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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
352/478

やっぱカルビは骨付き

切りのいい所まで書いていたら、大幅に時間が過ぎておりました。申し訳ございません。

 簡易要塞から出撃した討伐隊は、ボーン・サーペントのブレスを警戒する為に、散開しながら湖底へと侵攻していった。

 直線状のブレスは、通常のコーン状より影響範囲は狭いが、到達距離が長いのが特徴である。縦に一列に並んでいると、一網打尽にされる可能性があった。


 討伐隊は、3つのグループに分かれて潜っていく。

 肉弾戦を仕掛けに行く、ジャイアント・ツンドラバジャーに進化した大型穴熊チーム3体。

 テオをリーダーに、4体のツンドラ・バジャーと3体のディープ・エキドナで編成したソナーチーム。ただしテオの側に残るハリモグラは親方だけで、残りの2体は、通信の為にそれぞれのグループに張り付いている。

 そして接近戦で止めを刺しにいく、ロザリオの部隊である。


 ロザリオは、何故か、白い河イルカに掴まって、ドルフィン・ライドの真似事をしていた。さらに通信兵としてハリモグラのヒビヤが張り付いている。

 ちなみに、突然現れたこの白い河イルカは、ノーミンが変身スキルを使った結果であった・・・


 

 侵攻部隊が簡易要塞で打ち合わせをしていた時、ノーミンは変身を何にするかで激論が戦わされていた。

 「白熊で良くないか?いや白熊にすべきだろう」

 「ロザリオはモフりたいだけだべ。湖に潜るのに獣は無理があるだよ」

 「いや、ビーバーとかカワウソなら泳げるはずだ」

 「小さすぎて、ロザリオ達を抱えて移動できないだで・・」

 あくまでモフモフに拘るロザリオと、真面目に効率を考えるノーミンの意見は纏まらなかった。


 「あのー、アザラシなんてどうでしょうか?」

 見かねたテオが、そっと案を出した。

 「なるほど、体毛は薄いが、新たな境地が開けるかもしれんな」

 「中型だで、ロザリオに掴まられたら、沈みそうだな」

 水中呼吸と水中での移動を考慮すれば、大型の魚類が最適なのだが、最北湖特有のアルカリ水質が、長時間のエラ呼吸を躊躇わせていた。


 結果、肺呼吸で、泳ぎが得意で、人を二人ぐらい牽引出来る河イルカが選ばれたのであった。

 シャチやオルカも候補に上がったのだが、それはノーミンのドルイドレベルが足りなくて、変身できなかった。

 河イルカの色が白くなったのは、コアの要望である。

 『とりとん!』

 オリハルコンの短剣はないけどね・・


 兎にも角にも、変身ドルフィンに乗った骸骨騎士が、折れたミスリルソードで、邪竜退治に向ったのであった・・・




 湖底では、スケルトン部隊が、ボーン・サーペントを相手取って、善戦していた。

 白骨水竜の肉弾戦で、何体か砕かれたものの、すぐにスカルリーダー達のスキルで補充された。

 苛立った白骨水竜が、闇属性の攻撃魔法を放ってきたが、それは彼等にとってヒールを受けているのに等しかった。効果がないどころか、元気になっていく様子を察したのか、2度ほど放ったあとは、呪文を使ってくることはなくなった。


 危険なのは、時々放たれるブレスで、これの直撃は、スケルトン・ウォーリアーであるリーダー達でさえ、一撃で撃破される威力を秘めていた。

 連射できないのと、効果範囲が狭いのが救いだが、インターバルを置けば何発でも撃てるようなので、弾切れを待つ戦法も使えなかった。

 先ほども、避け損ねたドクロリーダーが、盾ごと左腕をもっていかれていた。


 「カタカタ(ユダンシタ)」

 「カタカタ(サガルカ?)」

 「カタカタ(マダイケル)」

 水中だが、顎を打ち鳴らして会話するスケルトン部隊には問題ないらしい。


 しかし、何度が試した剣による斬撃は、戦士長クラスの攻撃でさえ通用しなかった。どうやら防御力うんぬんというより、武器の性質に寄るものだと思われた。

 スカルリーダーが斬りつけたときも、アンデッドとしての位階の違いが伝わってきたと同時に、傷つけられる手ごたえは一切なかった。


 「カタカタ(コウゲキハムダナヨウダ)」

 「カタカタ(マツシカナイカ)」

 戦士長二人は、討伐隊の本隊が到着するまで、時間稼ぎを続けた・・・



 「・・キュキュ・・」


 白骨水竜の啼き声と、スケルトン部隊の連絡音しか聞えなかった湖底に、異質な音が響いて来た。

 湖の主は、怪訝そうに水面を見上げたが、二人の戦士長は、お互いに頷き合うと、部下達に一斉攻撃を指示した。

 それに反応した白骨水竜は、最も骸骨戦士が密集している場所に、ブレスを噴いた。


 数体の戦士が巻き込まれて崩れ去ったが、これでブレスはしばらくは使えない。

 その間隙を縫って、大きな茶灰色の塊が、高速回転をしながら突撃を仕掛けた。


 「「「ギュギュギュギュ」」」


 縦回転は水中でも十分な推進力を生み出し、3体の大穴熊は次々と体当たりして、敵の骨を削り取っていった。ドルイド呪文によって強化された彼等の攻撃は、ボーン・サーペントの装甲と、特殊防御能力を突破することに成功した。


 「ギィギィギィーー」

 怒り狂った湖の主が、大穴熊チームに噛み付こうとするが、その間にスカルリーダーが割り込みをかけ、その顎の一撃を盾で受け止めた。

 骸骨戦士では出来なくとも、戦士長ならば耐えることは出来た。

 ただし、全ての衝撃を受けきれるわけではなく、1撃を押さえ込む度に、盾にも身体にも負担が掛かるのではあるが・・


 「カタカタ(モッテ3カイダナ)」

 それ以上は盾が持ちそうになかった。そして盾がなければ防ぎきれない・・

 反対側では、ぬしの尾の攻撃を、骸骨戦士が身を挺して防いでいた。


 崩れ落ちた戦士達に、ドクロリーダーが剣を捧げる。

 すると破壊された4体の戦士が復活した。

 「カタカタ(コレガサイゴダ)」

 すでに戦士長達の魔力も底をつこうとしていた・・・


 

 「ギィギィギィ」

 新たに出現した侵入者が、獣だと認識した白骨水竜は、動いを止めて呪文の詠唱に入った。


 「キュキュキュ!」

 「キュキュ!」

 「キュ!」


 異変を聞き取ったソナーチームが、大穴熊チームに回避を指示するとともに、白骨水竜に隙ができたことも知らせてきた。


 「ギィギィーー!」

 湖の主が、闇属性の広範囲攻撃呪文を唱えたのと同時に、その頭上から、白いイルカが突っ込んできた。

 「エレメンタルソーーード!!」


 ロザリオの雄叫びとともに、ミスリルソードを光が覆い、輝く刃となってボーン・サーペントの頭蓋骨を切り裂いた。


 「ギィギャーーー」

 弱点である光属性の攻撃に、白骨水竜は苦痛により、のた打ち回った。不死の身体を得てから、初めて感じる痛みであった。

 暴れまわる巨体を避けながら、白いイルカは泳ぎまわり、その背びれに掴まったロザリオが、隙を見つけては切りかかっていった。


 ロザリオとイルカを憎悪した白骨水竜は、闇雲に1体と1頭を付け狙うが、イルカの腹にしがみ付いたハリモグラのトウザイが、他の2頭から送られて来る位置情報を、素早く伝達することにより、アクロバット的な回避を可能にしていた。


 そして白骨水竜の注意が、イルカに乗った大尉、(テオによれば)に集中するなら、大穴熊チームは自由に動ける。

 範囲呪文を回避するために距離をとっていたが、そこから再び、3連ローリングクラッシュを敢行した。

 「「「ギュギュギュ」」」



 ガリガリと身体が削り取られていく、有りえない事態に、湖の主も危機感を覚え始めた。

 イルカを追うのを諦めて、敵が密集している場所に頭蓋骨を向けた。


 小さなゴボゴボという吸気音を察知して、ソナーチームが一斉に警報を発する。


 「「「キュキュ!」」」


 討伐隊は一斉に散開するとともに、狙いを絞らせないように動き回った。


 だが、白骨水竜の狙いは別にあった。

 咄嗟にブレスの目標を湖底に変更すると、堆積した泥に向って全力放射したのだ。


 爆音とともに、土煙が舞い上がり、周囲の視界を完全に遮った。

 「煙幕のつもりか!」

 ロザリオの叫びは、しかし、ゴボゴボとしか聞き取れなかった。


 「カタカタカタ」

 「キュキュキュ」

 「カタカタ」

 「キュ」

 その中でも、スケルトン部隊とソナー部隊の通信は途切れない。的確にボーン・スケルトンの動きをトレースしていた。


 その通信を受けて、イルカの腹からトウザイが指示を出した。

 「ビュイ?(上だか?)」

 変身イルカは、ロザリオを乗せたまま急浮上する。


 土煙に紛れた白骨水竜は、水面に向けて逃走を図っていたのである。


 「まずいぞ、北岸に向っている。第二補給拠点に避難勧告を!」

 湖の主が、陸上を歩けるかは不明だったが、アンデッドなのだから水の外でも活動できるのは間違いなかった。野放しにするには危険すぎる。


 『主殿、聞えるか!目標が逃げだした!』

 しかし、今だ領域化には成功していないようで、念話は通じることはなかった。

 「なぜよりによって北岸なのだ!」

 ロザリオは毒づくが、討伐隊が南側から包囲を引いた以上、主が北へ逃げるのは必然であった。


 「ノーミン、急げ!」

 「ビュイビュイ(これで全速だで)」

 ロザリオとトウザイが掴まっている現状では、これ以上は無理だった。


 彼等の目前で、湖の主は最北湖の北岸に上陸してしまった・・・



 急いで浮上したロザリオ達の耳に、第二補給拠点の留守番をしていたエルフの叫びが聞えてきた。


 「無理ですよーーー!」


 「やってみなけりゃ分からないさね、骨付き肉は好物だからね」

 「肉なんかどこにも残っていないですよ!」

 「ぐだぐだ泣き言を言わずに、少し下がってな。巻き込まれても知らないよ」

 「勝てっこないですって!」


 ソニアはそれに答えずに、精神を集中して、湖から出現した巨大な白骨水竜に相対した。


 「・・勝てなくても、退けない戦いってのがあるんだよ・・」


 逃走路を塞ぐ邪魔者に、怒りの一撃を与えるべく、頭蓋骨を振り上げたボーン・サーペントに向って、ソニアは突撃していった。


 「うおおおおおーー」

 

 愚かな敵を一噛みで食い千切ろうと、巨大な顎が頭上から降ってくる。

 その顎に向って、ソニアが突進力を上乗せした渾身の一撃を解き放った。


 「くらえっ!ボーン・クラッシュ!!」


 斧と槌の武器系統で習得できる、対スケルトン用の必殺スキルであった。


 急所である正中線に、バトルアックスを叩き付けられた白骨水竜は、その勢いを止められて、一瞬、宙に停止していた。

 そして再び動き出すと、目の前の獲物を噛み砕こうとして、その巨大な顎を上下に大きく開いた。


 しかし、死のアギトが迫ってきてもソニアは、受けようとも避けようともしなかった・・・


 白骨水竜の牙が、ソニアの頭上で閉じようとしたとき、どこからか異様な音が響いてきた。


 パラパラパラ  カラカラカラ  ガラガラガラ


 それはボーン・サーペントの身体が、尾の方から崩れ去っていき、落下した骨が地面に当たってたてる崩壊の音だった。


 「手ごたえ、あったさね・・」


 頭上の頭蓋骨まで、綺麗に崩れ去るのを見届けて、ソニアは会心の笑みを浮かべた。






 

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