き連れたまま、1時間後にはこの場所にやってきます。その撃退に、皆さんのご協力をお願いしたいと・・」

 「なるほど、仕事の依頼ね!」

 勢い込むビビアンを、ハスキーが押し止める。


 「今はギルドの依頼の最中だ。他の仕事は請けられない・・」

 「ですが、その途中でモンスターの大群に襲われている隊商が居たとしたらどうでしょうか?」

 ビビアンが、テオの言いたいことを察知して話を続けた。


 「そんな場面に遭遇したら、腕に自信のある冒険者パーティーなら、手を貸すでしょうね」

 「そして救われた隊商は、感謝とともに冒険者達にお礼を差し上げることになるでしょう」

 そこへスタッチが割り込んできた。


 「で、そのお礼ってのは幾らぐらい?」

 「おい、まだ請けるとは・・」

 「金貨では無粋なので、隊商ではボーン・サーペントの骨を用意していると聞いています」


 「「「よし、乗った」」」


 ハスキー以外の3人の声がハモった。

 レア・モンスターであるボーン・サーペントの骨は、魔道具の素材としては1級品である。アンデッド属性と水棲属性を兼ね備えている為に、防具にすれば、闇耐性、水氷耐性が付加される。さらに武器にすれば、対アンデッド、対水棲、対亜竜と、戦士にとっての夢素材であった。

 またアクセサリーに加工すれば、水中呼吸、水中行動の付与がつけられるし、ワンドやロッドにすれば、闇と水の呪文系統を強化できる。


 「お前らな・・」

 現金な仲間の反応にあきれるハスキーの肩を、スタッチが叩く。


 「いいじゃねえか、困っているときはお互い様だろ? 腹痛を治療してもらった恩もあるし、ここは一肌脱ぐとしようぜ、な、相棒」

 「スタッチもたまには良いこと言うじゃない。そうよね、原因不明の病気を治してもらったんだから、蜘蛛狩りぐらい手伝わないと」

 ビビアンは、あくまであの原因は謎と言い張るらしい・・ 


 「同意して頂けたなら、こちらへ・・」

 テオはそういって冒険者パーティーを土木作業現場へと案内した。


 3人は嬉々として、一人は諦め顔で、その後をついていくのであった・・・




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